【主張】NZ地震
南半球ニュージーランド南島で発生した地震は、語学研修中の日本人学生らを巻き込んで被害がさらに広がる様相を見せている。
災害救援はスピードが命だ。政府は邦人の安全確認に全力を挙げるとともに、日本として最大限の緊急支援を行ってもらいたい。
地震が起きたクライストチャーチは南島の最大都市で、観光地としても知られ、邦人3千人余が滞在しているという。語学研修で滞在中だった富山市の富山外国語専門学校の生徒、教員計23人が巻き込まれたほか、安否が確認できない邦人も少なくない。
同国の北島と南島北部はオーストラリアプレートに、南島中部以南は太平洋プレートに乗っている。北島と南島でプレートの潜り込みが逆の関係になるなど複雑な構造で、それに伴う横ずれ断層が国土に多数走っている。
火山と地震の国だが、地震の発生確率は日本の10分の1程度で、昨年9月4日にも同市付近でマグニチュード(M)7・0の浅い内陸型地震が発生した。
このときもレンガ造りなどの建物が倒壊したが、奇跡的に死者は出なかった。今回はM6・3と規模的には小さかったが、被害は極めて大きかった。キー首相は「ニュージーランド史上最悪の一日かもしれない」と、深刻な状況を訴えている。
地震国日本は1995年の阪神淡路大震災を経験し、緊急の救助術などに豊富なノウハウを持つ。中国・四川大地震、ハイチ大地震でも救難支援の実績が国際的にも評価された。これらを生かすべきときだ。がれきなどに生き埋めになった人の生存率は72時間を過ぎると1割を切るとされ、何よりも迅速な救援活動が求められる。
政府は22日夜、外務省と国際協力機構(JICA)による調査チームを派遣した。派遣が決まった国際緊急援助隊を含め、効果的な援助態勢を組んでほしい。
ニュージーランドはいま夏で、旅行客や日本の春休みを利用した留学生らが多く訪れていた。持っていた携帯電話のメールなどを利用して、日本の家族や関係者に次々と連絡が入っている。
政府はこうした情報も生かし、現地政府や日本大使館などとも緊密な連絡を取りながら、邦人も含めた現地の支援活動に全力を注いでほしい。