不安の海 |  ZEPHYR

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ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

最近、多い占いの依頼に、「不倫」がある。

ここではその是非は問わない。
私は相談者の依頼を受け、その人にとって最良の答えを導き出すだけだから。
時にはそれは、不倫相手とは別れてしまったほうがいいという結論もあれば(その方が圧倒的に多い)、希だが、現在の夫婦関係よりも新しい関係を求めた方が良いという結論もある。
「不倫」と聞くと、糾弾したがる人もいるかも知れないが、その前に不倫に走ってしまう人間の心の空洞や、夫婦間の問題について、理解しておいた方がいいと思う。
いや、理解を示しておいた方が良いと思う。
なぜなら、決して他人事でないケースもあるからだ。

依頼者の多く(ほとんどは女性)は、不倫相手の気持ちを知りたがる。これは人間感情としては当然だと思う。
わざわざリスクを冒してまで、法的には認められない関係に身を投じているのは、相手のことが好きだからだろうし、またそれだけ相手に自分の求めるものがあるからだろう。

女性の多くは、不倫相手に強い恋愛感情を抱いている。
それなのにその相手はただのお遊び、都合のいい女という風にしか感じていないとしたら、これはあまりに救いがない。

だからこそ相手の自分への気持ちを知りたがるのだ。自分のことを真剣に愛しているのか? 将来をどう考えているのか? 事情があって現在の家庭や夫婦関係を捨てられずにいるにしても、自分たちの関係の中だけでは、お互いに気持ちを通じ合わせていたい……。
それだけ不倫関係に陥っている女性の気持ちは、ある意味では純粋だとも言える。

だが、いくつかの事例を見てきて感じるのは、「不倫」という構図の中にある、男性に都合よく利用されてしまう弱い女性の姿だ。
もちろん、不倫でも互いの家庭や夫婦関係にすでに重大な問題があって、むしろより良い新しいパートナーとしての相手を見つけ出す人もいる。
これは、しかし、きわめて少数だ。

彼女たちは「不安」の海で必死になって泳いでいる。
力尽きて、どこかの孤島に打ち上げられるまで。
あるいはその海でおぼれてしまう人もいる。

彼女たちは相手の気持ちが自分と同じようにまじめで真剣なものであってほしいと願っている。
その一方で相手の嘘、欲望から発した打算などにもうすうす気づいている。
にもかかわらず、彼との関係が失われることの方が怖く、うすうす感じていることにはあえて目をつぶっている。

私の目がカードや星に、どんなに答えを見出し、導き出したとしても、それを受けて変われるかどうかは、彼女たち次第だ。
彼女たちの事情を知り、彼女たちの思いを現実に知ると、私も辛い。
願わくば、彼女たちの未来により良き選択が訪れるように。

(この記事は、過去に私があるブログで書いた記事を改稿し、再掲載したものです)