サンショウウオの話3/礼子 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

うちに来た初代のサンショウウオは押し掛け女房です。
たまに行く金魚屋さんの店主はいつも長靴をはいています。紺色の前掛けをしています。白髪頭の五分刈りでタオルをはちまきにしています。そう、金魚屋と言うより魚屋の大将です。何も考えずうっかり店に入り、いきなり店長と目が合ったら「じゃあそこの金魚、三枚におろして」と言いかねません。耳が遠いので少々声かけたくらいでは無視して黙々と仕事しています。
色々金魚のそろった店ですが、川魚もいます。その中に「雑魚」と紙の貼られた実におおらかな区分の水槽がありました。その中にうちに来た幼き日のサンショウウオくんはほけーとしていたのです。これから始まる過酷な日々を知るはずもなく。