星座意識と環境・時代の関わり |  ZEPHYR

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ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

ラガブーリンさんのコメントにお答えしたいと思います。

牡羊座最終度数ということは、サビアンシンボルは「アヒルの池とそれが育む子供たち」というものになります。
牡羊座というのは12星座の最初の星座で、この世に誕生して存在すること、「自分は在るんだ」という意欲に満ちた星座です。そこで彼はこの世に存在する自分の意味や有り様を求めて、活発に活動を行います。
これが牡羊座が活動の宮であり、エネルギッシュとか、猪突猛進とか、熱しやすく冷めやすい(求めて様々なものに夢中になるから)とか、開拓精神に溢れているとかいわれるゆえんです。
その牡羊座の最終度数は、アヒルと池で表現されているのですが、これは様々な領域に首を突っ込んで自分の有り様を求めてきた牡羊座が、結局自分のもといた場所、生まれ育った土地だとか、慣れ親しんだ職場だとか、そういったものに象徴される何かに戻り、そこでこそ自分が安心して生きられることを見つけ出すといった意味合いです。
現実的な場所を指すこともありますが、自分のやりたかったことは最初に子供の頃思い描いていたものだったという気づきや、いろいろやってきたけれど、結局は本質は同じことに携わっていたのだという気づきといった形で顕れることもあるでしょう。
これはちょっと余談になりますが、覚えておかれると良いかもしれません。

さて、今の時代における牡羊座的な生き方と存在理由、価値といったものですが……。

その時代に合った運勢、星というものはたしかにあります。
たとえば戦国時代にふさわしいのは、牡羊座的な好戦的要素かも知れません。牡牛が持つ自分の所有物を守り抜こうという意欲も有効でしょうし、山羊座の権勢欲も向いているかも知れません。
しかし、戦国時代に、では魚座のような無私の献身、水瓶の博愛などが生かされないかというと、私はそのようには考えません。
家臣や領民を愛し、大事に思うからこそ、というような名君の誕生を促す可能性もあるからです。

私たち人間は、その時代、その選んだ環境(国家や宗教的背景)の影響を受けて生きています。
それと自分との関わりには、無限のバリエーションがあり、百人いれば百人のプロセスがあり、物語があります。
無価値な人生などありませんし、すべてが意味のある人生です。

しかし、置かれた環境や時代の空気の中で、ある星座意識が苦しむということはあると思います。
日本には「出る杭は打たれる」という言葉があるように、集まった人間はなべて同じであることが望ましいというような精神風土があります。
牡羊座には日本で生きることに、すでに若干の(あくまでも若干です)生きにくさがあるはずです。

しかし、全体的に新規事業を興さねばならない時代には、牡羊座的な意識はもっとも必要とされます。
たとえば本田宗一郎さんの生きた時代のような(本田宗一郎さんが何座か調べていませんが、あくまでも時代的な空気のたとえとして)。

四柱推命にはカイゴウ星という特殊星が誕生日に設定されています。
これはかなり好戦的で性根の強い、文学者や武道家、政治家などに多い星といわれますが、かつてこの星を持つ文学者が多く存在した時代があります。
芥川龍之介、川端康成、太宰治、三島由紀夫。
すべてこのカイゴウ星です。
カイゴウ星は先頭を行く勢いの強い星ですから、この時代の文学を率いて行くには好都合だったのでしょう。
しかし、現代においてはカイゴウ星を誕生日に持つ作家はほとんど存在しません。
それは全体的に安定期に入り、カイゴウのような際どい創作活動よりも、より現実的で安心感のある手法や匂いを持つ文学が愛好されるためだと考えられます。

しかし、だからといってその時代にそぐわない星を持つ者が、活躍できないとかいうわけではありません。
カイゴウを持つ作家も、やはり比率は少ないですが、現代でも存在しています。
これは本人の努力と、意志と選択の問題からです。
そぐわない環境と自分の折り合いをどうつけ、なにに気づき、目覚めていくかということ。
どんな業種でも、同じようなことは言えます。

安定した時代では、牡羊座は活躍できないのか、ということですが、そのようなことはないというのが私の意見です。
なぜなら、おおざっぱにいっても牡羊座は地球の全人口の十二分の一を占めているはずで、何億人も存在しているのです。
日本に限っても、一千万人くらいは牡羊座です。
その中には安定期でも、新規ビジネスに打って出て成功を収めている牡羊座もいれば、スポーツで活躍している方もいらっしゃるでしょう。安定した会社の中で、自前の行動力と推進力でリーダーになっている方もいるはずです。
これらの違いは、個人のホロスコープ・チャートの中にしか答えはなく、12星座占い程度のおおざっぱな見方では、なぜそのような違いが生じるのか、解答を出すことはできません。

たしかに来年、木星が牡羊座に入宮します。
しかし、一度、魚座にバックしたりしますし、牡羊座最終度数のラガブーリンさんが木星の幸運を受けることができるのは、2011年(再来年)の5~6月にかけてだと思われます。
もちろん、これは太陽度数だけの話で、他の牡羊座の中に金星や水星、火星、月などがあれば、その期間は増えますが、これもチャートを見ないと何とも言えません。
木星は幸運の星で、来年再来年は牡羊座は幸運期ということが言えるでしょうが、効果は一年ほど。やはり一時的なものです。

それよりは天王星が牡羊座に入宮するほうが、世代的時代的には大きな意味があると思います。
牡羊座の意味する物事や、また牡羊座生まれの方々は、これ以降、天王星の「変革」を経験します。
牡羊座の在りよう、生き方、物事の意味づけが変わってくるはずです。

そういう意味では、牡羊座意識はこれから重要度を増すと考えられます。

安定期に牡羊座が全部実力を発揮できないということはありませんが、自分に合った時代の風が吹き始めたとき、有利に働くということは言えると思います。
しかし、これもまたその風が吹き始めるときまで、自分がどう生きてきたか、ということに関わっています。
総体として、塞翁が馬ということは言えます。
なるようになるとリラックスした方が力を発揮できることも多い。ですから、プラス思考としてのそれはOKだと思います。
しかし、どうせなるようにしかならないんだという投げやりでは、その人の人生は発展的なものにならないでしょう。
火星が突出した力を発揮する子供は、将来、優れたスポーツ選手になるかも知れませんが、使い道を誤って、火星の悪しき面、暴力や喧嘩、強引といったもので生きていけば、人生がどう変わっていくか、誰の目にも明らかだと思います。

人の人生は、本人の意志と選択。
多くはそれに関わっていますし、そこにこそ人がこの世に生きて、存在する価値があると思います。