ボイドタイム奮闘記2 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

昨日の午後9時58分まで。

長いボイドタイムでした。

一昨日のこともあり、私は用心してホテルの仕事に出向きました。

すると、

「昼の予約、キャンセルになった」

とレストランの担当責任者、Kさんが。

キャンセル。

ボイドそのものじゃん。


ここから昨日は始まりました。

お昼の営業はさしたることもなく、「お、ボイドなのに、ぜんぜん普通じゃん」という流れ。

そのままお昼は終了、といいたいところですが、実はこの日、私の所属するK配ぜんの所長がホテルに登場。

なんでも、新人さんの面接があるとか。

うーむ、ボイドタイムに面接。

この時間帯に採用しても、続かない可能性が高いし、そもそも採用になる可能性の方が低い?

このときの決定が無効になるということであれば、不採用を決めたことが無効になるということもある(つまり変な意味での採用?)。

どのように転がるか、見守りましょう。


そして夜。

になる前に。

実はその日、ホテル側から発注されていた配ぜんスタッフは、フレンチ・レストランに一名、和食レストランに一名でした。

フレンチが私で、和食がYさんという女性スタッフでしたが、昼の営業が終わった時点で、和食の方はキャンセルされてしまいました。

つまりYさんは帰宅。

「ええんかな~? ボイドタイムだぞ~」

私はこの時点ですでに懸念していました。

案の定。

この日の和食レストランは、蓋を開けてみると当初の予約の倍に。

そして、私のいたフレンチ・レストランも、五組の予約状況だったのが、オープン後間もなくひと組、フリーでご来店。
予約のお客様を迎えているうちに、さらにフリーでひと組。

レストランには私と責任者のKさん、もう一人の他の社員K君の三人。

実質的には六件のお客様と、プラス、VIPルームでの予約状況という流れになり、

こりゃ、三人で回せる状況ではないぞショック!

「すみません。生ビール」

「それじゃ、このワインをボトルで」

「このオリジナルのノンアルコールカクテルを」

普段以上の高確率でドリンクも出て、しかも手間のかかるものが多い。


(き、きつい)

と思う瞬間が何度あったか。


とくにK君は、もともと宴会の人間なので、どうもレストランの流れが分かっていない部分も……。

ドリンクが出せていないのに、オードブルを出してみたり。

責任者Kさんは、VIPルームのお客さんにかなり手を取られていて、どうしても表フロアの手が足りない。

この日はK君がランナーをしてくれていたので、私はぎりぎり表を回すことにほぼ専念。

こういうときに自分の持ち場を見失ってしまうと、かえって崩れてしまう。

料理やドリングを出そうとすると、次のお客さんが来たり、会計に来たり。

こういうときに大事なのは、冷静さ。

たった今、何をすべきなのか、どれを優先すべきなのかという判断。

それから笑顔。

私たちスタッフの作業が中断させられても、それは相手のお客さんには関係ない。

むっとするなど言語道断の客商売。


一昨日もそうだったのですが、結局、こういう緊急事態的な状態では、経験値と判断力がものをいうんですな。

たとえばそれぞれ別のテーブルの、冷たい皿のオードブルと、熱い肉の皿が一緒に出てきたら、これは迷わず熱い方を先に出すべき。

ドリンクを頼まれていても、たった今会計に来たのなら会計を済ませるべき。

ドリンクを少しくらい待たせても、笑顔で「大変お待たせしました」と言えば、たいていの人は寛容さを示してくださる。

もちろんケース・バイ・ケースなのだけれど。

何もかも遅滞なく完璧にするのがベストだけれど、限られた人員の中でのベターというのがある。

このベターを次々に選択していく厳しさというのが、この日はありました。


ようやく事態が落ち着いた頃、「zephyrさん、今日は9時くらいに上がってもらえると思うから」とKさんから。

お、思いがけない朗報。
これもボイドか?(予想外という意味で)

いやいや、ぬか喜びすると、それが崩れるかもしれない。

翌日の準備をすませ、その日のゴミ出しなども終えた私は、残り時間をカウントダウン。

「お疲れ様でした。上がってください」

Kさんのお言葉に甘えました。

Kさん、ボイドタイムはまだ一時間ほどあるんですよ。

この一時間のうち、用心なさってくださいね。

と、心で言いながら。


ゴミ出しをしたとき、地下で和食レストランの社員、Mさんとばったり会いました。

先月、ルミネセンツァのランチを一緒にしたMさんです。

「今日、やられたんだって?」

「はい。倍ですよ。予約時の倍」

時折、予約なしでやってくるお客さん一家がいて、それがけっこう響いたようでした。

「まあ、やられても不思議じゃない。こっちもやられた。ボイドタイムだから」

「そうなんですか? いつからボイドだったんですか」(←ボイドタイムについては知っている、ちょっと違うの分かる女性)

「昨日のはじめから、今日の夜10時くらいまで」

「あ~、ずっぽりはまっていますね」

Mさん、納得した様子。たぶん前日のことも含めて考えたのでしょう。

こうしてzephyrの連続勤務は終了したのでした。

よぉし、今日はメール鑑定、がんばるぞービックリマーク