邦人救援に自衛隊活用も。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【主張】リビア情勢


 国連安全保障理事会が緊急会合を開き、リビアで続く当局による反体制デモへの無差別攻撃を厳しく非難する報道陣向け声明を採択した。

 戦闘機によるデモ隊攻撃など事態は大量虐殺ともいえる。テレビ演説した最高指導者カダフィ大佐は1989年に中国で起きた天安門事件を引き合いに出し、弾圧続行の強硬姿勢を見せた。安保理声明はカダフィ政権に対し「暴力の停止」と国際法順守を求めているが、それで済ませてはならない。

 反カダフィの立場に転じたリビアの国連次席大使は、カダフィ政権による航空機を使った外国人傭兵(ようへい)や武器の流入を防ぐため、国連に飛行禁止区域の設定を求めている。人命より体制維持を優先する非人道的な政権を正す具体的行動が国際社会の責務だ。

 カダフィ政権では、法相や公安相にあたる閣僚が武力弾圧に抗議して辞任したほか、米国など各国駐在大使、さらに軍幹部・将校らの辞任や離反が相次いでいる。米欧や日本など主要国は人命保護を最優先に、現政権の崩壊も視野に入れた対リビア介入のあり方を協議する必要がある。

 一方、日本政府としてはリビア滞在中の邦人保護に全力を挙げなければならない。

 原油の確認埋蔵量でアフリカ大陸1位(世界8位)とされるリビアには、現在、石油会社や商社など約18社の日本企業が進出し、駐在員とその家族ら約100人が滞在している。

 一時国外退避の指示を出した企業が多いが、外務省によればなお半数以上がとどまっている。空港まで行き、搭乗を拒否されたケースも少なくない。政府は実効的な救援方法を検討すべきだ。

 例えば、リビアに近い東アフリカのジブチには海賊対処のため、自衛隊がP3C哨戒機2機と護衛艦2隻を派遣している。

 邦人輸送については、「安全が確保されている場合に限りできる」という自衛隊法の規定から派遣は困難とされるが、国民を守るために自衛隊を活用することを柔軟に考えるべきだ。朝鮮半島有事もいつ生じるかわからない。

 リビアでは日本の石油会社7社が計8鉱区の採掘権を獲得している。エネルギーの安定調達を目指し、一部では試掘も開始されている。人命と国益を守る国家の意思が問われている。