不肖の後輩Xの献辞 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
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私の小説遍歴は、アルセーヌ・ルパンから始まりました。
作家はモーリス・ルブラン。
以来、私の描く主人公には、一種のヒーロー的な要素が強く打ち出されるようになりました。
ルパンは知力においても、体力においても、一種の超人だったからです。
そういうヒーローへのあこがれが、小柄でひ弱で、コンプレックスの強い少年だった私にはあったのでしょう。
ルブランは私にとっては原点でした。

しかし、超人というのは、ウルトラマンや仮面ライダーみたいなものです。
アニメの世界なら、今でも「コナン」に登場する怪盗キッドみたいな一種の超人を描くことが許されても、やはりいつまでも現実にライダーごっこをしているわけにはいきません。

横溝正史は、私にとってその後に出会った「最高の作家」の一人でした。
「犯人は誰か」式のミステリーの書き手として、正史は最高峰と感じられました。
現代でこそ、匹敵する作家もいると思われますが、正史ほどミステリーの謎解きの面白さを与えてくれた作家は他にいません。
それは単に技術だけでなく、その精神から生まれるもののように思えました。
技術や理論も大事ですが、そんなものの積み重ねを超えてしまうなにかを正史は持っていました。

本格ミステリー作家の中で、正史がもっとも好きな作家であることは、今でも変わりません。
しかし、金田一耕助が知力の天才であるのは、ある意味、ルパンと同じ一種の超越存在なのです(拙著、デウス・エクス・マキーナに詳細を記す)。

普通の人間が織りなすストーリーこそが、人にもっとも感動を与えるのだとはっきり認識したのは、恥ずかしいことに比較的最近です。
そんな私が今、もっとも好きな作家はと尋ねられたら、東野圭吾さんとお答えするでしょう。
乱歩賞の大先輩。
今や日本のミステリーを牽引する書き手です。
私は将来、乱歩や正史、そして松本清張などと、日本のミステリー史に東野さんの名が並び立つと確信しています。

東野さんの作品をすべて読んでいるわけではないのですが、驚異的なのはその作品の多彩さです。
社会的な問題作である「天空の蜂」から、ごく身近な人間ドラマである「手紙」「秘密」、そして本格ミステリーとして伏線の技術の高さを示した「容疑者Xの献身」。
文章のたしかさと人物のリアルさ、物語の構成力に至るまで、すべて目標とするところです。
売れっ子になった作家の中には、冗漫な文章に流れ、つい分厚い本を作りがちになってしまう方々もいらっしゃるのですが、東野さんにはそのようなこともなく、きっちりとした仕事を常にされています。
素晴らしいと思います。
また自分自身、東野さんの小説を読み、感動し、ある時期に人生が変わったと感じたことさえあります。
人の人生を変えうるほどの作品。
単に面白いだけではない物語の作り手。

私が好きな作家は東野圭吾さんです。