歴史教育議連再開への期待。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【土・日曜日に書く】政治部・阿比留瑠比



≪菅談話の影響≫

 自民党の「日本の前途と歴史教育を考える会」(古屋圭司会長)が23日、平成21年9月の民主党政権発足以降初めて会合を開き、活動を再開させた。故中川昭一元財務相が初代会長、安倍晋三元首相が初代事務局長を務めた同会は9年2月の結成以来、近年の保守政治の源流の一つとなり、多くの成果を挙げてきた議員連盟だ。

 これをきっかけに、19年9月の安倍内閣退陣後、あまり政治課題として取り上げられなくなっていた教育正常化問題に、再び焦点が当たるようになればと願う。

 「菅政権は三途(さんず)の川を渡ったが、安倍元首相が言っているその『陰湿な左翼政権』の傾向は、社会に深く浸透している」

 古屋氏は会合でこう指摘した。確かに、菅政権はマニフェスト(政権公約)不履行にみる有言不実行ぶりと、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で見せた外交上の不手際、衝突映像を国民の目から隠した独善・隠蔽体質で国民に見放され、もう「死に体」だ。

 だが、公約も掲げた政策も何一つまともに実現できなくても、社会や教育現場にすでに負の遺産は残しているようだ。

 この日、講師を務めた高崎経済大の八木秀次教授は、日韓併合100年に当たって韓国に「痛切な反省と心からのおわび」を表明した昨年8月の「菅首相談話」の問題を指摘した。

 「菅談話の影響が、今春の中学校教科書検定に大きく出ている」

 日韓併合時に反日運動を展開した韓国人たちが、日本の教科書に大きく取り上げられる契機となりそうなのだという。政治家の独善と浅薄な思い込みがまた、歴史教育を歪(ゆが)めようとしている。

 ≪議連の発足理由≫

 「なぜこの会をつくったか。村山政権成立以後、文部省(現文部科学省)が日教組寄りとなり、平成8年に検定に合格した中学歴史教科書のすべてに『従軍慰安婦』記述が載ったからだ」

 議連顧問の安倍氏はこう振り返った。5年8月には、当時の河野洋平官房長官が資料的裏付けが一切ないまま慰安婦募集時の強制性を認めた「河野談話」を発表。7年8月には、当時の村山富市首相が植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」を出したこともあり、歴史教科書は政治色を帯びて偏向度を強めていた時代だ。

 そうした中で、議連は週1回ペースで勉強会を開き、河野氏本人や河野談話作成にかかわった石原信雄元官房副長官、外務省や文部省の専門家らから事情を聴いた。議連の編著「歴史教科書への疑問」(展転社)によると、河野氏はその場でこう証言している。

 「女性を強制的に徴用しろというか、本人の意思のいかんにかかわらず連れてこい、というような命令書があったかと言えば、そんなものは存在しなかった」

 また、石原氏も韓国政府の強い意向もあって、韓国人元慰安婦への聞き取り調査だけで強制性を認めたことを明かした。その上で、中学生に慰安婦問題を教えるべきかについてはこう述べた。

 「私は是非・善悪の判断ができない子供に対して、特定の結論を押し付けるのは反対だ」

 こうした地道な活動の結果、中学歴史教科書から戦後の造語である「従軍慰安婦」というおどろおどろしい言葉は消えた。

 ≪竹島記述の行方≫

 平成18年12月には、当時の安倍内閣によって教育基本法が59年ぶりに改正され、教育の目的に「伝統と文化の尊重」や「わが国と郷土を愛する態度を養う」ことが明記された。

 これに沿って学習指導要領も改められ、いまだに左翼イデオロギー色の濃い教科書記述も変わるはずだった。ところが、新基本法を否定する日教組と一体化した民主党が政権を担ったことで、教科書正常化は遅々として進まない。

 今年4月の中学校教科書の検定合格発表に際しては、韓国が不法占拠している「竹島」記述が「韓国の関心が高く、日韓間で政治問題化しそうだ」(外務省幹部)とされる。だが、政府の姿勢は甚だ心もとない。枝野幸男官房長官は22日と23日の記者会見で、記者に何度ただされても政府の公式見解である「不法占拠」という言葉を使おうとしなかったのだ。

 また、前原誠司外相は16日に金星煥外交通商相と会談し、記者ブリーフィングによると「日韓関係の全体に悪影響がないように希望する」と述べたとされる。

 ただ、18日の自民党部会で、このときの会談内容を説明した外務省の石兼公博アジア大洋州局参事官は、どう質問されても「何が具体的に話し合われたかは差し控えたい」と繰り返すばかりだった。

 これでは、検定への政治介入が疑われても仕方がない。歴史教育議連の出番だ。


                                     (あびる るい)