小説 照柿(下) 高村薫 | てんつぶ

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合田雄一郎刑事シリーズ第2弾の下巻。

 

愛人を列車事故に追い込んだとして夫の敏明が逮捕された佐野美保子。

彼女は警察からの事情聴取を無視して野田達夫のアトリエ部屋に引きこもる。

 

工場での溶解炉の不具合、従業員の死亡、通夜、43時間勤務、妻から愛人の追求、冷ややかな態度の息子。

押し寄せる難題や状況に神経を狂わせる達夫。

酔いの中、亡き父の絵を見ようと思い立ち真夜中に銀座の画廊を訪ねる。

だが何故か衝動で画廊の主を叩き殺してしまう。

 

生まれ育った大阪へ向かい朦朧と彷徨う達夫。

呼び出しに応じて大阪駅まで来たが、別れを告げる美保子を階段で突き落とす。

 

達夫の自宅で押収されたわら半紙のメモ。

「君みたいな人間は未来の人殺しだ」

それは幼き日に合田が達夫に突き付けた言葉であった。

 

☆彡

愛憎劇というには余りにも不条理が散りばめられた物語、重い。

印象はまさに西日に照らされた熟柿の色、照柿。

 

解説で編集者からドストエフスキー「罪と罰」のような作品をと望まれて書かれた作品とあった。

なるほど。

カミュなどを読み耽っていた多感な時期に読んでいたら、また感じ方も違ったかも。