大河ドラマと予算枠 | ~ Literacy Bar ~

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『坂の上の雲』の予告映像 が凄いことになっている。


どう見てもやり過ぎです。本当にありがとうございました。

見た感じ、やはり、旅順攻略と日本海海戦が主軸になっていますね。奉天会戦の印象は薄め。好古スキーとしては残念ですが、この作品は端緒から真之が主人公ですから、これは仕方ないと思うしかないです。

そんなわけで『坂の上の雲』第三部の放送が待ち遠しくて仕方ないのですが、そんな私と『坂の上の雲』の間には桃色汚染水大河ドラマ『GO~非女たちのせん☆ごく~』が2ヶ月近くも横たわっているんだよな。もう、来週から『坂の上の雲』を第一部から再放送しようぜ。そうすりゃ、一見さんの第三部に対する敷居も下がるし、本編の視聴率も少しはあがると思うんですよ。以前の記事にも書いたように、私は視聴率で番組の善し悪しを計るつもりは毛頭ありませんが、しかし、局の威信をかけた作品を猛プッシュしないでどうするんだよ……とまぁ、この点に関して喋り出すと、記事の本筋に入るまでに恐ろしく行数を使いそうなので、棚にあげておくとします。


今回の記事の眼目はネットなどで散見するある意見に対する私なりの回答です。上記の『坂の上の雲』の予告画像をご覧になられた方と思われますが、その方がこのようなことを述べておられました。


「ここ、2~3年の大河ドラマの出来が悪いのは『坂の上の雲』の所為。あれで予算を使い過ぎたから、肝心の大河ドラマ本編がしみったれた作品になった」


このような趣旨の発言であったと思います。この意見は今年だけでなく、昨年、一昨年も目にした記憶があります。確かに大河ドラマだけでなく、予算の過多とはプロジェクトの士気と密接に関連するものです。『予算は青天井だから、好きなようにやれ』といわれるのと『他のプロジェクトの関係で予算は例年よりも少ないよ』といわれるのでは、端緒からの意気込みからして違ってくるものです。況や、人件費、制作費、合戦場面の予算などに関しては語るまでもありません。多いほうがいいに決まっています。ですから、私も『坂の上の雲』の予算が大河ドラマの出来に悪影響を及ぼさなかったと断言する気はありません。

しかし、それはやはり、いいわけにならないと思います。だって、


『新撰組血風録』は面白かった


じゃん。ついでに、まだ2回しか放送されていませんが『塚原卜伝』も今のところは面白いじゃん(『テンペスト』はアレだったな)。『新撰組血風録』も全部が全部、手放しで激賞できる作品ではありませんでしたが、それでも、面白いと思えた回は何度もありました。やっちゃった感のある回も、それは新しいことに挑戦したり、自分なりの解釈を試みたり、少ない予算でムリをした結果であったりと、非常に前向きの失敗でした。『江』のように脚本も演出もちゃらんぽらんな仕事をやらかした挙句の失敗とはわけが違います。そして、これが肝心なことなのですが、誰がどう考えても『江』より『新撰組血風録』のほうが低予算でつくられていることです。セットや衣装は『新撰組!』の使い回しですし、ロケで撮影された長州派の隠れ家は毎回同じ古寺でしたし、これは非常に失礼な物言いですが、主要な登場人物を除いては、新撰組の幹部連中であろうが、各回のゲストであろうが、有名な俳優さんではありませんでした。少なくとも、たった1、2回の話題性を得るために何の必然性もない大出俊さんや芦田愛菜さんを登用する余裕がなかったのは確実です。

『江』が『坂の上の雲』の影響を受けた可能性は否定できません。ですから、この作品を過去の大河ドラマと比較するのはフェアではないかも知れない。しかし、それならば、同じ時期に製作された『新撰組血風録』や『塚原卜伝』も箸にも棒にもかからない作品になっていなければおかしい。ところが、現実は逆です。『新撰組血風録』は面白かった。失敗した回からも、低予算で何とか面白いものを創ろうとする気概を感じた。一方の『江』からはそうした意思がまるで感じられません。劇中におけるありえない画(朝鮮通信使の秀吉への謁見の場に堂々と主人公が同席する)をはじめ、恩のある人間、迷惑をかけた人間に対する主人公の謝意や謝罪の言葉が殆どない、目上の人間への基本の所作がまるでなっていない(主人公が座っている秀吉相手につったったまま口をきく&義父の家康相手に尻を向けたまま動かない)など、明らかに予算とは関係のない場面での失点で主人公に対する視聴者の感情移入に失敗物語を台なしにしています。やる気のない脚本家、やる気のないスタッフが大河ドラマのブランドの上に胡坐をかき、予算が少ないという口実で手抜きの仕事をしていると何よりの証拠といえます。


『坂の上の雲』の所為で『江』などの大河ドラマがつまらなくなったという理論。視聴者は兎も角、肝心の『江』のスタッフがこれを主張したければ、少なくとも『新撰組血風録』以上の話をつくらなければいけません。しかし、残り7回でそれをすることが可能でしょうか? 否、殆どムリでしょう。悪いことはいいません。ここはさっさと日曜夜の大河枠を『坂の上の雲』に譲って下さい。お願いします。