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今回は、カエサル(紀元前100-紀元前44)の『内乱記』を紹介します。『内乱記』は、前回紹介した『ガリア戦記』の続編にあたる作品です。
カエサルがガリアで戦っていた紀元前53年、三頭政治の一角を占めるクラッススが戦死すると、三頭政治は瓦解し、ポンペイウスと同等の権限を主張したカエサルに対して、元老院とポンペイウスが手を組んで対抗するという形が出来上がります。元老院とポンペイウスは、カエサルに軍隊を解散するように要求しますが、カエサルはこれを拒否。カエサルは軍隊を伴って当時ローマ本土と属州とを分けていたルビコン川を渡り、ローマを二分するローマ内戦が開始されます。
ちなみにルビコン川を渡った際にカエサルが言ったとされる『賽は投げられた』という有名なセリフは本書には出てきていません。
ポンペイウスはさっさとギリシアに逃げますが、船不足のカエサルには追うことができない。そこで、ポンペイウス派の多いヒスパニアの都市を陥落させ後顧の憂いを取りつつ、準備を整えます。準備が出来ると、カエサルはポンペイウスがいるギリシアへと渡り、ファルサロスでポンペイウスと決戦し、勝利を得ます。
ポンペイウスはエジプトに逃げますが、そこでエジプト王のプトレマイオス13世に殺されてしまいます。そして、ポンペイウスを追ってエジプトに着いたカエサルがポンペイウスの死を知ったところで本書は終了。ローマ内戦はこの後も少し続きますが、そこは描かれてはいません。
『内乱記』は『ガリア戦記』と比べると知名度や評価が低いのですが、内容的にはむしろ本作の方が面白いと思います。『ガリア戦記』では、敵は「蛮族」であり、戦術的にも戦力的にも劣る相手との戦いであったため、カエサルが勝って当たり前のようなところがありました。
それに比べて今回は対等以上の戦力を有するポンペイウスが敵であるため、カエサルも苦渋をなめることもあり、戦記物として充実している感じがします。
しかし、その一方でカエサルの不利なことに言及していないなどの情報操作がやや露骨であったり、ややカエサルの作為が見え透いているところがあります。また、ローマ内戦については他にも資料となる文献が多くあるところも評価を低くしているのかなと。
ただ『ガリア戦記』を読んだのであれば、こちらも読まなければもったいない。ですので、ぜひ読んでみてください。
あと、どうでもいい話ですが、判官贔屓が好きだといわれている日本でも、敗者ポンペイウスの人気は低い。本書を読むと、ポンペイウスの小物感が強く、これでは人気がでなくても仕方がないと思うわけですが、ポンペイウスをもう少し大物風に描くとより面白くなったと思いますね。まあ、それでは小説ですけどね。