運命ということを考えるときには、いろいろと複眼的な見方をしなければならないことも多いものです。
たとえば
今年、幸運の星、木星が蟹座に入りました!
蟹座の人は11年に1度の幸運期です!
というような表現が、とくに12星座占いではよく見られます。(注1)
これはすべて間違っているわけではないにせよ、あくまでも全体的な運勢の読み方にすぎず、個人の運勢とはまったく異なっていることが多い。
トランジットの木星の通過効果など、いえば全部の運勢の中の、ほんのわずかでしかないのです。
こんなトランジット木星のことだけを取り上げて、個人の運勢を推しはかろうとするのは、ずばりナンセンスです。
一つの目安にしかすぎません。
それも、すっごく小さな目安だと思ってもらったほうがいいでしょう。
木星が蟹座にあっても、個人のホロスコープの中では、非常に厳しい運勢になっていたら、焼け石に水程度の効果しかないし、木星の幸運効果も1年の中のほんのわずかな期間しか働かない、ということも、ごく普通にあります。
このような「全体傾向」と個人の運勢は別のもので、人の今年の運勢などをちゃんと見るときには、トランジット天体などを主体的に当てにしていたら、とんでもない間違いを犯すこともあります。
このような「全体傾向」と個人の運勢なら、あきらかに個人の運勢のほうが優先されます。
この個人運勢を読む手法は、占星術では主にプログレス(進行法)によって見ることができます。
しかし、このプログレス。
進行法自体も数種類ありますし、またじつは、プログレスをちゃんと解読できるようになるには、相当な経験や洞察力も必要になります(前提として、もちろん知識も)。
けれど、プログレスにはトランジットなど問題にしないほどの、大きな力があります。
ということは、これは先ほどの木星と逆のことも言えるということなのです。
たとえば今はトランジットの土星が蠍座にあり、蠍座の人は土星の持つ制限や抑圧、逆境、試練ということに遭遇しやすい、という「全体傾向」はあります。
が、個人のプログレスで絶好調になっている人も、当然ですが、普通にたくさんいます。
このような場合も、個人の好調のほうがはるかに優先されます。
つまり世間一般的な12星座占いの観点で、一喜一憂している方もとても多いのですが、そんな大雑把な占いより、個人のホロスコープを見ないと、何とも言えない。
これは声を大にして言いたいところです。
私も毎月の12星座単位の占いを出していますが、しつこいほど「これは全体傾向にすぎない」と繰り返しているのはそのためです。
個人の運勢は、このレベルの話だと、絶対的な優先度、権限を持っています。
ところが、個人の運勢よりも優先されるものも、じつはあります。
たとえばそれは国家の運勢などです。
同じ誕生日、出生時間も同じで生まれても、日本に生まれるのと北朝鮮に生まれるの、ヨーロッパの先進国に生まれるのと、アフリカの難民に生まれるのでは、個人の運勢を包んでいる大枠が違っています。
つまりこの地球上でほとんど違わないホロスコープを持つ人は存在するのですが、決して同じ運命はたどらない。
バイオリズム的に、何歳ごろはどのような運勢だということは共有されていますが、たとえば同じ火星のハードアスペクトが発生しているときに
日本では、「火傷する、怪我をする、炎症性の病気になる、車の事故に遭う」というような出来事にとどまるかもしれませんが、今のシリアのような情勢の国で生活していたら、「銃で撃たれる、爆発に巻き込まれる」というような出方に変わってきます。
つまりホロスコープを読むというのは、そのホロスコープを持つ人の国家的な背景も考慮して読まなければ意味がないのです。
このような国の事情は、個人の運勢を超越した上位のものとして、考えざるを得ません。
つまり個人のホロスコープ、その現在の運勢を最優先して考えるべき、というのは、それぞれの国で生きている人の環境に関わっていて、それぞれの国での常識的判断が必要になる、ということになります。
たとえばこの日本で生きている人の運勢を読むときには、私たち日本人の常識で考えればよいのです。
しかし、同じ星のアスペクトも、国によっては違った内容や程度を帯びることがある、というわけです。
もっと大きな話をすれば。
この地球の運勢は、すべてに優先されます。
もし明日、地球がブラックホールに呑み込まれるとか、あるいは巨大な天体と惑星衝突するとか、そのような運命にあるのだったら、それは一個人はもちろん一国家の好調さなどでは、決してフォローされません。
地球が滅びるのなら、私たちすべても滅びるのが道理です。
ただ地球の運命、この国の運命。
それも私たちすべての総体が作り出している、ということも、おそらく事実であろうと思います。
全体に対して、私たちは無力ではない。
が、個人の努力では変えがたいものはとても多い。
だからこそ、多くの人たちとともに私たちは生きている。
私はそう思っています。
(注)
誤解のないように申し上げておかねばならないのは、私が専門にやっている西洋占星術は、いわゆる12星座占いと同じものではありません。
12星座占いは、西洋占星術という大きな体系の、ほんのごく一部です。
数パーセントでしかありません。
12星座占いでいう性格や運勢の説明は、個人のホロスコープを解読するのとは、まったく次元も情報量も異なります。
12星座で個人の運勢を云々するのは、一本の木を見て富士山の樹海全部を語ろうとするのと同じくらい無謀な作業です。
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