みなし配当とは、会社法上は剰余金の配当ではないものの、法人税法あるいは所得税法では配当とみなされる収益のことをいいます。
みなし配当となるものは一般の配当と同様に課税対象となります。
今回のブログでは、みなし配当の概要と自己株式を取得した時のみなし配当の計算方法について記載致します。
1.概要
自己株式の取得に応じた株主は、基本的にみなし配当と譲渡損益が発生することになります。
自己株式の譲渡対価の額がその株式に対応する資本金等の額を超える場合、その超える部分の金額がみなし配当として課税されます。
また、株主に対し金銭等の交付が行われない場合には、みなし配当は発生しないこととされております。
2.みなし配当の金額の計算方法
みなし配当は以下の計算式で算定します。
1株あたりのみなし配当=自己株式取得により交付される1株あたりの金額-1株あたりの資本金等の金額
(計算例)
A社が公開買付による自己株式の取得を発表した場合
A社について
資本金 5,000千円
資本準備金 4,000千円
発行済株式数 100株
自己株式の交付価格 1株100千円
A株を保有する株主(50株保有、取得価額@80千円)が公開買付に応じる時のみなし配当と譲渡損益を計算します。
自己株式取得により交付される1株あたりの金額 100千円
1株あたりの資本金等の金額 (5,000千円+4,000千円)/100株=90千円
上記の場合、自己株式取得に応じた株主に発生するみなし配当額は、1株あたり100千円-90千円=10千円となります。
また、譲渡損益は、1株あたり90千円-80千円=10千円の譲渡益となります。
3.税務上の取り扱い
(1).株式を取得した法人
会社法上は剰余金の配当ではありませんが、税法上は配当とみなされます。
また、個人株主から取得した場合、所得税法上は配当所得であるため所得税(上場株式15.315%、非上場株式20.42%)を源泉徴収し、みなし配当の受取者の代わりに翌月10日までに納付します。
(2).株式を売った法人
みなし配当は受取配当金で処理し源泉徴収が行われます。
受取配当金は税法上で原則、益金不算入となります(公開買付では不適用)。
源泉徴収税額は法人税の計算において所得税額控除の対象となるため最終的には精算されます。
譲渡益には益金不算入の取り扱いは無いため、全額が法人税等の課税対象となります。
譲渡損の場合は全額損金算入となります。
(3).株式を売った個人
みなし配当は配当所得として扱われ、配当控除を受けることができます。
4.まとめ
今回は自己株式の取得等に伴うみなし配当について説明致しました。
みなし配当は会社法上では配当ではありませんが、税務上は配当とみなされる収益のことをいいます。
みなし配当は源泉徴収の対象となるため、翌月10日までに忘れずに納付するようにして下さい。
また、株主に金銭等の交付が行われない場合はみなし配当となりませんので注意が必要です。
参考URL:
「みなし配当とは?-大和総研」(http://www.eytax.jp/pdf/article/2010/zeimu_kouhou2010_10.pdf)
「みなし配当と税金の関係-MFクラウド会計」(https://biz.moneyforward.com/blog/houjin-kaikei/deemed-dividend-tax/)