『光る君へ』第23回『雪の舞うころ』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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藤原道長「私には妻が二人おりますが……心は違う女を求めております」

 

藤原宣孝「わしには三人の妻と四人の子がおる」

 

ゲスの極み藤原一族。どちらもまひろにホの字という辺り、まひろにはだめんずウォーカーの素質があるのかも知れません。ちなみにどちらがタチの悪い夫かと聞かれたら、明らかに三郎のほうと答えます。少なくとも宣孝は関係を持った全ての女性を平等に愛でているからね。尚、親友の娘に手を出す模様。うーん、この逆ペタジーニ。

さて、今週はここ数回の停滞が嘘のように話がガーッと動いて、結構面白くはあったのですが、ぶっちゃけ、前回今回は一週にまとめて然るべき内容であったとも思います。ムダにダラダラと引き延ばされた感は否めない。また、話が動いたといっても、メインキャラクターが動かすのではなく、ポッと出のサブキャラクターに動かされている印象が強いので、彼らが退場したら元の木阿弥になってしまう可能性大。兼家没後の本作はキャラクターの目標と行動原理が提示されないまま、ストーリーが漫然と進行してしまっているので、話が判りにくいのよ。これに加えて『主題の絞り込みの不足』と『物語を牽引するキャラクターの不在』があるから、視聴者は猶更『何に注目していいか判らない』という状態に陥っていると思います。今週がここ数回に比べて印象がよかったのは周明の言動に目を向けていれば話が判るという要素が大きかったのではないでしょうか。そんな訳で今回のポイントは全て周明絡みの3つ。

 

 

 

周明「話があって来た。朱様は通事を殺していない。俺に言ったことをもう一度言え」

 

前回の通事殺人事件の証人を引きずってくる周明さん。為時パッパは兎も角、まひろは証言の内容よりも、

 

まひろ「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」

 

という衝撃のほうが大きそう。めっちゃ流暢な日本語じゃあないですか。前回はオウムが種﨑敦美さんの声で喋って驚く。今回は周明が日本語を喋って驚く。ヒロイン&視聴者の驚き要素の省エネ化やね。

尚、事件の真相は『宋と商いをしたいだけだった。賄賂が少ないと言われて腹が立った。引き倒したら勝手に頭をぶつけて死んでしまった。今は反省している』という火サス的突発的犯行でした。福井が舞台なだけに周明さんには犯人を東尋坊の崖に追い込んで自白を引き出して欲しかったところ。尤も、釈放された朱さんも何やら裏でゴソゴソ動き回っており、アカラサマな貪官汚吏と目されていた地元役人も彼らなりの原則があった模様。これ、どう考えても為時パッパみたいな誠実さと学識だけが取り柄の人間の手に余る事態だと思うんですけど……こういう時こそ三郎の出番なのですが、前回まひろが手紙を送っても筆跡を見て性的にコーフンするばかりで具体的な対応を取らず、ヒロインからも意外と使えないと無能の焼き印を押されたばかりだからなぁ。別に史実を無視した活躍をさせろという訳ではありませんが、そろそろ物語を積極的に牽引する役割を、三郎には果たして貰わないと困ります。

 

 

 

まひろ「貴方は苦しい目に遭って大変だったけど、宋の国はこの国よりも懐が深い国なのではないかしら? もっと宋の国の話を聞かせて欲しい」

周明「宋人を信じるな。越前の役人が言っていたではないか」

まひろ「私はずっと宋の国に憧れていたの。宋の国は身分が低い者でも試験を受ければ官職を得られるのでしょう? そういう国にずっと行ってみたいと思ってきたわ」

 

親に海へ捨てられて、たまたま通りがかった宋の船に拾われて大陸に渡って、牛馬の如く酷使されて、このままだと死ぬとブラック企業から逃げ出して、運よく善良な医師に拾われたという雪代縁レベルの前半生を送った周明の話を聞いても『でも、宋ってとてもいい国なんでしょう?』とノー天気に宣えるまひろさん、マジ海外出羽守の先駆け。目の前に居る『試験すら受けられなかった人間』の存在をどう考えているのでしょうか。これは数週先に宋への幻想がコッパ微塵に砕け散るトンデモないシッペ返しが用意されている予感。是非、直秀レベルのトラウマ事件で、まひろさんの曇らせ顔を見せて貰いたいものです(外道)

周明も『中途半端な知識と好奇心を持ったいいトコの子供が一番操りやすい』ことを理解しているのか、NHK総合での中国語講座というEテレ感ある方法で、まひろと彼女の背後にいる為時パッパとのパイプを構築していきます。ここで面白いのは周明がまひろを『賢い』と評していることですね。『賢い』って褒め言葉じゃないんですよ。『鋼鉄のガールフレンド』の赤木リツコの発言や、シャアに『賢いな』と褒められた時のララァ・スンのリアクションが好例。『賢い』は目下に対する上から目線の驕った物言い。イヌ、ネコ、オウムに芸や言葉を教える人間の視点。少なくとも現時点の周明はまひろを恋愛対象どころか同じ人間とさえ見做していないでしょう。まひろも文筆を生業にしようとするなら気づけよ。(宋への)恋は盲目やね。

 

 

 

周明「国守の娘は左大臣と繋がりがあります。もしかしたら左大臣の女かも知れません。うまく取り込んで左大臣に文を書かせます。朱さまのお力になれるよう」

 

まひろと三郎の繋がりに気づいた周明。そこそこ国家的スキャンダルに発展しそうな展開ですが、まひろの筆跡を見てコーフンするドーテー並みの思考回路の三郎ですからまひろを自分の女と認識して貰ったと知ったら、その場で絶頂して問題に気づかない可能性大。サンキュー周明。しかし、国際ロマンス詐欺紛いのヤリクチで女から情報を引き出し、あわよくば国家レベルの役人までをも操ろうとする周明一派のスタンス、どこかで記憶にあると思ったら『相棒』の『酒壺の蛇』で日本人女性にスパイをさせた挙句、上司まで処分させた東国の工作員・王勇なんだよな。多分、周明のまひろに対する感情も、

 

そんな君を、私は心の底から愚かだと思う。

そんな君を、私はずっと嫌いだった。

これからも、ずっと嫌いだ。

 

という王勇の君原いずみへの思いに近いんじゃないかと思う、今のところはね。勿論、現時点の彼らの目標は通商の拡大という平和的な分野に留まっていますが、ラスト付近のアカラサマに怪しげな雰囲気からして、どうにも血を見ずには済まなさそうな予感。ここから幾つかの出来事を挟んで、刀伊の入寇イベントに繋がるのかなぁ。