うす緑色の恒星群 |  ZEPHYR

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ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

ADSL通信ができなくなるほどど田舎な私の家庭環境にも、いいところはある。それどころか、ほかではなかなか得難いものに恵まれていたりする。

昨日のこと。仕事を終えて車で深夜、帰路を走っていると、自宅近くの山間の道に、何台も車が路上駐車している。この時期、夜、我が家周辺のへんぴな場所を訪れる人々の目的は……。

蛍である。

一時は激減していたのを、市が河川をそれこそ昔からある形に人工的に改修、蛍の生育しやすい環境に整えてやると、何年か後にはかなり見応えのある量に増殖した。

だが、一昨年、二度にわたる台風災害に遭い、昨年の蛍はまたかなり減ってしまっていた。

今年は?

私はライトも消し、車から降り、蛍の生息する川の方へ歩いていった。

深夜となると、蛍はもうあまり飛ばない。一番多いのは日没からの数時間である。

正直、期待はしていなかったのだが――。

いた。

草葉の中に、明滅するうす緑色の光が。

一つ。二つ。三つ。

時間帯も遅かったせいもあるのだろうが、それほど多く見つけられなかった。

どういうのだろう。蛍のはかなげで美しいその光を見ていると、なぜか心が和んだ。

谷間から仰ぐと、空には星々のきらめきが。

その中央に、ひときわ強く輝く、存在感の大きな星が。

木星だ。

空に星があるように、この谷間の地にも蛍の光が一杯に満ちるようになればいい。

そんなことを想い、妻子の待つ家に急いだ。