サンショウウオの話60/礼子 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
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 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

カレル・チャペック「山椒魚戦争」。
昔SFの世界では人間以外の生物が地球を支配するというのが流行ったことがあるみたいです。火星人だったり猿だったり、私が子どもの頃読んだ本にはイルカのがありました。何気なく探したらあったんでびっくり。小松崎茂さんの絵だったみたいです(サンダーバードのプラモデルの絵で有名)。「イルカがせめてきたぞっ」で検索をかけてみて下さい。
それはさておき、これもそういう話だと思ったらちょっと違います。とにかく世界中が真珠を探していた時代、一人の船長が南太平洋の小さな島で地元に「悪魔の入り江」と呼ばれるところに気付きます。ここならまだ手付かずの真珠があるに違いない。するとそこには海に住む大山椒魚の群れがひっそりと生きていました。船長は彼らが言葉を理解することに気付き、真珠とりの労働力として世界の海に連れて行きます。やがてその存在が知られだし、船長の死後はスポンサーが沿岸工事用の労働力として山椒魚を輸出。そのうち各国が領土を広げるために勝手に増やしていきます。そして山椒魚が自分達の権利を守るために立ち上がり始めます。
山椒魚は人間の都合でどんどん増えて行きます。国境の警備のため武器も持たされます。ドーバー海峡でイギリスの山椒魚工事部隊とフランスの山椒魚が紛争していたりします。何か荒唐無稽とは言えないリアルさがありました。こんな山椒魚がいたら絶対しそうだと思いましたから。
国家間の争いが山椒魚を巨大勢力に押し上げていく恐ろしい話でした。