【主張】リビア情勢と原油
世界の主要な商品市場の原油価格が2年4カ月ぶりに1バレル=100ドルの大台を突破した。リビアでの原油生産停止で、中東・北アフリカ産原油に対する供給不安が広がっているためだ。情勢次第では、中東産油国の混乱がさらに拡大する恐れがある。
日本は中東に原油の9割近くを依存している。高騰が続けば、「足踏み状態を脱しつつある」と上方修正したばかりの経済の回復に水を差すことにもなりかねない。これを機に、原油調達の分散をはじめとしたエネルギー政策の検証を急ぐ必要がある。
リビアの生産量は日量160万バレルで、世界の2%にすぎない。サウジアラビアのヌアイミ石油相は「世界の市場には十分な供給量がある」としており、現状では一本調子で価格が上がる恐れは少ないとみられる。
日本には官民合わせて180日分を超える原油の備蓄もある。いたずらに不安がることはないが、不安定な地域にエネルギー供給を頼っている脆弱(ぜいじゃく)さはよく考えておくべきだろう。
2008年の原油高騰時にも、原油調達先の分散や、原子力や天然ガスなどへのエネルギー源の多角化が課題と騒がれた。しかし、リーマン・ショック後の原油価格の低下で危機感は薄れてしまった。こうした傾向は、1970年代のオイルショックの時から繰り返されている。今度こそ教訓を生かさなくてはならない。
この点、着目すべきはエネルギー価格の高騰に伴って掘削技術も進歩し、新しい資源開発が可能になっていることだ。
米国や豪州では、シェールガスと呼ばれる従来の技術では掘削できなかった天然ガス田の開発が始まった。カナダでは粘度が高く抽出が難しいとされたオイルサンドからの原油生産が増加している。こうした先進国からの資源調達を今後、増やしていくべきだ。
エネルギー源の多角化も進めなくてはならない。政府は2030年までに、原子力を主体に国産エネルギーの自給率を現行の倍の36%に上げる目標を掲げている。それには原発の厳しい規制を見直し、稼働率を現行の6割から大幅に上昇させる必要がある。
世界の主要国のエネルギー自給率の平均は70%を超えている。これを踏まえれば、目標の前倒しも考えた方がいい。
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東シナ海の天然ガス、
日本海側の
メタン・ハイドレードを
採掘せよ