今日、ちょっとした用事があって、倉敷の大原美術館へ足を運んだ。
地元の美術館だというのに、今まで一度も訪れたことがなかった。
大原美術館には全国的にも有名な、エル・グレコの「受胎告知」などが展示されている。
この「受胎告知」、私にとってはちょっとした縁がある。以前、徳間書店から刊行した「業火」の表紙を飾ったのが、まさにエル・グレコの「受胎告知」だったのだ。
現物を間近に見て、やはり素晴らしい名画だなと感じた。
ガブリエルがマリアの元を訪れ、救い主イエスの受胎を告げた聖書の名場面。
重厚な中にも、中央の白い鳩が光を象徴するかのように舞う姿が印象的だった。
ほかに目を奪われたのは、壁の扉の上に展示されていた非常に左右に大きな油彩画、フレデリック・レオン作の「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」だった。
左に累々たる死体、折り重なった亡骸のまるで地獄のような風景と、右に復活を遂げた人々がいる天国的光景、その二つの絵にはさまれて中央にノアの箱船をモチーフにしたのだろう、洪水の中を生き延びた人々がオリーブの葉をくわえた鳩が舞い降りるのを見つめている図がある。
はっきりと「死」を感じさせるまがまがしい悲惨と、喜びに満ちた生命そのものを感じさせる対照的な構図が、なんとも壮大な世界観を感じさせてくれた。
絵などの善し悪しはわからない私だが、たまにはこうしたものを眺めるのもいいものだと思った、倉敷での昼下がりでした。