竹口税理士事務所「資産税・相続対策の日誌」 -4ページ目

税務リスク、税理士リスク

税額計算や税務対策において複数の選択肢がある場合は、いわゆる”税務リスク”が生じます。

 

同じく、複数の税理士から選択する場合は、”税理士リスク”があります(断言)。

 

 

「あなたに頼むと危ないから」と言われないよう、精進しないとなりません。

九年前の最高裁判決(相続権)

平成25年(2013年)9月の最高裁の判決により相続権の規定が変わったことは記憶に新しいです。

それまで民法では、非嫡出子の相続権は嫡出子の半分とされてきましたが、最高裁はこれを「憲法14条1項に違反している」と。

同等にせよ、ということになりました。

 

とても驚いたことを覚えています。税法に関する最高裁判決とはまた違った、重みを感じる判決でした。

 

時代が変わると法律も変わるのですね。最近では憲法それ自体も変えようという機運も高まってきました。

 

正解・不正解という見方とは別に、今この時代を生きている自分はどうすべきなのかという点で思案し続けたいと思います。

 

相続税申告書の第1表(印鑑不要後)

従来ならば印鑑を押していた場所に、見慣れない点線と「参考」の文字。

これは何かと言えば、「この申告書では申告しない人は○を書いてください」という意味です。

 

分かりづらいですね。

複数の相続人がいる場合、共同で1つの申告書を提出するケースと、(仲が悪い等で)個々人が別々に申告書を提出するケースがあります。

従って上記の○印は、

・この申告書で申告手続きする人・・・○印は書かない

・別の申告書で申告手続きする人・・・○印を書く

ということになります。

 

押印見直しの改正により手続きの工数が減るのは、少し先かもしれません。

 

 

重要文化財などの美術品に係る相続税の納税猶予制度

相続税の納税を猶予(免除)する制度としては次が代表例です。

 

・亡くなった方(=被相続人)が所有していた農地について、相続人が引き続き農業を営む場合

・被相続人が経営していた中小企業で、その株式について、相続人が引き続きその事業を継続する場合

 

これらの趣旨は、農家(農業)を継続してもらうために、また、中小企業の経営を円滑に継続させるために、相続する人に対しては相続税の納税を猶予(免除)しようというものです。

 

平成30年には、一定の美術品についても同様の猶予制度が定められました。次代に残すべき美術品等については、相続税の負担軽減をしたのです。

良い制度だと思います。

 

過去の震災などの記憶を次世代へ遺すもの(震災遺構)にも、適用できるような制度だとより良いのですが。

震災遺構を国や自治体の力に頼らず、個人や法人(民間)で大切に保存・管理している方々がいます。

 

相続税の納税義務者

条文数(文字数)が増加の一途です。

 

平成10年(頃)の相続税法の条文は次のとおり。

機械で文字数をカウントしたら、171文字。

 

第1条

左に掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。

一 相続又は遺贈(贈与者の死亡に因り効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)に因り財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの

二 相続又は遺贈に因りこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの

 

 

その後、数回の改正を重ね、令和3年度の改正では次のとおり。

令和3年の改正後の文字数は、なんと2,153文字。

生活様式の多様さからなのか、節税封じなのか。

 

条文を考える人もきっと大変。サービス残業で身体を壊さぬよう。

 

第1条の3

次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。

一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの

イ 一時居住者でない個人

ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)

二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの

イ 日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの

(1) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの

(2) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)

ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)

三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第1号に掲げる者を除く。)

四 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第2号に掲げる者を除く。)

五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)

2 所得税法(昭和40年法律第33号)第137条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)又は第137条の3(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。

一 所得税法第137条の2第1項(同条第2項の規定により適用する場合を含む。次条第2項第1号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。

二 所得税法第137条の3第1項(同条第3項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第2項第2号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第137条の3第1項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該受贈者が同条第1項の規定の適用に係る贈与前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。

三 所得税法第137条の3第2項(同条第3項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第2項第3号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下この号及び次条第2項第3号において同じ。)が死亡(以下この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該相続人が所得税法第137条の3第2項の規定の適用に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。

3 第1項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第1(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第3項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前15年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。

二 外国人被相続人 相続開始の時において、在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人をいう。

三 非居住被相続人 相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前10年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの又は当該相続の開始前10年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。

元祖”伝家の宝刀”、行為計算の否認については国が敗訴

総則六項判決の二日後、同じく最高裁では元祖”伝家の宝刀”である法人税法第132条の「同族会社等の行為又は計算の否認」について、こちらは国の敗訴となる判決を出しました。

 

結局、総則六項も行為計算の否認も、案件ごとに「ケースバイケースですから。」ということですね。

 

総則六項はあくまでも行政通達で(でも国が勝訴)、

行為計算否認規定は法律で(でも国が敗訴)、

というところも、収まりが悪いことの理由の1つです。

 

 

暦年課税贈与の制度が改正されたら

当初、令和4年度の改正で検討された「暦年課税の改正」について。

「廃止する」や「相続税計算へ持戻しする期間を5年(10年)に延長する」「精算課税贈与へ一体化する」などの情報がありましたが、(今回は)改正なし、でした。

 

今後どのような改正となるか(ならないか)は依然として未確定のようですが、1つ確実に言えることは、月並みですが「対策を行うのなら、早目に行う」。

 

決して急かしているのではなく、他と同じく贈与の判断も、「後悔先に立たず」だからです。

 

「もう間に合いません」と告げられる状態になってから後悔しても、、、です。

 

(期限切れの言葉ですが)大事なことなのでもう一度書きます

 

「急かしているのではありません」

 

相続税の計算で、納骨費用は債務控除が可能。

以下に関連条文を記載しました。法律が1つと通達(法律ではない)が2つです。

 

質問:

・後日、納骨だけを行った場合の納骨費用は債務控除が可能か?

・上記は、翌日ならOKか・翌日でもNGか?何日後までならOKか?

・最近増えている、四十九日や五十日祭での納骨は債務控除可能か?

 

ネットでの税理士の見解はまちまちです。、「可能」と言い切ったり、◎◎ならば可能とか、葬儀の後はダメ、など。

宗教の違いにより、納骨式と葬儀は別の扱いだったり、葬儀の一部だったりしますが、そのときはどうでしょう。

お墓の準備が済んでいる・いないで、納骨のタイミングも変わります。

 

税務署での判断基準は?。やはり先般の「著しく不適当か否か(=ケースバイケース)」でしょうか。

 

相続税法第13条【債務控除】

1項

相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)

二 被相続人に係る葬式費用

 

相続税法基本通達13-4【葬式費用】

法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。

(1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)

(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用

(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの

(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

 

同通達13-5【葬式費用でないもの】

次に掲げるような費用は、葬式費用として取り扱わないものとする。

(1) 香典返戻費用

(2) 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料

(3) 法会に要する費用

(4) 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

相続税の税率

相続税の税率表には、「遺産が1億円を超える場合の相続税率は40%」と書いてありますが、なにも1億円の遺産に対して4千万円の相続税がかかるという訳ではありません。

 

簡単にいうと、

・相続人1人あたりの遺産(評価額)が

・1億円を超える部分については

・40%の相続税がかかる

という計算になります。

 

誤解している方は少なくないですし、税理士の中にも「あ、そうだったっけ」という方がいます。

 

ですので、

・相続人が増えると1人あたりの遺産は減るし、

・遺産が1億円以下(5千万円超)の税率は30%であり、

・遺産が5千万円以下(3千万円超)の税率は20%であり、

・同じ財産でも評価額を減らせる場合もある

のです。

 

問題は、それでも多額である相続税をどう減らせるかということであり、更に大事なことは、誰に何を引き継がせるのか・どう相続させるのか、ということです。

 

総則6項の判決で喜ぶ人・悲しむ人

昨日の最高裁判決では、国税庁の主張が認められ、納税者は敗訴しました。

当の納税者から見れば、今回の不動産評価額から考えても、「リスクを承知で申告しているから”想定内”だ」と割り切っているのだと思います。

総則6項の「著しく不適当」とはなんぞや・・? というお題への回答が無いままに終わった今回の裁判ですが、終わってみれば、まあ無理も無い、といった感想です。

 

喜ぶ人

・国税局と税務署の資産税担当(風が吹いている)

・不動産鑑定士(評価業務が増える(かも))

・税理士【資産税特化型】(評価に豊富な経験あり)

・業界紙(記事ネタ増加)

 

悲しむ人

・担当弁護士(弁護団)

・税理士【会計税務申告型】(今後の相続税申告が心配)

・不動産業界(マンション節税の営業は危ない)