私の部屋は、基本的にカオスである。
ひらたくいうと、散らかっている。
私が座っている場所を中心に、じわじわその混沌は広がり、やがては足の踏み場もなくなっていく。
ちょっと前のことである。
ある限界を越えた私は、自室の大片づけを衝動的に敢行した。やるときは非常に手が早く、半日であっという間に足の踏み場もある、整理整頓された部屋が出現した。
その過程で、最近、探していたのに見つからなかったものが出てきた。
高校1年の時に書いた処女作、そして2年の時に書いたその作品のグレードアップ・バージョンである。
この2本の作品が自分の原点だった。
それがめでたく見つかったわけだ(みなさん、探したいものがすぐに見つかるよう、部屋は整理整頓しましょう)。
実はちょっと前に、ある構想を得て、この処女作品をそろそろ世に出す準備をすべきなのではないかと思い始めていたところだった。
この2作は、ミステリーではない。はっきりいえばSFの範疇に属する作品だ。
ルブランと乱歩、正史にはまって、たしかに最初に書き始めたのはミステリーだった。
ところがちゃんと一本の作品として完成を見た処女作はSFだった。
そのくせ、後にプロとして世に出ることになったのは、ミステリーだった。
私はある意味、奇妙な経歴を持っていることになる。
なぜこういう事が起きたのかは定かではないが、今思うことの一つに、自分はミステリーだけを書いて終わるわけではなさそうだということである。
ミステリーは面白い。すばらしい。
しかし、それ以外のものがすばらしくないわけではない。
当然である。
ほかのすばらしいことも手がけたい。
ZEPHYRを発足させたときに、「ミステリー小説の創作集団」とはせず、ただ「小説創作集団」としたのは、そのときには深い考えがあってのことではなかったが、やはり別な仕事も視野の片隅には入っていたのだろう。
カオスより見いだされしもの。
彼らが順番待ちをしている。