年を取らない秘訣 |  ZEPHYR

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ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

46才になったzephyrです。

ついこのあいだ、私がホテルという職場にお世話になり始めた頃、同じレストランやバーにいた男性とその奥さんが、ひょっこりバーにやって来ました。Sさんというのですが、彼と奥さんは職場結婚です。つまりお2人とも、私は既知だったわけですが、それにしても2人揃ってお目にかかるのは十何年かぶりでした。
奥さんの方が私を見て、「すごい……ぜんぜん、変わってない」と本気で仰っていました。
実際にはそんなことはなく、結構おぐしの方が薄くなったりしています。
しかし、あまり変わらないという自覚はあります。
たぶん、好きなことやって生きているからでしょう。

ホテルに勤務し始めたのは、息子が生まれる前年からのはずですから、もう17年近く前になります。Sさんや、ほかにOさんという人などがいて、私にレストランのこと、バーのことを教えて頂きました。
Sさんが好きだったカクテルを思い出したので(ご本人もどんなものを飲んでいたか忘れてしまっていた)、ネグローニというそれをお出ししました。
飲む内に思い出されたのか、しきりに納得されていました。

今はサービス業とはまったく違う業種に就いているSさん。
しかし、そうして今ある生活だからこそ、子供たちとの触れあいや家族とのつながりを大事にできているというのが、お話の端々から伝わってきました。
ホテル業界(飲食業全般だろうな)というのは本当にシビアな世界で、なにがというと一般に生活している人達と生活時間帯が合わないということが、非常にきついものがあります。

土日はたいてい休めませんし、そうなると子供と友に過ごす休日は、夏休みとかの長期休暇中でないと発生しません。
入っている部署にも拠りますが、昨今の究極的人手不足もあって、そうそう早くには帰れません。
帰宅しても奥さんや子供は寝ている、とか。
食べるものはスーパーやコンビニで買ったお弁当やインスタント食品ばかり。

家庭崩壊するようなところも多いと思います。

私が十数年、この業種を続けてこられたのは、他の時間をできるだけ家族のために振り向けていることと、やはり子供が小さかった頃、非常に愛情を注いで、妻と一緒に子育てをしてきたということが大きいと思います。その頃のことが、子供の意識の底にあり、そして今でもいろんなことを話し合える家族関係になっているからこそ、と言えるでしょう。
それに、ホテルに勤務といっても、私は常に作家という本業がありながらの関わりだったので、ある意味、心は自由だったのです。
このような業種を、ただ食べていくために続けなければならないとしたら、それは大変なストレスで、いろんなところに弊害が出てくると思います。
サービス業はそれ自体が好きな人間でないと(人様に喜んでもらうことを自分の喜びにできる)、なかなか長期は続けられません。そんな気持ちがなくても、やれる人もいないことはありません。義務とか「他にできることがない」などの理由で働くのですが、非常に我慢強い性格の人は、それだけでもやっていけないことはありません。
しかし、後者はストレスも非常に多く、結果的に早くに老け込む人が多いように思えます。

だから、この業界にいると、実年齢以上に老け込んでいる人と、実年齢以上に若く見える人に分かれることが多いように思えます。
私が「変わらない」と言われるのは、たぶんこの業界にいることが喜びの一部にもなっているし、ストレスも少なくて済んでいるからでしょう。

しかし、向かないのにあえてこの業界に居続けるというのは、なんらかの事情があるにしても(現実的な理由もあれば、その人の運気や魂の見えざる問題)、私としてはあまりお勧めはしません。
それほどハードな職場だし、家庭のことを考えたら、それはもう条件としては最低に近いものがあるでしょう。
今、まったく別な職に就いて、人とのつながりの中に幸せを感じているらしいSさんを見ていると、やはり人間は食べていくことは最低限度かも知れませんが、幸せのありかは家族や他の人間関係の中にこそあると痛感します。

職場の良し悪しというのも、多くは人間関係から感じるものですしね。
幸せでいられるかどうか。
それが年を取らない秘訣かも知れません。