愛の星・金星の二つの顔 |  ZEPHYR

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恋と愛の違い ブログネタ:恋と愛の違い 参加中
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占星術上、恋と愛に違いはあるのでしょうか?
じつはどちらも「金星」に関わっていることは間違いありません。
しかし、恋愛運を見るポイントが5ハウスで、結婚運を見るポイントが7ハウスと、異なる場所がそれぞれ恋愛と結婚を受け持っていることには意味があると思われます。

つまり恋愛と結婚生活は同じものではないということが、占星術でも定められているのです。
これは、しかし、誰が考えてもそうですよね。
結婚は共同の生活、経済生活を成り立たせてゆくものです。さらにその先には子育てとか、家族関係の構築とか、地域のコミュニティーでのつながりとか(大きい小さい、深い浅いの違いはあるにせよ。乳母車を押しての公園デビューからしてそのようなもの)……まあ、子供を媒介にした世間というのは、じつに奥深いものです。
そうした中で、夫婦は長い歳月を過ごしていかねば成りません。
時には夫の苦境もあるかも知れません。
妻が体の調子を崩すときも。
そんな暮らしで、互いに結び合うものといったら「愛」しかないでしょう。
これを絆とか情とか、いろいろ呼び変えても良いですが、根本的にはそこには愛があるはず。

対して、恋愛はかならず冷めます
こういう言い方をすると、あまりにもロマンがない感じですが、いつまでも相手に恋心を抱き続けていられる関係というのは、ごくごくまれだと思います(ないとは申しません)。
しかし、相手のことを昼も夜も思い出して夢にまで見、恋いこがれ、相手のちょっとした言葉や対応に不安に駆られ、「どうしてもあの人のそばにいたい」と熱望するあの感情は、いつまでも長く続かないことを誰もが知っています。
というのは、事は簡単なのです。
相手を獲得した後、いつまでもいつまでも不安に思って過ごすことは、あまりないはずです。良好な関係が続けば、安心が生まれてきます。
そうすれば、あの狂おしい感情は次第に沈静化するのが普通です。
恋愛期間というのは、相手を完全に獲得するまでの期間と考えても良いかと思います(先に述べたように例外はあります。夫婦になっても恋愛している2人はいると思います)。

「恋愛」という体験から「恋」が抜けたら、「愛」だけになります。よく言われることですが。
恋は愛の一形態ではないでしょうか?

これは「変身する金星」の質に関わっているような気がします。
というのは、金星はよく知られているように「愛と美の女神」ですが、このような形態に至る以前の古代、シュメールなどでは地母神であり、また「戦う女神」でもあったのです。
シュメール神話のイナンナ(金星)は、なくした夫を取り戻すために冥界にまで下ります。
これはまさに恋いこがれての情動的な女神です。
これが時代が下っていくと、普通の愛の女神に落ち着いてゆくのです。

これは金星を支配星とする星座が二つあることと関連しています。
一つは牡牛座で、これは「所有」に関わる地のエレメント星座です。
これは古代の金星の象徴であったように思えます。「星座別生きがい論」でも牡牛座の項目で触れましたが、牡牛座というのは意外に好戦的なところを秘めているのです(テーマで検索してください)。
それは「相手を獲得すること」に関わっていて、そのためには誰かと戦わねばならない、何かに抗わねばならないからなのです。そして一度獲得したら、それを我がものとし、守っていかねばならない。
このありようが、「恋愛期間」なのです。

なぜ恋愛時に、相手のことをあれほどに恋いこがれるのか?
単純です。
それは相手がまだ自分のものになっていないからです。

ギリシア神話時代に入ると、金星は愛と美、調和の女神と性格を変えてしまいます。これが金星を支配星とする二番目の星座、天秤座なのです。
そしてこれが結婚の宮でもあるわけです。
ここにはもはや戦う女神の姿はありません。
戦う必要もないからです。天秤座は契約の宮でもあり、それはつまり婚姻という契約も含んでおり、法の名の下に2人の関係が保証されているので、基本的に争う必要はないのです。
これが金星の二番目の姿で、ここで「恋」の文字がぽろりと落ちるのです。

ところで、女性と男性では、この「愛」というか金星への関わり方が、ちょっと違っています。
金星というのはもともと女性の星そのものです。
したがって、女性の場合は初期の恋愛期、獲得以前や進行中から、ダイレクトに「愛」を相手に感じやすいと考えられます。
しかし、男性は自身の雄としての行動パターンの一部に、火星を別個に持っています。
もちろん男性にとっても金星は「愛」であり「恋愛」なのですが、性器そのものを暗示するかのような火星がもともと男性衝動として備わっています。
女性は金星のみ(冥王星などもありますが、ここでは除外しておきます)。
だから、恋愛と愛は同一なのです。いや、同一に混合されやすいといった方がよいか?
が、男性ははじめから二分されています。
それに金星はもともと女性そのものなので、はじめから自己同一化していないのです。
男性と金星の間には距離があります。

だから、男の「好きだよ」とか「愛している」という言葉の中には、本音として「おまえを抱きたい」(火星)というのがかならず含まれています。特に初期は。
こう言っちゃうと、ホントに身も蓋もないんですが(苦笑)。

女性の中で恋愛や愛情は、はじめから混沌としてありますが、男性が「愛している」ということを実感するようになるのは、金星と交わって一体化したと実感したときに、初めて可能になると考えられます。
だから、男は最初から本当の意味での「愛している」が、言いにくい生き物なのでしょうね。

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特に男女間においては、相手が完全に自分の理解するところのものになったとき、愛に変換されてゆくのかも知れません。