【日々是世界 国際情勢分析】
南極海の調査捕鯨船団に対して苛烈(かれつ)な攻撃を繰り返し、調査中止に「われわれの勝利だ」と謳(うた)い上げた反捕鯨団体シー・シェパード(SS)が次なる手を打ってきた。南極海から地中海へと活動場所を変え、今度は日本の食卓になじみ深いクロマグロの漁に妨害を加えると宣言したのである。
地中海に浮かぶ島国マルタの有力紙タイムズは2月24日付電子版で、SSのポール・ワトソン代表のインタビュー記事を掲載。「われわれは5月、6月、7月に地中海に戻ってくる」との言葉を引き出した。
SSは昨年も地中海に抗議船1隻を展開。「違法な漁を告発する」として、マルタ沖でいけす網を切開して、漁師が捕まえたクロマグロを逃したり、マルタ人のダイバー2人を負傷させたりするなどの事件を起こしている。同紙によれば、今年、SSはもう1隻増やして2隻の抗議船を用意。ワトソン代表はさらにこう息巻いた。
「私たちは反密漁団体だ。妨害行為は政治的な影響力を持つかもしれないが、われわれは主に(体当たりなど)直接的な妨害をして、魚を逃がすことに関心を抱いている」
SSは昨年のクロマグロ漁妨害の際、日本社会に警鐘を鳴らすため、公式HPに築地市場での競りの様子などを隠し撮りした写真を掲載した経緯がある。ワトソン代表は「基本的に、地中海のクロマグロは日本で備蓄に回される。これは大きな問題だ」と標的がやはり日本であることを隠さなかった。
SSの暴力を阻止しようと、日本政府は再三にわたり、抗議船の旗国であるオーストラリアなどへ適切な処置をするよう要請しているが、事実上、SSは“野放し”になっているのが現状だ。
オーストラリア通信は2月24日、日本政府がSS抗議船の豪州への寄港禁止を求めてきていることに対し、「法律的に寄港を止めることができない」と指摘した豪外務省高官の言葉を紹介。さらに、SSの妨害活動について、高官は「われわれは平和的な抗議をやめさせるために、立ち入ることはしないだろう」との認識も明かした。
一方で、最近、豪州のメディアで、SSの妨害活動を取り上げる機会が極端に減っていることも事実だ。SS抗議船は3月中にも豪州に寄港するとみられ、どんな対応を取るか注目される。