ショートカットの女たち(春風社):パトリス・ルコント | 夜の旅と朝の夢

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ショートカットの女たち/パトリス・ルコント

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作者のルコント(1947‐)はフランス出身の映画監督。『髪結いの亭主』や『仕立て屋の恋』などが有名で、僕の好きな映画監督の一人です。本書は、そんな彼の書いた初の小説です。

三年以内にショートカットの女性と結婚することを誓った、変わり者の男が繰り広げる、軽妙でポップで切ないラブストーリー。「ぼくはトマ、いいやつ」で始まるなんとも軽いお話。だけど、なんかいい感じなのだ。

トマ曰く、「髪をすごく短くする女は、自分の存在を受け入れる女」だそうで、美女はすべからくショートカットだそうである。この完全な思い込みというか偏見を好ましく思うか、そうでないと思うかが本書を楽しめるかどうかの境目でしょう。そんな偏見を受け入れる度量が読者にも必要なのです。

『髪結いの亭主』には、「人生は単純だ。強く願えば叶う」って感じのセリフがあったと思いますが、ルコントの作品に共通なのは、この主人公の強い願望なのだと思います。実際に望みが叶うかは、運や実力次第なのでありますが、とにかく先ずは、強く望むことなのだと、ルコントは言っているような気がします。