祭祀の供物で並べられたか。
邪馬台国の最有力候補地とされ「女王卑弥呼の宮殿」とも指摘される奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡で、昨年9月に大量のモモの種が見つかった人工の穴(土坑(どこう))の中に、多彩な海産物や栽培植物も埋められていたことが分かり、桜井市教委が21日、発表した。卑弥呼の時代の、大量のモモと山海の幸を集めた祭祀(さいし)の状況も浮かび、市教委は「バリエーションに富んだ供物が並んだ祭祀が鮮明になってきた」としている。
土坑(南北4・3メートル、東西2・2メートル、深さ80センチ)は大型建物跡(3世紀前半)の約5メートル南で、3世紀中ごろの穴と推定される。
市教委が土坑内の土嚢(度のう)400個分の土をふるいにかけ、動物の骨や歯と9760点の植物の種を採取。骨や歯は宮路淳子・奈良女子大准教授(環境考古学)、種は金原正明・奈良教育大教授(植物考古学)が分析した。
結果、動物は魚類のマダイ、ヘダイ、アジ、サバ、コイ科、ほ乳類のニホンジカ、イノシシ、ネズミ、鳥類のカモ科、両生類のカエルの10種で、植物は73種類を判別した。植物の約半分は食用で、2765点のモモを筆頭にイネ、アサ、コウゾ、ウリ、ヒョウタンが多く、果実酒原料のニワトコやサルナシもあった。
また、金原教授による花粉の分析で、土坑周辺にモモ林が広がっていたと推定できるという。
分析で使われた種や骨は桜井市立埋蔵文化財センターで22日~2月27日に展示される。
和田萃(あつむ)・京都教育大名誉教授(古代史)の話 「すべてが神(しん)饌(せん)として供えられたのかは検討が必要だが、各地から色々な食材が集まっているのは面白い。纒向遺跡が単なる農村ではなく都市的な場所であったことを改めて明らかにしたことが重要だ」