きんでーちの会 |  ZEPHYR

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ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

昨夜は真備町というところまで出かけて、「きんでーちの会」に参加してきました。

きんでーち?

なに、それ?

と思われるかもしれませんが、岡山訛りの「金田一」です。
そう、金田一耕助。

横溝正史の作り出した名探偵。
横溝正史は戦時中に岡山に疎開しており、そのときに岡山で見聞きした出来事や風物が、後の創作に大きな影響を与えたことは、よく知られています。

それが現在の真備町で、毎年ここでは秋に横溝正史にちなんだイベントが行われたりしています。

『本陣殺人事件』はリアルにこの真備町が舞台となっていると言っても過言ではありません。


この会を主催されているYさんからご依頼を受け、昨日はこの会に講演というのか、半分は座談会みたいな形で出席することに。

まあ、自分と横溝作品の関わりについてお話しさせてもらいました。


私にとって、推理小説といえばそれは正史というくらい、リスペクトしています。

私が推理小説に出会ったのは、中学校の図書館だったのですが、そこにモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンのシリーズがあった。
そこからすべてが始まったのです。

ポプラ社の児童向けの分厚い本。

片っ端から読みました。

それが終わると、その下の段にあった江戸川乱歩のシリーズを。

次に待っていたのが正史で、謎解きのおもしろさ、それもフーダニット・ミステリー(誰がやったのかということを解き明かすスタイルの推理小説)の醍醐味は、私にとってはすべてこの正史から発しています。

中学在学中にはまねごとの執筆を始め、高校時代にようやく長編小説を三つ完成させることができました。
このときはSF的なものを書いていたのですが、やがて推理小説への回帰が起こり、私は現代の名探偵を作り出そうと考えるようになりました。

大学時代のことです。

このときにある懸賞小説に応募したのが「RUNNING」という作品で、この物語の主人公は、当時の私が持っている属性をすべて備えていました。

大学生。
占星術師でもある。
バイクに乗っている。
そして趣味的に探偵をやっている(私は探偵はやってませんが)。

ところがデビューする頃になると、島田荘司さんがすでに御手洗潔という占星術師で、時にはバイクも駆ることができる名探偵を創出していた、という事実を知り、
「うーん、かなりキャラ、かぶってるよなあ」
と、この主人公からは占星術を抜き去り、ライダーである探偵として性格を明瞭にしました。

これが後の作品に登場した南虎次郎なのですが、その名前とキャラクターはすでに大学時代から完成されてあり、本来は占星術師でもあったのです。

「RUNNING」の原稿は今でも自宅の片隅にあります。
懸賞に応募すると、その原稿は返却されないので、書くときにカーボン紙をはさんで複写しながら執筆するというようなことも、当時はしていました(涙ぐましいアナログ時代)。

昨日、正史と金田一に関するお話をさせて頂く課程で、ふと思い出したのは、この南虎次郎から分岐した占星術師の名探偵の話を、ずっと書こうと心の中で暖めていたことでした。

これは当時の講談社の編集者の方などにも、「そのようなものを書きたい」ということは、何度もお話ししていたのですが、何となく実現せずに来てしまいました。

今、私がこのブログ上で老占星術師のお話を書いているのは、その心残りから生まれたのかもしれません。
これはこれで良いのですが。

いずれチャンスがあれば、占星術師の名探偵を書いてみようと思います。

そして、今後、自分が書くべきことも昨日の会で、一つ明瞭になった気がしています。