竹口税理士事務所「資産税・相続対策の日誌」 -3ページ目

余分な税金は支払わない

余分な税金とは、「しっかり経理・申告をすれば支払う必要が無かった税金」という意味です。

 

しっかりと経理をしていますか?

税制の特例や改正を知っていますか?

 

これを「節税」と言います。

 

とある節税策を知り、仮に1年で40万円の節税が出来るようになれば、

10年で400万円の貯金ができます。

 

トヨタのハリアーや、ベーシックなランドクルーザーが買えるし、毎年の家族旅行も行けます。

 

そういう方法で日本経済を支えるのもいいですね。

総則6項【関係者に責任は】

融資を行った信託銀行の稟議書には”相続対策のため”と書かれていた。

ということが裁判で明らかとなっていたわけで、これを以て「租税回避を意図していた」と判断されています。

 

そして今般の最高裁判決では、

 ① 時価と相続税評価額との著しい乖離があり、かつ

 ② 租税回避の意思

の両方があったために納税者敗訴の判決となった、と言われています。

(判決文を読むと、そう断言もできないのでは?という気もしますが)

 

そうすると、②の事実である「租税回避を意図していたという稟議書」がもし無かったら、、と。

 

今後は「租税回避」なる文言は気をつけましょう。

少し前までは

1、節税(合法的)

2、租税回避(?)

3、脱税(もちろん違法)

などという区分もあったかと記憶していますが。それは違う、ということですね。

 

【広大地】と【地積規模の大きな宅地】

タイトルの特例について、これらの適用を受けるような相続税の申告を、私は年に1~2件は行っています(※)。

 

広大地評価は、その判断の不安定さから常に否認リスクが伴ったため、その後の”地積規模の大きな宅地”へ改正された訳で、それは前進なのですが、反対にこの改正で減額幅は減ってしまいました。

 

ハイリスク・ミドルリターンから、ミドルリスク・ローリターンへ、です。

 

東京都内でも結構な頻度で適用しています。ただ、隠れたリスクとして「評価単位」の解釈と判定は残っているのではないでしょうか。

 

(※)税理士業務をご存知ない方は「1~2件?なんだ、少ないな」と感じるかもしれませんが、おそらく結構な数だと思います。

総則6項での別の最高裁判決

総則6項という同じテーマに関して、最高裁では同じ4月19日に別の事件での判決もしていたそうです。

評価額も大きい。

 

これでは納税者を勝訴させる訳にはいかないな、、、と納税者を諦めさせる戦術か、などと穿った見方をしてしまいます。

 

以下、「納税通信(3702号)」です。

最高裁 評価通達6項を巡る別事件も納税者の上告棄却

最高裁判所(第三小法廷:長嶺安政裁判長)が4月19日、財産評価基本通達6項の適用の是非等を巡り争われていた事件について、前号で取り上げた事件とは“別の事件”についても、納税者の上告を棄却していたことがわかった。

別の事件とは、銀行との間で不動産の購入等による相続税の圧縮効果等を検討していた被相続人らが、銀行から15億円を借り入れた上で購入した不動産(本件不動産)の相続税評価額が問題となったものである。

本件不動産について、納税者(相続人)が、評価通達に基づき「4億7,761万1,109円(通達評価額)」と評価し、借入金15億円を債務として計上した上で相続税の申告を行ったところ、国が、評価通達6項を適用し、本件不動産の評価額は「10億4,000万円(鑑定評価額)」であるとして更正処分等を行ったことで争いとなった。

東京高裁(令和3年4月27日判決)は、通達評価額と鑑定評価額の著しいかい離の存在を指摘した上で、被相続人が生前から相続税の圧縮を認識して本件不動産を購入等したことは、通達評価額によらないことが相当と認められる「特別の事情」がある場合に該当するなどと判断していた。

なお、最高裁は同日、同様の論点を巡り争われた事件についての判決を下し、納税者の上告を棄却していた。

以上

 

税務リスク、税理士リスク

税額計算や税務対策において複数の選択肢がある場合は、いわゆる”税務リスク”が生じます。

 

同じく、複数の税理士から選択する場合は、”税理士リスク”があります(断言)。

 

 

「あなたに頼むと危ないから」と言われないよう、精進しないとなりません。

九年前の最高裁判決(相続権)

平成25年(2013年)9月の最高裁の判決により相続権の規定が変わったことは記憶に新しいです。

それまで民法では、非嫡出子の相続権は嫡出子の半分とされてきましたが、最高裁はこれを「憲法14条1項に違反している」と。

同等にせよ、ということになりました。

 

とても驚いたことを覚えています。税法に関する最高裁判決とはまた違った、重みを感じる判決でした。

 

時代が変わると法律も変わるのですね。最近では憲法それ自体も変えようという機運も高まってきました。

 

正解・不正解という見方とは別に、今この時代を生きている自分はどうすべきなのかという点で思案し続けたいと思います。

 

相続税申告書の第1表(印鑑不要後)

従来ならば印鑑を押していた場所に、見慣れない点線と「参考」の文字。

これは何かと言えば、「この申告書では申告しない人は○を書いてください」という意味です。

 

分かりづらいですね。

複数の相続人がいる場合、共同で1つの申告書を提出するケースと、(仲が悪い等で)個々人が別々に申告書を提出するケースがあります。

従って上記の○印は、

・この申告書で申告手続きする人・・・○印は書かない

・別の申告書で申告手続きする人・・・○印を書く

ということになります。

 

押印見直しの改正により手続きの工数が減るのは、少し先かもしれません。

 

 

重要文化財などの美術品に係る相続税の納税猶予制度

相続税の納税を猶予(免除)する制度としては次が代表例です。

 

・亡くなった方(=被相続人)が所有していた農地について、相続人が引き続き農業を営む場合

・被相続人が経営していた中小企業で、その株式について、相続人が引き続きその事業を継続する場合

 

これらの趣旨は、農家(農業)を継続してもらうために、また、中小企業の経営を円滑に継続させるために、相続する人に対しては相続税の納税を猶予(免除)しようというものです。

 

平成30年には、一定の美術品についても同様の猶予制度が定められました。次代に残すべき美術品等については、相続税の負担軽減をしたのです。

良い制度だと思います。

 

過去の震災などの記憶を次世代へ遺すもの(震災遺構)にも、適用できるような制度だとより良いのですが。

震災遺構を国や自治体の力に頼らず、個人や法人(民間)で大切に保存・管理している方々がいます。

 

相続税の納税義務者

条文数(文字数)が増加の一途です。

 

平成10年(頃)の相続税法の条文は次のとおり。

機械で文字数をカウントしたら、171文字。

 

第1条

左に掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。

一 相続又は遺贈(贈与者の死亡に因り効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)に因り財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの

二 相続又は遺贈に因りこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの

 

 

その後、数回の改正を重ね、令和3年度の改正では次のとおり。

令和3年の改正後の文字数は、なんと2,153文字。

生活様式の多様さからなのか、節税封じなのか。

 

条文を考える人もきっと大変。サービス残業で身体を壊さぬよう。

 

第1条の3

次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。

一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの

イ 一時居住者でない個人

ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)

二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの

イ 日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの

(1) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの

(2) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)

ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)

三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第1号に掲げる者を除く。)

四 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第2号に掲げる者を除く。)

五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)

2 所得税法(昭和40年法律第33号)第137条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)又は第137条の3(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。

一 所得税法第137条の2第1項(同条第2項の規定により適用する場合を含む。次条第2項第1号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。

二 所得税法第137条の3第1項(同条第3項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第2項第2号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第137条の3第1項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該受贈者が同条第1項の規定の適用に係る贈与前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。

三 所得税法第137条の3第2項(同条第3項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第2項第3号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下この号及び次条第2項第3号において同じ。)が死亡(以下この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該相続人が所得税法第137条の3第2項の規定の適用に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。

3 第1項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第1(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第3項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前15年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。

二 外国人被相続人 相続開始の時において、在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人をいう。

三 非居住被相続人 相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの又は当該相続の開始前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。

元祖”伝家の宝刀”、行為計算の否認については国が敗訴

総則六項判決の二日後、同じく最高裁では元祖”伝家の宝刀”である法人税法第132条の「同族会社等の行為又は計算の否認」について、こちらは国の敗訴となる判決を出しました。

 

結局、総則六項も行為計算の否認も、案件ごとに「ケースバイケースですから。」ということですね。

 

総則六項はあくまでも行政通達で(でも国が勝訴)、

行為計算否認規定は法律で(でも国が敗訴)、

というところも、収まりが悪いことの理由の1つです。