歯止めなき世界 |  ZEPHYR

 ZEPHYR

ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

「増大と暴走の4月」
もっとも危険な時期に入りました。
とたんに起こったのが、やはり「増大と暴走」を象徴する、中国での「愛国デモ」。

今回はチベット問題に絡み、パリで聖火リレーの妨害が起き、オリンピック開会式出席をボイコットする可能性があるサルコジ大統領と、ダライ・ラマ14世との対話を強く促すフランス政府への反撥から、「反仏デモ」という結果に結びついています。
中国に進出しているフランス系スーパー、カルフールが非買運動や抗議デモのもっとも大きな攻撃対象になっているようですが、このままエスカレートすれば怪我人や死者が出る可能性もあります。
そうなれば、これは完全に国際問題、政治問題に発展し、フランスがオリンピックそのものをボイコットし、それに同調、追従する国も出てくるかもしれません。

中国としては、それは避けたいところ。
今回のデモは、05年の反日デモ以来の規模。中国ではネットやメールで怒りや憎悪が、みるみる増殖する傾向が見られます。

まあ、なんでもそうなのですが、「良い噂」よりも「悪い噂」、「善意」よりも「悪意」のほうが広まりやすい。
私が普段従事しているサービス業などもそうですが、ある統計によれば、そのホテルの良い評判より、悪い評判の方が3倍の広がり方をするそうです。
スピードも、数も。
つまり良い評判を広めようすすれば、3倍の努力と3倍の時間が必要になるということですね。

なぜ人間は、悪いことの方により惹かれるのでしょうか?

日本でもそう。
今、問題になっている学校裏サイト。
子供たちがやっていることは、大人たちがやっていることの正確なコピーに過ぎません。
大人たちが匿名で個人をやり玉に挙げて、攻撃するということを現にやっている。
揶揄、非難、嘲笑、そして存在否定。

日本の場合、現代においては「愛国心」などというものの発露が乏しく、中国のような形を取ることは考えられませんが、やっていることの本質は同じです。
だから私は中国のケースばかりを悪く言うつもりはありません。

たぶん、悪い出来事の方が「面白い」のでしょう。
たとえば小説でも、「美男子で、頭が良くて、スポーツ万能で、高学歴からハイ・キャリアの人生、きれいな奥さんをもらって、引退後は孫やひ孫に囲まれて、大往生しました」なんていう男の人生を、たぶん書く方も読まされる方も、とてもつまらない。
やはり人が読みたいのは、主人公の人生に「負」の要素=逆境や苦難があり、それを越えていく物語だと思うのです。
みんな、そういうのに共感する。
なぜならこの世は、とても不完全で思い通りにならず、自分自身がそうだから。

しかし、物語ならやはり顛末というものがあり、そこには作り手の良心を込めることもできる。
読者もまた、最後の光を見たい。
これがステレオ・タイプだとしても、やはり王道と言うべきでしょう。

現実の顛末は、ストーリーの終焉ではなく、常に次なる展開への布石です。
憎悪は憎悪を生み、暴力は暴力の連鎖となる。
一時的な和解や調和をもたらすことがあっても、この「負の連鎖」はなかなか断ち切ることができなくなる。

断固とした意志と決断がなければ。
それには何よりも勇気が必要。

人類の叡智はどこに?

ところで、つい昨日のことなのですが、とある企業関係のお客様の会話を小耳に挟むことがありました。
その中で、私たちがあまり知らない裏事情が話されていて、衝撃を受けました。
会話をされていたのは、K重工とか、あるいはF重工とか、M重工とか、そういう日本の最重要国際企業に関連した方で、そこで「中国がチベットを手放さない本当の理由」を語っておられました。

リチウムだそうです。
チベットにはその資源が豊富にあり、「他にはない」のだそうです。
他にないということはないのでしょうが、少なくとも中国ではチベットがそれほどに重要なリチウムの産地だということでしょう。

リチウムは私たちが使っているパソコンやら何やら、非常に多くの家電製品がこのリチウムの電池を使用しています。
現代の中国にとって、これは絶対に手放せない資源ということです。

この情報の裏を私は取っているわけではないので、その人の言葉が本当なのかどうか、正直なところ分かりません。
しかし、それを聞かされれば、中国政府のチベットへの対応も理解しやすくなることは確かです。

世界は、政治は、やはりお金で動いているということでしょうか(イラク戦争のように)。

暴走に歯止めを。
人間の欲望に歯止めを。