以前、養老保険の4つのタイプについての記事を書きましたが、その中でも一番メジャーなハーフタックスプランについてのメリットやデメリットをご紹介いたします。
まず養老保険の概要からご説明いたします。
1.養老保険とは
養老保険とは、被保険者が死亡したときに死亡保険金が支払われるだけでなく、被保険者が満期時に生存している場合にも満期保険金が支払われます。
満期に受取ることができる保険金は、払い込んだ保険料の総額に近い金額で、もし途中で解約した場合についても、一定割合で解約返戻金を受取ることができます。
保障の機能に貯蓄の機能を兼ね備えた生命保険といわれています。
2.ハーフタックスプランの概要
養老保険の中で法人契約をするにあたって一番メリットがあると言われているのが、ハーフタックスプランです。
下記の表にあるように、このプランは、満期前に被保険者が亡くなった場合には「被保険者の遺族」に死亡保険金が支払われ、満期まで被保険者が生きていた場合には「会社」が満期保険金を受取れる、というものです。
死亡保険金については、保険会社から被保険者の遺族に支払われますが、満期保険金については、会社が受取りますので、どのような使い方をするかは会社の自由となりますが、実際には被保険者の退職金に充てるケースが大多数です。
被保険者とその家族の生活の保障という福利厚生目的に利用されるので、税制上も、保険料の1/2を「福利厚生費」として損金に算入するという扱いが認められています。
3.ハーフタックスプランのメリット
①福利厚生を従業員など関係者に示すことができる。
②掛け金の1/2が損金算入できる
保険料の1/2は会社自身が受け取る満期保険金のための積立として、資産に計上されま す。
残りの1/2は従業員(被保険者)の遺族が受け取る死亡保険金のための積立と言えるので、「福利厚生費」として損金に算入されます。
③満期保険金・解約返戻金を退職金に充てることで退職金支払時の赤字リスクが減少。
会社が満期保険金を受け取った場合、保険金から保険料総額の1/2を差し引いた額が、益 金に算入されます。
従業員に退職金を支払えば損金に算入されるので、その損金を、解約返戻金による益金でカバーし、赤字のリスクを防ぐことができます。
④従業員が在職中いつ亡くなっても、遺族が死亡保険金を受取ることができる。
被保険者の遺族が受け取った死亡保険金については、「みなし相続財産」として相続税が課税されることになります。
しかし、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があるため、実際には遺族は相続税を支払わずに済むことが多いでしょう。
⑤契約期間が長くなるほど返戻率が上がっていくことから、リスク発生時の資金繰りに役立つ。
解約返戻金が受け取れるというのは、退職金どころではなくなってしまった場合に保険料をある程度取り戻せるということでもあります。
最後の手段として、解約返戻金を受け取ってカバーすることが可能です。
急にまとまった資金がどうしても必要になった時には契約者貸付の制度が利用でき、解約返戻金の90%程度までの額を借りられます。
4.ハーフタックスプランのデメリット
①全従業員を加入させなければならない。
②福利厚生規定や退職金規定の作成。
税法上、「福利厚生プラン」で保険料の1/2が損金に算入できるという処理が認められているのは、福利厚生に利用されるからこそです。
そのため、税務調査が入ったような場合に、福利厚生で行っていることを証明できなければ、この処理を否認される可能性があります。
③全従業員を加入させることにより高額な保険料が会社のキャッシュフローを圧迫しかねない。
従業員の退職金制度のような福利厚生の制度は、一旦整備したならば、基本的には撤廃するのは難しいと言えます。
もしもそのようなことをすれば、従業員は会社に対し不信感を抱くだけでなく、会社の業績が悪化しているのではないかと不安になるでしょう。
加入後に一部、または全部を解約するのは、可能な限り避けるべきだと言えます。
つまり、養老保険(福利厚生プラン)は、適切な保険料の額を設定しないと、キャッシュフローの悪化を招くおそれがあるので、注意が必要です。
④解約時期が早いと損をする。
このプランに加入しメリットを生かすためには、従業員がある程度の期間働いてくれないと意味をなしません。
なぜならば、契約初期は返戻金の返戻率が低いためです。
したがって、従業員の出入りが激しい法人は、逆に損をするリスクがあります。
つまり、養老保険「福利厚生プラン」は、被保険者が満期近くまで確実に働いてくれる見通しが立たないのであれば、加入すべきではありません。
上記のような法人は、養老保険ではなく中小企業退職金共済への加入をおすすめします。
5.おわりに
以上が養老保険の中のハーフタックスプラン(福利厚生プラン)のメリットデメリットになります。
会社の身の丈に合った活用をすれば、保険料の1/2損金処理という税制上の優遇措置が受けられるのをはじめとして、効率よく従業員の退職金の制度を整えることができることができる優良な保険の種類だと言えますが、デメリットも存在することから、十分な検討が必要になりますのでご注意ください。