会社を運営していく上で資金繰りに困る場面を迎えることはよくあると思います。
今回はその資金繰り対策の一つとして、ファクタリング取引についてご紹介いたします。
1.ファクタリングとは
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング業者等の第三者が買い取り、債権を回収するまでの入金サイトを待たずに早期に資金を回収する取引のことを言います。
仕入取引は、売掛・買掛によって売買取引が行われることが多いですが、売掛相手企業の支払サイトが長かった場合、資金化できるまでに時間が掛かってしまい資金繰りが悪くなるケースがあります。
この資金繰りの悪化を解消するための対策の一つとしてファクタリング取引があります。
その他にも、ファクタリングを検討する要因として以下のような状況が挙げられます。
・銀行などの金融機関から融資を断られた
・従業員の給与の支払いが間に合わない等
2.ファクタリング取引の流れと仕組み
ファクタリング取引には2社間取引と3社間取引がありますが、今回は3社間取引を例に挙げます。この取引には、自社・売掛先企業・ファクタリング業者の3社が関わり、以下のような流れで取引が行われます。
①商品の納品・役務提供等が完了し、売掛金が発生する
②自社・売掛先企業間におけるファクタリング契約及び承諾
③自社・ファクタリング業者間におけるファクタリング契約及び承諾
④売掛先企業との請求金額の確認
⑤ファクタリング業者への請求金額の通知
⑥ファクタリング業者と売掛先企業間での請求金額の最終確認
⑦自社がファクタリング業者より早期に売掛金の支払いを受ける
⑧ファクタリング業者が売掛先企業から期日通りの売掛金の支払いを受ける
3.ファクタリングのメリット
①売掛債権を早期に回収し資金化することができる
⇒例えば、売掛先企業の支払サイトが2カ月毎だった場合、早期に資金回収ができるので、資金繰りの悪化を解消することができます。
②銀行からの融資とは異なり、借入金にはならない
⇒ファクタリングは金融機関等の融資とは異なり、売掛債権の譲渡として扱われます。また、融資に比べて審査に係る時間も短く、即日での資金調達も可能な場合があります。審査のポイントも銀行融資とは異なるため、銀行融資を断られた場合でも利用できる可能性が高いこともメリットです。
③売掛先企業が倒産しても、支払義務が発生しない
⇒償還請求権がないファクタリング取引を利用すれば、債権が貸倒を起こしても譲渡金を返済する必要はありません。
※ただし、ノンバンクなどが行うファクタリング融資は償還請求権のあるものが多いため、売掛先企業が倒産した場合、譲渡金の返済義務を負うことになります。
4.ファクタリングのデメリット
①手数料や掛目が掛かる
⇒売掛債権を早期に回収できる反面、ファクタリング業者の債権管理や回収業務に係る手数料や、掛目が掛かります。そのため、通常の債権の支払サイトまで待って資金化する場合と比べて、回収できる金額が目減りしてしまいます。
②債権譲渡登記が必要となる
⇒売掛債権を譲渡するに当たって、第三者対抗要件を備える必要がありファクタリング手数料とは別に登記費用が掛かります。また、この登記は法人登記や不動産登記と同様、法務局に登録するので、情報が第三者に公開されます。
例えば大口の融資を銀行に依頼していた場合、銀行が融資審査の際に登記を確認するため、債権を譲渡したということが銀行に伝わってしまいます。この時、債権の譲渡理由によっては、融資審査においてマイナスの印象を与えてしまう可能性があります。
5.ファクタリングの税務上での取扱
ファクタリング取引は、売掛債権の譲渡にあたるため、消費税の区分は非課税取引に該当します。平成26年度の税制改正により、平成26年4月1日以後に売掛債権を譲渡した場合、課税売上割合の算定上、譲渡対価の5%相当額を分母に参入することとされましたが、「資産の譲渡等を行った者がその資産の譲渡の対価として受け取った金銭債権」は課税売上割合算定上、分母には算入されません。
なぜかというと、一度売上として計上した債権を第三者に譲渡した際、再度売上に計上すると二重計上になってしまうからです。
【例】
A社がB社に対し商品を掛で売り上げた売掛金を第三者であるファクタリング業者に譲渡した場合
・A社…B社に対する売上を既に計上しているので、債権を譲渡した際に再度売上計上すると二重計上になってしまう。
⇒課税売上割合を算定する際、この譲渡対価は分母に算入しない。
・ファクタリング業者…A社から買い取った売掛債権を別の第三者に売った場合、ファクタリング業者からすれば売上の二重計上とはならない。
⇒課税売上割合を算定する際、譲渡対価の5%相当額を分母に参入する。
以上のように、課税売上割合の算定方法が変化しますのでご注意ください。
6.まとめ
ファクタリング取引は、様々な業界で利用されている取引です。
資金繰りが困難になった際は、その対策として一度検討してみてはいかがでしょうか。
<参考資料>
・課税売上割合の計算方法:国税庁HP
<http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6405.htm>
・資産調達の切り札!ファクタリング初心者ガイド
<http://www.begin-factoring.net/about_factoring/structure.html>
・金銭債権の譲渡と課税売上割合
<http://www.cpa-nakamura.com/04topi/koramu/kakokoramu384.htm>