長いボイドタイムでした。
一昨日のこともあり、私は用心してホテルの仕事に出向きました。
すると、
「昼の予約、キャンセルになった」
とレストランの担当責任者、Kさんが。
キャンセル。
ボイドそのものじゃん。
ここから昨日は始まりました。
お昼の営業はさしたることもなく、「お、ボイドなのに、ぜんぜん普通じゃん」という流れ。
そのままお昼は終了、といいたいところですが、実はこの日、私の所属するK配ぜんの所長がホテルに登場。
なんでも、新人さんの面接があるとか。
うーむ、ボイドタイムに面接。
この時間帯に採用しても、続かない可能性が高いし、そもそも採用になる可能性の方が低い?
このときの決定が無効になるということであれば、不採用を決めたことが無効になるということもある(つまり変な意味での採用?)。
どのように転がるか、見守りましょう。
そして夜。
になる前に。
実はその日、ホテル側から発注されていた配ぜんスタッフは、フレンチ・レストランに一名、和食レストランに一名でした。
フレンチが私で、和食がYさんという女性スタッフでしたが、昼の営業が終わった時点で、和食の方はキャンセルされてしまいました。
つまりYさんは帰宅。
「ええんかな~? ボイドタイムだぞ~」
私はこの時点ですでに懸念していました。
案の定。
この日の和食レストランは、蓋を開けてみると当初の予約の倍に。
そして、私のいたフレンチ・レストランも、五組の予約状況だったのが、オープン後間もなくひと組、フリーでご来店。
予約のお客様を迎えているうちに、さらにフリーでひと組。
レストランには私と責任者のKさん、もう一人の他の社員K君の三人。
実質的には六件のお客様と、プラス、VIPルームでの予約状況という流れになり、
こりゃ、三人で回せる状況ではないぞ

「すみません。生ビール」
「それじゃ、このワインをボトルで」
「このオリジナルのノンアルコールカクテルを」
普段以上の高確率でドリンクも出て、しかも手間のかかるものが多い。
(き、きつい)
と思う瞬間が何度あったか。
とくにK君は、もともと宴会の人間なので、どうもレストランの流れが分かっていない部分も……。
ドリンクが出せていないのに、オードブルを出してみたり。
責任者Kさんは、VIPルームのお客さんにかなり手を取られていて、どうしても表フロアの手が足りない。
この日はK君がランナーをしてくれていたので、私はぎりぎり表を回すことにほぼ専念。
こういうときに自分の持ち場を見失ってしまうと、かえって崩れてしまう。
料理やドリングを出そうとすると、次のお客さんが来たり、会計に来たり。
こういうときに大事なのは、冷静さ。
たった今、何をすべきなのか、どれを優先すべきなのかという判断。
それから笑顔。
私たちスタッフの作業が中断させられても、それは相手のお客さんには関係ない。
むっとするなど言語道断の客商売。
一昨日もそうだったのですが、結局、こういう緊急事態的な状態では、経験値と判断力がものをいうんですな。
たとえばそれぞれ別のテーブルの、冷たい皿のオードブルと、熱い肉の皿が一緒に出てきたら、これは迷わず熱い方を先に出すべき。
ドリンクを頼まれていても、たった今会計に来たのなら会計を済ませるべき。
ドリンクを少しくらい待たせても、笑顔で「大変お待たせしました」と言えば、たいていの人は寛容さを示してくださる。
もちろんケース・バイ・ケースなのだけれど。
何もかも遅滞なく完璧にするのがベストだけれど、限られた人員の中でのベターというのがある。
このベターを次々に選択していく厳しさというのが、この日はありました。
ようやく事態が落ち着いた頃、「zephyrさん、今日は9時くらいに上がってもらえると思うから」とKさんから。
お、思いがけない朗報。
これもボイドか?(予想外という意味で)
いやいや、ぬか喜びすると、それが崩れるかもしれない。
翌日の準備をすませ、その日のゴミ出しなども終えた私は、残り時間をカウントダウン。
「お疲れ様でした。上がってください」
Kさんのお言葉に甘えました。
Kさん、ボイドタイムはまだ一時間ほどあるんですよ。
この一時間のうち、用心なさってくださいね。
と、心で言いながら。
ゴミ出しをしたとき、地下で和食レストランの社員、Mさんとばったり会いました。
先月、ルミネセンツァのランチを一緒にしたMさんです。
「今日、やられたんだって?」
「はい。倍ですよ。予約時の倍」
時折、予約なしでやってくるお客さん一家がいて、それがけっこう響いたようでした。
「まあ、やられても不思議じゃない。こっちもやられた。ボイドタイムだから」
「そうなんですか? いつからボイドだったんですか」(←ボイドタイムについては知っている、ちょっと違うの分かる女性)
「昨日のはじめから、今日の夜10時くらいまで」
「あ~、ずっぽりはまっていますね」
Mさん、納得した様子。たぶん前日のことも含めて考えたのでしょう。
こうしてzephyrの連続勤務は終了したのでした。
よぉし、今日はメール鑑定、がんばるぞー
