税務調査手続きの法定化  | アークス総合会計事務所のブログ

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平成23年度税制改正において税務調査手続きが従来からの運用を踏まえて国税通則法において法定化されました。

今回は、質問検査権・資料の留置き(預かり)に関する事項についてです。


1.帳簿書類等の提示

帳簿書類等の提示・提出を求められたことに対し、
正当な理由がないのに提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、
罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されることがあります。

では、どのような場合が正当な理由に該当するかについては、
例えば、提示・提出を求めた帳簿書類等が災害等により滅失・毀損するなどして、
直ちに提示・提出することが物理的に困難であるような場合などが正当な理由として認められると考えられます。

また、罰則が課されるということは
帳簿書類等の提示・提出は強制的に行われるのか、という疑問がわきます。

しかし、罰則があることをもって強権的に権限を行使されることはありません。
帳簿書類等の提示・提出をお願いする際には、
提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の方の理解と協力の下、
その承諾を得て行うこととしています。


2.資料の留置き(預かり)

一般的に帳簿書類等の提出は、紙で行います。
ただ、提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が
電磁的記録の場合もあるでしょう。

提示の場合には、
内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認できる状態にします。
提出については、通常は、
電磁的記録を調査担当者が確認できる状態で紙に出力します。
また、電磁的記録そのものを提出いただく必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もあります。その場合の提出いただいた電磁的記録については、調査終了後、確実に廃棄(消去)することとしています。


※電磁的記録・・・メモリ(USBメモリ等),磁気テープ,磁気ディスク(フロッピー・ディスク等),光学ディスク(CD-ROM等)などに格納されるデジタル方式での記録を指します。

提出した帳簿書類等の留置き(預かり)は、
納税者の方の事務所等に十分なスペースがない場合や検査の必要がある帳簿書類等が多量なため検査に時間がかかる場合のように、調査担当者が帳簿書類等を預かって税務署内で調査を継続した方が調査を円滑に実施する観点や納税者の方の負担軽減の観点から望ましいと考えられる場合には、
帳簿書類等の留置き(預かり)を求められることがあります。

このような場合に調査担当者は、帳簿書類等を留め置く必要性を説明した上、留め置く必要性がなくなるまでの間、帳簿書類等を預かることについて納税者の方の承諾を得て行います。

法令上、留め置いた帳簿書類等については、
留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還すべきこととされています。
ただ、留め置いた書類が大量にあり、そのコピーに時間がかかる場合のように、直ちに返還すると調査の適正な遂行に支障がある場合には、しばらく返還をお待ちいただくこともあります。

なお、返還をお待ちいただく場合、
引き続き留置きをされる理由に納得できないときは、
留置き(預かり)を行っている職員が税務署に所属する職員である場合には、税務署長に異議を申し立てることができます。


3.質問検査権の範囲

法人税の調査の過程で、
対象となる帳簿書類等が私物である場合があります。このような場合、法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合には、その通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。

また、調査対象となる納税者が、
医師、弁護士のように職業上の守秘義務が課されている場合や 
宗教法人のように個人の信教に関する情報を保有している場合には、
調査担当者は、業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て、帳簿書類等を提示・提出を求めます。

いずれの場合においても、 調査のために必要な範囲であり、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。調査担当者も調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない守秘義務が課されています。