「ノー・ソリューション」についての作者からの解説 |  ZEPHYR

 ZEPHYR

ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

上梓間近の「ノー・ソリューション」について、やや詳しく作者の意図するところを述べておこうと思います。
かの作品集は、三つの中編を収録し、それぞれ初級、中級、上級のミステリーとなっていると、これまでにも書いてきました。
ただ初級の「消滅した夜」と、中級の「オルフェウスのダンジョン」には、かなり大きな難易度の隔たりがあります。「オルフェウス」はあることに気づけば、スパッと数学的な正確さで犯人の特定ができます。
したがって、気づいた人は「意外に簡単だったな」という感想を持つかもしれません。
ゆえに中級としたのです。
わかる人とわからない人には、大きな感想の差が生じる可能性があります。

そして「オルフェウス」と上級の「うつし世は悪夢」とでは、場合によっては「オルフェウス」のほうが犯人特定が難しいと感じられるかもしれません。ではなぜ、「うつし世は悪夢」が上級なのか?
じつはこの作品、ただ犯人を当てるだけではなく、事件の起こった背景、物語として描かれているストーリーの裏側に横たわるもう一つのストーリーまで推理してもらいたいのです。
そのための材料は提供しています。もちろん。

犯人は誰で、そしてAという人物はなにを考え、どう行動したか。その結果、どういう結論に至ったのか。
それを受けて犯人は、どう感じ、そして犯行に及んでいったのか?
その裏側にあるストーリーまですべて構築してこそ、名探偵。
本格ファンなら、これにトライしてもらいたいのです。そこまで読み切る必要があるからこその上級編というわけです。

今回、私は謎解きの面白さに、ビシッと焦点を据えて改稿を行いました。
「中途半端はしない」
最近のモットーです。
ここでなにを目指すか、この作品でなにを描こうとするのか。
中途半端はしないのです。