かくして神話は生まれ変わった |  ZEPHYR

 ZEPHYR

ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

共生と融和をテーマにした、神話を題材にしたミュージカルを作る。

だいたいこんなもの。
というのは、「降りてきて」いました。

もうざっくりとした形では、すべて頭にあったのです。
構想の当初から、私の頭の中には、ワの国の中に三つのグループを作ろうと考えていました。
もともと島国に住むワの民(長い歴史の中で多くの渡来人も受け入れ共生・融合した民)。
クロガネ(鉄)の力で島国を征服しようとするオロチ国。
唯一の神を信奉し、自分たちの国を島国に作ろうとするカナンの民。

鉄器を持ち、支配を拡大しようとするオロチは、現代の資本主義社会や軍事力、近代文明そのもの象徴。
島国になかった宗教観を持ち込んできたカナンは、まさに宗教思想の対立の象徴。

現代社会の根本的な問題を、それぞれの国に背負わせたのです。

こういう構造の中に、いかに神話を取り込んでいくか。
もっとも重要なポイントのいくつかは確定されていたのですが、なにせ日本神話。
ものすごくたくさんのストーリーがある。

イザナギ・イナザミの国生みに始まって、イザナミの死、冥界訪問、三貴子の誕生(アマテラス、ツクヨミ、スサノオ)、アマテラスとスサノオの対立と天岩戸、追放されたスサノオのオロチ退治、大国主た国津神による国造り、天津神による国譲りの要求、天孫降臨とその後の日向神話……というような流れをすべて織り込むわけには行かない。

そんなのダイジェストでやっても面白くない。ストーリー的には、まったく脈絡のないものもあるのです。

それに記紀の神話には、不合理で説明されていない部分もたくさんあります。
主人公はスサノオと決まっていたので、とくにスサノオに関して述べると
① 天界では乱暴者だったのに、なぜ地上に下った途端、怪物を退治する英雄神となるのか。
② スサノオが天界を追放されたのは、冥界の母親に会いたい、母親の国に行きたいと泣き喚いていたことが、もともとの原因だが、記紀の中には彼が母親に現に会ったというシーンはない。そもそもなぜ、母親にこれほど執着したのか。
③ スサノオはオロチ退治の後、クシナダヒメと暮らしたと伝えられるが、その後の治世については記述がない。

スサノオの後、出雲に登場して国造りを進める神は大国主なのですが、じつはこの大国主ははっきりとは明記されない謎の母神のサポートを受け、多くの兄神たちの迫害から逃れ、やがて大国の主となっていきます。
またスサノオがいる冥界を訪ねるシーンもあります。

このスサノオと大国主は、もしかしたら一つの存在のダブルイメージではないか。この二つをつなげたら、物語は一生分語られるわけです(こういった例は、後の神武天皇と10代の崇神天皇などでも、よく言われていることです)。
また、スサノオが焦がれた母。
イザナミは火の神を生むことで亡くなっていますが、この火の神カグツチ。
これをスサノオと重ね合わせてみたら、スサノオが母親に執着し、母の国に行きたいといった理由付けにもなります。

そこで私は、スサノオ=大国主=カグツチという統合を行い、物語を構築することにしたのですが、ここへ至るまでに相当に試行錯誤しました。
そしてほかの記紀神話を、いかに取り込んでいくか。

私の目指したのは記紀神話をダイジェストで語ることではなく、完全にばらしてしまい、基本構造の中で再構成することだったので、この作業はとてつもなく難航しました。

ただストーリーを描くのだったら、まだ楽だったのですが、ミュージカルです、お芝居です。
もともと芝居畑の作家ではない私は、どこまでが舞台上でできて、どこまでができないのか、明瞭に線引きできないことも多く、このあたりが本当に悩みの種でした。

また市民参加のミュージカルです。
前回の「最後の五匹」のときに、ちょっと悔やまれることがいくつかありましたが、そのうちの一つが、主要キャスト以外はあまり登場できない、といこともありました。
ダンスなどがバリバリできる人は、そのシーンで出て来られるのですが、そうでない人も今回はどこかいろいろと出てもらえないか……

参加してくれている市民は多いのに、袖でずっと待機しているというのもさびしい話です。
そこで市民が多く登場できるような物語の構成にもしたいと、そんなことまで考えていたら、ストーリー構成だけでも厄介なのに、頭がパンクしてしまいそうになった時期もあります。

これは単純に私の力量不足です。

そんな成り行きで、第一稿の脱稿は当初の予定よりも二カ月は遅れたものになってしまいました。


しかし、結果的には天孫降臨神話と日向神話、これを除く主要ストーリーは、物語の中に封じ込めることができました。
しかも、記紀が語らないスサノオの謎についても、ミュージカルの中で再現することができました。
それがなんなのか、どのようなシーンになっているか、それは本番でのお楽しみです。


いよいよ明日が本番の第一日目。
見どころはたくさんありますが、ヤマタノオロチ登場のシーン、これはご期待ください。
演出家の先生、また衣装の先生方のご苦労のたまもので、迫力があるし

怖いです。



明日明後日は、ブログはお休みさせていただきます。
近隣のかた、この連休にお時間のあるかたは、是非、お越しください。




公演情報、当日チケットはこちらで!
    ↓
ヤオヨロズ制作委員会