日本神話よ、再び。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【from Editor】



先日、マレーシアのサラワク州を取材で訪れる機会があった。サラワク州は世界で3番目に大きい島、ボルネオ島の北西部に位置している。「州の半分以上が前人未踏の熱帯雨林」と聞くと、未開の地というイメージを抱いてしまうが、州都クチンは歴史的建造物と近代的な建物が立ち並ぶ、思った以上に発展した都市だった。

 「商店の2階部分は住居になっています。昭和の日本みたいでしょ」。ガイドの案内を聞きながら、この街の風景にどこか懐かしさを感じたのは、子供のころ、自営業を営む両親と住んでいた商店街に似ていたせいかもしれない。そんな感慨にふけりながらクチンの街並みを車の中から眺めていると、電器店が集まっている一角に目が留まった。

 パナソニック、シャープ、ソニー…。軒先の看板には日本を代表する電機メーカーの文字が並ぶ。ガイドによると、当地では「日本神話は依然として強い」そうだ。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの韓国サムスングループ関係者も「マレーシアではパナソニックにかなわない」とぼやくほどらしい。

 確かに日本貿易振興機構(ジェトロ)が昨年12月に発表した「アジア売れ筋商品調査」を見ると、マレーシア国民の日本製品への信頼の厚さがうかがえる。マレーシアの調査対象は首都クアラルンプールだが、テレビ、冷蔵庫、洗濯機は日本ブランドが優位にある。品質の高さやアフターサービスの良さといった日本企業ならではの強みが人気の背景にあるという。

ただ、日本製品は新興国攻略にあたって、品質は良いものの値段の高さがネックになっているとの指摘がある。それが韓国勢の台頭を許す理由の一つになっているとの見方もあるようだ。

 日本神話が強いとされるマレーシアでも、韓国勢の勢いを感じる光景を目にした。宿泊したクチン近郊のホテルが部屋ごとに設置している大型テレビは、ある部屋ではシャープ製、別の部屋では韓国LG電子製、といった具合に二分されていたのだ。

 アジア各国では富裕層・中間所得層が急速に拡大していくと予想されている。国民性にもよるだろうが、所得が増えるに連れて少々値段が高くても品質の良いものを選ぶ消費者が増えてくるのではないか。韓国勢の技術力はあなどれないが、そうなれば日本企業にもまだまだ勝機があるように思う。「日本神話よ、再び」である。


                 (フジサンケイビジネスアイ 編集長 吉田憲司)