現行でも税額控除制度は様々なものがありますが、平成28年度の税制改正をもってまた新しい制度が設けられました。
今回のブログでは個人の方に関係のある税額控除等についてご紹介いたします。
(1)三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例
出産や子育ての不安を解消し、世代間の助け合いによって子育てを支援しようという観点から設けられた特例です。
自己が所有する家屋に借入金等を利用して三世代同居対応改修工事を行い、平成28年4月1日~平成31年6月30日までの間に居住の用に供した場合、以下の二つの内から一つ特例を適用することができます。
1.住宅ローン控除の特例
上記の三世代同居対応改修工事の費用に充てるために借り入れた住宅借入金を含む、住宅借入金等の年末残高(限度額1,000万円)の区分に応じて、それぞれ次に定める割合に相当する金額の合計額を所得税額から控除することができます。
なお、この特例は住宅の増改築等にかかる住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除との選択適用とし、償却期間は5年となっております。
これをまとめたものが以下になります。
①.三世代同居対応改修工事に係る住宅借入金等
→限度額:250万円 償却期間5年 控除率2.0%
②.①以外に係る住宅借入金等
→※限度額:750万円 償却期間5年 控除率1.0%
※②の限度額は、全体の住宅借入金等の控除限度額1,000万円から①の控除限度額を引いた金額となっています。
例えば、三世代同居改修工事に充てた住宅借入金の金額が上限の250万円で、且つ住宅借入金等の合計額が1,000万円だった場合、控除額は以下のようになります。
250万円×2.0% + 750万円×1.0%=125,000円
2.ローンなしで既存住宅に係る三世代同居対応工事をした場合、三世代同居対応改修工事の標準的な費用の10%相当額(限度額は25万円)をその年の所得税額から控除できます。
対象となる工事は、キッチン・お風呂・トイレ・玄関のいずれかを増設する工事で、その工事に係る標準的な工事費用相当額が50万円を超えるものです。また、改修工事後上記いずれか4つのうち、2つ以上が複数となることが必要となります。
(2)セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)
適切な健康管理の下で、医療用薬品からの代替を進める目的から、以下のいずれかを健診を受けている者が平成29年1月1日~平成33年12月31日までの間に、スイッチOTC薬の購入費用を年間で1.2万円超えて支払った場合は、その購入費の内の1.2万円を超える額(年間の限度額は10万円)を所得控除できるようになります。
・特定健康診査(メタボ健診等)
・予防接種
・定期健康診断(事業主健診)
・健康診査
・がん検診
OTC医薬品とは…
OTC医薬品とは、医師に処方してもらう「医療用医薬品」ではなく、薬局やドラッグストア等で購入できる「一般医薬品」と「要指導医薬品」のことを指します。
以下は、OTC医薬品の種類となります。
・かぜ関連薬(うがい薬、のどスプレー等)
・解熱鎮痛剤(頭痛・生理痛薬、歯痛止め等)
・胃腸薬(総合胃腸薬、整腸剤、下痢止め薬、鎮痛鎮痙薬等)
・便秘薬
・滋養強壮剤、ビタミン剤(ビタミン主薬、滋養強壮保健薬、薬用酒等)
・外皮用薬(殺菌消毒薬、湿疹・皮膚炎用薬、虫さされ・かゆみ薬等)
・目薬(一般目薬、抗菌用目薬、アレルギー用目薬等)
・毛髪用剤
・漢方製剤
※ただし、本特例の適用を受ける場合は従来の医療費控除を適用できないためご注意ください。
反対に、従来の医療費控除を受ける場合は、本特例の適用を受けられません。
(3)空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例
近年、全国で一戸建ての空き家は毎年増加傾向にあり、平成25年10月1日時点で820万戸あることが総務省の統計で判明しています。
このような空き家が増えることによって、防犯面・衛生面・景観等で様々な問題が生じます。
この問題を防ぐ観点から、相続発生時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住用家屋を相続した相続人が、その家屋(耐震リフォームを施したものに限ります)又は除却後の土地を譲渡した場合、その家屋又は土地の譲渡益から3,000万円を控除することができるという特例です。
ただし、以下の要件を満たすものに限ります。
要件
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションを除く)
であること
・相続開始の直前まで、被相続人以外に居住者がいないこと
・相続時から相続開始日以後3年を経過する日の属する年の
12月31日までに譲渡すること
・譲渡の対価が1億円を超えないこと
・平成28年4月1日~平成31年3月31日までの間の譲渡であること
(4)まとめ
今回は平成28年の税制改正において個人の方に関係してくる特例についてご紹介いたしましたが、以上のように、住宅ローン控除・医療費控除等で新たな特例が設けられています。今年度から適用できる制度もありますので、今後の参考にしてみてはいかがでしょうか。