SNRIの服用などによってしばらくは調子が良かった(と思っている)のですが、舌の根も乾かぬうちにこの数日は明け方に膀胱痛、若干の睾丸痛がして目が覚めるという日々です。

激痛というより鈍い痛み程度ではありますが、間質性膀胱炎とされる膀胱痛を抱える者にとっては、この睡眠障害が日常生活の困難となりがちです。

 

久しぶりに腹痛・腰痛が強くなって、迷走神経反射のような吐き気、冷や汗、生あくびといった血圧低下の症状も出まして、とにかく気持ちが悪いのでいくらか難儀しましたが、これらの症状はしばらく横になっていればそのうち治まるので、まあ慣れたと言えば慣れました。

自律神経の司令塔は視床下部とされているので、こういう時は後頭部を温めたりするといくらか楽になるかもしれません。

 

明け方の膀胱痛については、前日の飲食物の内容が良くなかったのか、あるいは気候変動や心理的ストレスなどで痛みが出てしまうのか、また、『骨盤の頭痛』によれば骨盤痛を感じる患者の朝のコルチゾールの値は高い傾向にあるということで、コルチゾールといったストレスホルモンの影響で痛みがでるのか、よくわかりません。

自身の傾向を振り返ると発症前から不眠傾向はあって、寝ようと思っても考え事が止まらないとか、起きる頃になると「今日はこれをやって、それが終わったら次はこれを…」という感じで、いかにも交感神経優位というか、on/offの切り替えが苦手な不安傾向・緊張体質であったように思っており、こうした体質と環境とのマッチングの問題も背景にあるような気もしています。

 

前置きが長いのですが、今回は、この「膀胱あたりが痛い(しかし膀胱以外の箇所も痛い)」という現象について、もしかしたら痛みの震源地は膀胱ではなく筋肉から来ている神経痛ではないか、というお話しです。

この話も『骨盤の頭痛』を参照にしています。

 

確かに自身の自覚では、尿が溜まると膀胱と思しき部分が痛かったり不快感がありますし、濃い尿のほうが痛みが強いような気がする、明け方に膀胱付近の痛みで目が覚める、といった症状からすると、膀胱内の不調(内膜の損傷、膀胱頸部の感覚過敏等)がありそうな気がします。

この点、『骨盤の頭痛』という本では、膀胱痛のトリガーポイントとしては錐体筋という筋肉が関係しているかもしれないと指摘されていて、「錐体筋の痛みが投射して膀胱痛として感じられる」かのような解説が記載されていました。

錐体筋というのは恥骨のすぐ上にある筋肉で、腹圧をコントロールする際に機能する小さな筋肉らしいです。

 

リンク先の画像からもわかるように錐体筋の場所は膀胱が収まっている部位とほぼ一致しているように見え、例えば恥骨の上、膀胱部分を押すと痛いという自覚症状も、もしかしたら痛いのは膀胱ではなく錐体筋(あるいは錐体筋に絡む筋膜?)ではないかという可能性もありそうに思えます。

もちろん、膀胱も痛いし、錐体筋も痛いという可能性もありますし、膀胱の痛みが錐体筋に放散しているということもありうるとは思います。

 

そこで錐体筋の神経支配について調べてみると興味深い記事を見つけました。

 

腸骨下腹神経の痛み!?

 

錐体筋の神経支配は肋下神経、腸骨下腹神経とされていて、この腸骨下腹神経というのは胸椎12番から伸びて骨盤の腸骨稜をグルっと前方に回って鼠径部、下腹部に向かって走行しています。

上記リンク先の画像のオレンジ色の部分が腸骨下腹神経の部分ですが、これは自身が感じる腸骨稜や下腹部の痛みと一致しているように見えます。

特に骨盤の前側の一番出っ張っている部分が痛い、なんてのは腸骨下腹神経からきている可能性もありそうで、これが錐体筋と直接の関係があるかはよくわかりませんが、腰の歪みが腸骨下腹神経を介して錐体筋の痛み(膀胱痛)として感じられる、なんて現象もあるのかもしれません(←素人の想像です)。

 

下腹部痛が強いときは痛みを感じる箇所にカイロや蒸しタオルを当てたりすると痛みが楽になりますが、これも膀胱を温める結果というより、錐体筋とか腹部の筋肉を温めることによる効果という見立てもできるかもしれません(肩こりを温めてケアするように)。

また、思考実験としては、下腹部の痛みが腸骨下腹神経からきているなら、胸椎12番を温めたりすれば痛みが軽減するなんて現象もありうるかもしれません。

 

手技療法の世界ではストレスがかかると腹直筋が緊張すると言われているようですが、こうした状況は錐体筋にも何か影響しそうですし、不良姿勢で長時間座っていたりすると腹圧などの関係で錐体筋に負荷がかかるということがあるかもしれません。

 

睾丸痛(精巣上体の痛み)にしても、膀胱痛にしても、痛みの震源地が実は内臓ではなく(あるいは内臓以外にも)筋肉や筋膜が影響しているのではないか、というのが『骨盤の頭痛』で提言されていることなのですが、可能性としては結構ありうるように思います。

(ちなみに前立腺の痛みやお尻にゴルフボールが詰まったような感覚、というのも『骨盤の頭痛』では前立腺の問題というより、骨盤底筋などの緊張による神経性の痛みが投射した結果だ、とするような解説がなされています)

 

もっとも、自身の自覚症状を振り返ると、最初から錐体筋に痛みを感じていたわけではなく、普通の尿道炎のような感じだったのが次第にいろんな箇所の痛みに発展していった感じがあるので、やはり膀胱や尿道といった粘膜組織の炎症ないし感覚過敏が先だったのではないかという気がしますので、筋肉のほうが震源地であるというのはあくまで仮説の域を出ないように思います。

ただし、慢性の腰痛は発症の随分前からあったので、腰の問題が大本にあるというのは説得的だとも感じていますし、現在の治療もそういう方面からもアプローチしてみています。

 

仮に内臓の痛みなり粘膜の損傷が先だったとしても、その痛みの結果、骨盤周辺のいろんな筋肉が慢性的に緊張したり硬くこわばるような状態になったとしたら、そのこわばり自体が発痛物質を放出して一種の肩こりのような状態になって慢性的な痛み症状として感じられるということはありうるかもしれません。

並行して慢性の痛みにさらされることで脳の痛みの閾値が下がる結果、痛みが激痛として感知されるということもありうるでしょう。

 

『骨盤の頭痛』では慢性前立腺炎も間質性膀胱炎も、緊張・不安・防衛本能といった心理状態が慢性に続く結果、骨盤周辺のいろんな筋肉を緊張させることから来る神経絞扼が痛みの原因ではないかという理解がなされているようで、「注目すべきは内臓というより緊張・不安からくる筋肉の緊張」という点が本書の特徴であると理解しています。

もちろん、書籍では膀胱や腸の粘膜というのはストレスで容易に損傷することがあるといった指摘もされていて、著者らは膀胱内膜の炎症や損傷の存在を否定しているわけではありません。

ストレス性の尿道炎があるという解説もあるので、「緊張・不安→血流の悪化、膀胱内膜などの器質的損傷→痛み→緊張・不安、、、」というスパイラルから抜け出すには、まずは痛みを感じない時間をどれだけ継続できるか、が重要なように思われ、そのためにセロトニンを補う精神系の薬が必要であれば、これを服用するメリットはあると思っております。

 

精神系の薬という点では、以前に飲んでいたトリプタノールというのは催眠効果が高く、かなりの低用量でも飲むとポーっとしてきてすぐに眠くなります。

日中眠くなってしまうと困りものですが、膀胱痛で明け方に目が覚めてしまうような場合にはむしろ深い眠りを提供してくれるので、以前は結構これに助けられていました。

ですので、膀胱痛で眠れないという方にはトリプタノールというのは一つの選択肢になるのではないかと思っています。

(もっとも、トリプタノールは長期で服用していると催眠効果もやや薄れてくるような印象もあり、自身はSNRIによる処方をメインにしているので今は飲んでいません)

 

というわけで、膀胱痛というのが、膀胱そのものが痛いのか、あるいは別の部位の緊張からくる神経痛であたかも膀胱が痛いように感じられるのか、あるいはその両方がありうるのか、といったお話しでした。

毎度のように、いずれも可能性の域をでない話題ばかりですが、泌尿器科の診療では理学療法的な視点は捨象されてしまいがちなので、何かの参考になればと思い記録しておく次第です。

 

それにしても、痛み症状というのは、寒暖差や心理的ストレスで悪化する傾向があるとはいえ、神出鬼没のようなところもあって、特に仕事をする上では困ってしまいます。

人と面談中に突如としてイモ虫のように転がりまわるわけにもいきませんし(苦笑)。

(人生設計を含めた)先々の予定を立てること自体におっくうになる、というのも人的孤立を招いたり、症状を長引かせる心理のようにも思います。

幸いにして、自身には理解を示してくれる方が一定程度いますし、機会があれば症状なり自身の心理をほかの人に話すようにしていて、自分のような人間を心配してくれる人がいる、というのは不調が無ければ気付くこともなかったかもしれないので、これはありがたいものだと感じています。

 

間質性膀胱炎はまだしも、慢性前立腺炎という病名が陳腐なのが文字通り玉にキズですが。。。