リヴァ・ベラ(春風社):パトリス・ルコント | 夜の旅と朝の夢

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リヴァ・ベラ/春風社

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フランスの映画監督パトリス・ルコント(1947‐)による小説第二作。ちなみに第一作は『ショートカットの女たち』です。

ルコントは、『髪結いの亭主』や『仕立て屋の恋』などの映画を撮っているのですが、これが面白いんですよ。映画史に残る傑作とはいかないかもしれませんが、愛すべき映画が多い。切ないラブストーリーが好きな人にはかなりのおススメです。

ただ本書解説によると、今後は映画を辞めて小説に専念するとか。ファンとしては映画も続けて二足のわらじを履けばいいのにと思うのですが。まあ、仕方ありません。

さて、タイトルの「リヴァ・ベラ」とは、フランス北西部・ノルマンディー地方にある実在の観光地。海水浴場があるそうですが、本書曰く「流行遅れだ(P9)」そうである。まあ、行ったことはないのでそう信じておきましょう。

主人公はマジシャンのトニ・ガルボ。彼はマジックショーを行うために、美人妻スュジーと娘のアリーヌとともにリヴァ・ベラに滞在していた。

ガルボは海水浴場でアリーヌとひとしきり遊んだ後、妻のいるホテルに戻ります。しかし部屋には妻の姿が見えず、一枚の便箋があるのみ。そこには、バンドマンの男と一緒に出ていく旨が書かれていた。なんとベタな!

愛する妻を失っただけでもショックなガルボであったが、問題はもう一つ。妻スュジーは、マジックショーに出演する仕事のパートナーでもあったのだ。しかもマジックショーは当日の夜行われる。マジックショーをキャンセルしようとしたが、ホテルの支配人にあっさり断られ、その場しのぎのアイディアで、娘を妻の代わりにマジックショーに出演させるのだが、これが大失敗。

その後、娘は妻の両親に引き取られ、完全に取り残されたガルボ。しかも別の場所で連日マジックショーの予定は入っている。そんな絶対絶命のガルボはどうするのか!

とまあそんな感じのお話。ガルボの境遇は悲惨ですが、それを語る作者の分身である“私”の語り口は軽妙洒脱。そのギャップがコミカルで読んでいて楽しい(ガルボには悪いけど)。文学的ではないですが、気楽に読める面白い小説ですよ。ライトな小説を読みたい人には、おススメです。

ちなみに、上にも書きましたが、ルコントの映画としては、以下の二つが代表作にして僕の好きな作品です。

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