足元 | 抑鬱亭日乗

抑鬱亭日乗

複数の精神疾患を抱える者の独言を忌憚なく収録する
傾いた視線からこの世はどのように見えるのか

 夢の中で何度も訪れた家がある。

 現実には存在しないが、夢の中では存在する。

 自分の家ではないが、住人のように出入りする。

 そこにいるのは誰なのか知らないが、知っているような気がする。

 

 昨晩、茶を吞み過ぎたらしい。

 睡眠中、強い尿意を催している。

 夢の中でその家の便所へ向かい、放尿を試みる。

 

 だが、その便所の床に無数の黒いモノが動いている。

 大きなヒルのような生物である。

 それが足元に這いずり回っている。

 放尿を中止し、急いで便所から脱出する。

 

 無から有は作り出せない。

 ということは、人の見る夢は過去にどこかで観たものでしか構成できないように考えられる。

 見たことのない場面は夢には出て来ないはずである。

 

 夢で見たヒルのような無数の生物が這いずり回る場面は現実に観たことはない。

 そのような発想をしたことがないため、イメージすら浮かべたことはない。

 脳が自主的に創造した場面を夢の中でみたということだろうか。

 

 人が夢を見る原理はある程度解明されているようだが、その全てを明らかにはできていないように思う。

 このような身近な現象でも、未だ解明できていないことがある。

 人の脳とは不思議なモノである。