敷金と礼金(権利金)の取扱いについて | アークス総合会計事務所のブログ

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事業を行うにあたって、事務所や駐車場等の賃貸借を必要としてる企業が多いのが現状ですが、今回は新規で契約した際に発生する礼金(以下権利金と呼ぶ)と敷金の取扱い等について貸借人の視点からお伝え致します。

1.権利金について


(1)意義
権利金とは、賃貸借の契約時に借地権や借家権の対価として、賃貸人が返還を要しないものを指します。

(2)法人税法での取扱い

法人が貸借の際に支払った支出の効果がその支出の以後1年以上に及ぶものは繰延資産となります。
繰延資産は「会計上の繰延資産」と「税法上の繰延資産」に分かれます。

会計上の繰延資産は任意償却(好きなタイミングで費用として計上)が可能です。
税法上でも任意償却はできますが、当期の費用として計上できるのは減価償却限度額までと定められています。

繰延資産(権利金)の減価償却について

(a) 建物の新築に際して支払った権利金などで、その金額が建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、その建物が存続する間は賃借できる場合・・・その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数

(b) 建物の賃借に際して支払った(a)以外の権利金などで、契約や慣習などによって、明渡しの時に借家権として転売できることになっている場合・・・その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数

(c) (b)及び(c)以外の権利金などの場合・・・5年

ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約を更新するときには再び権利金などの支払をすることが明らかであるときは、その賃借期間となります。

国税庁HP参照
法法32、法令14、64、67、法基通8-1-5、8-2-3
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5460.htm

上記が税法で定められている条文ですが、実際は不動産契約2年で(c)に該当するケースがほとんどです。

税法上の減価償却期間は5年と定められていますが、契約期間が5年未満の場合はその契約期間で償却します。

例えば貸借の契約期間が2年である場合は、2年で償却する必要があり、また2年後に事務所等を更新する場合に更新料を支払った際、更新料も繰延資産となり、また2年で均等償却する必要があります。

ただし、20万円以下の繰延資産については少額繰延資産として、その支出した事業年度で一括損金として計上がすることができます。

(3)消費税法での取扱い

権利金は支払った側にが戻ることはないので、仕入としてみなされます。

よって権利金を受け取った側も課税売上として計上する必要が有り、課税事業者は仕入税額控除を選択する際の考慮に含まれるのでご注意下さい。

ただし事業用ではなく居住用(社宅等)の場合は消費税は発生しません。

2.敷金について

(1)法人税法での取扱い

敷金とは、賃貸借の契約時に、賃料や退去時の修繕費用等の債務を担保する目的で、賃貸人にあらかじめ支払うものを指します。

契約終了時に問題がなければ全額返還させるのが原則ですが、契約内容によって一部返還されない金額がある場合は取扱いが異なります。

・敷金のうち返還される部分・・・投資その他の資産
・敷金のうち返還されない部分・・・繰延資産

つまり返還されない部分については、権利金としての性質を持つと言えます。

※契約期間終了後に物件の状態回復の為の修繕費用として、その費用を敷金から差し引かれた金額が入金される場合があります。

その際は繰延資産ではなく、修繕費として費用計上する必要があります。

(2)消費税法での取扱い

敷金のうち返還される部分については、結果的に戻ってくる預け金としての性質を持つ為、対象外となります。

返還されない部分の場合は権利金としての性質と同様なので、課税仕入(居住用の場合は非課税)となります。

3.まとめ

上記の内容をまとめますと次のとおりになります。


年度初めから春先まで不動産の貸借契約、更新等の機会が増える時期です。

事前に上記の知識を持ったうえで正しい処理を心がけましょう。