天路歴程(新教出版社):ジョン・バニヤン | 夜の旅と朝の夢

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【18世紀イギリス文学を読む】
番外編:『天路歴程』

今回は、「18世紀イギリス文学を読む」の番外編として、ジョン・バニヤン(1628 -1688)の『天路歴程』を紹介します。なぜ番外編かというと、本書が18世紀ではなくて、それより前の17世紀に出版されているからです。

本書は散文で書かれた物語なので小説といえなくもないですが、教化を目的とした寓意物語ですので、近代的な「小説」とは少し異なります。ただし、後年への影響は大きいものがあり、イギリス小説の礎の一つであることは間違いないでしょう。また、その影響はピューリタンを介してアメリカにも渡り、オルコットの『若草物語』などに結実されることになります。

ああそういえば、『若草物語』は読んだけど、続編は読んでないな。イツカヨマネバ。

えっと、話を戻しまして、作者のバニヤンは、カルヴァン系統のバプテスト教会に所属し、その伝道師となった人。伝道の傍らで教化的な本を多数執筆しましたが、その代表作が本書『天路歴程』となります。

『天路歴程』には、正編と続編があるんですけど、正編が1678年出版、続編が1684年出版です。邦訳も何種類かあるらしいのですが、手に入りやすいのは新教出版社版と岩波文庫版でしょう。岩波文庫版は新教出版社版に比べて安価ですが、訳文が古く(旧仮名遣い、旧漢字)、やや読みづらい印象。古い訳文も作品の雰囲気には合っているので、悩ましいところ。だた僕は書店で見比べた結果、新教出版社版にしました。だって、ほら旧仮名遣いって読みづらいじゃん(笑

新教出版社版は平易な訳文ですが、登場人物の名前が特徴的。クリスチャン(Chrstian)を基督者、ホープフル(Hopeful)を有望者など、名前をカタカナ表記ではなく直訳的にしています。僕は分かりやすくて好きですが、好みは分かれそうですね。

さて正編では、バニヤンと思しき男が夢の中で、重荷を背負った基督者を見出します。基督者は、破滅の町という場所に住んでいますが、破滅の町に住む人々は放蕩に明け暮れ、神や善き人生を顧みようとしていません。

基督者は、一冊の本(まあ新約聖書でしょう)を読むと涙を流し、罪の重荷を背負ったこんな生活には耐えられないと嘆きます。その後、基督者は、伝道者に出会い、巡礼の旅に出ることを勧められます。

巡礼の旅は危険だというので、家族や知人たちは反対しますが、結局、基督者は、家族を置いて旅立つことに。その際、街の住人である強情者と柔順者が基督者についていきますが、強情者は早々に基督者と袂を分かち街へと引き返してしまいます。

柔順者の方は、その後も基督者についてきて、基督者から巡礼が幸福を招くというような話を聞くと、その気になってずっと基督者について行こうとします。しかし、柔順者は、「落胆」という名の沼に陥り沈みかけると、こんな目に遭うことが幸せだなんて信じられな~いとか何とか言って、やはり街へと引き返してしまいます。

基督者も沼に陥るのですが、助力者の助けを得て這い上がると、巡礼の旅を続けるのであった。

その後は、基督者が様々な人物や悪魔などに出会い、惑わされたり、襲われたりしながらも、巡礼の旅を続けていくことになります。

物語としては、かなり波乱万丈ですので、描き方によっては血沸き肉躍る冒険譚になったかもしれませんが、キリスト教(カルバン派)的な話がメインなので、残念ながらそうはいきませんね。ただ、信仰心の全くない僕でもある程度は楽しめましたので、そんなに身構える必要はないかと思います。

続編は、破滅の町に取り残された基督者の妻と子供が奮起して、基督者の後を追って巡礼の旅に出るというもの。コースも基督者と一緒ですし、基本的には、正編と同じ雰囲気の話です。ただ、正編が神の厳しさを強調する話だとすれば、続編は神のやさしさが強調されているところに違いがあります。

まあ、宗教的な話ですので、誰しも楽しめるというものではありませんが、上にも書きましたが身構えず、イギリス文学の古典として読んでみてはどうでしょうか。意外と楽しめるかもしれませんよ。

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