1,概要
平成24年度税制改正で創設された国外財産調書制度は、株や預金、不動産など5,000万円相当を超える資産を国外に保有している個人(日本の居住者)に対して、所轄税務署に調書(財産目録)の提出を義務づけるものです。
■適用:平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書についてから
■罰則:平成27年1月1日以後に提出すべき国外財産調書から
http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei12/05/index.htm#02
2,特徴
国外財産調書制度の特徴は罰則規定があることです。故意の調書不提出や虚偽記載は、1年以下の懲役または50万円以下の罰則に処されます。
3,目的
政府税制調査会の説明によれば、5,000万円という金額は相続税の基礎控除を勘案して決めたとされます。これより、制度の目的が海外資産を利用した相続税逃れを封じる意図があることは明らかと考えられます。
一つの例としては、スイスのプライベートバンクがあげられます。スイスの銀行の大きな特徴は、投資、運用、相続など、総合的かつ高品質な金融サービスと、明らかな犯罪の証拠がない限り、国家権力にも顧客情報を明かさないほど徹底した秘匿性です。
日本とスイスは平成23年12月にOECDモデルに基づく租税条約改定に合意しているので、スイスの税務当局は、日本から情報提供要請があれば、国内の金融機関に顧客情報を照会し、それを日本の税務当局に提供しなければなりません。
これによって、スイスのプライベートバンクの秘匿性神話は、崩壊したといえます。だからといって、日本の税務当局が自由に海外の金融機関の口座情報にアクセスできるわけではありません。情報提供に正当な理由があることと、その情報が国内調査では入手困難であることを説明して、ようやく相手国の税務当局を動かすことができます。