第15回 大徳寺黄梅院「寿ぎの茶会」① |  金工と蒔絵そして茶道  ~工房 是空庵ブログ~の………追記ぶろぐ。

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茶道、お菓子、京都のことや作業のこと、、あれやこれやと、" つぶやき程度 "  に、頭の体操を兼ねて書いたり書かなかったり………

甚大な被害状況の能登半島地震から1か月が経とうとしています。被害に合われた方々に心よりお見舞い申し上げます。暖かく、心落ち着く日々が少しでも早く訪れますようお祈りいたしております。

 

教室の生徒さん用に塗皿を仕入れていた輪島塗のお店も火災で焼失してしまったと聞きました。工房も道具も材料も失ってしまった、家も作業場も崩れてしまったという輪島塗の方々の厳しい現状に、支援方法は様々にありますが、この先の地域の復興と輪島塗再建の応援になればとクラウドファンディングの支援プログラムを見つけたので、微力ながら賛同しました。募集は4月までしているようです。堅牢で美しい技術の詰まった輪島塗。長い気持ちで復興への応援をしていきたいですね。

 

 

☆☆第15回 大徳寺黄梅院 『寿ぎの茶会』☆☆ (長文です。)

 

前回のお茶会がコロナパンデミック前の2019年1月。ブログでは、第10回以降から何故か記録していませんでしたが(第11回菊花の茶会、第12回寿ぎの茶会、第13回創遊の茶会、そして平成31年第14回寿詞の茶会、その後令和元年へ。)、写真はあると思うので、そのうちまたお見せできればと。)

 

小林太玄和尚様には「次のお茶会を楽しみにしているよ」と何度も何度もお声がけを頂いておりましたが、世界的コロナ禍に日常社会が翻弄され、3回計画が浮上しては中止、断念、先延ばしとなって、やっと動き出せる時期になりました。

和尚様と事務所スタッフ皆様の全面協力のお力添えのもと、5年ぶりに大徳寺黄梅院をお借りしてのお茶会を開催する運びとなりました。

 

この数年で世界中が変化しましたね。気持ちも沈みがちな状況になりがちですが、令和6年は『龍翔鳳舞』、龍のごとく力強く 鳳凰のように華麗に舞い生きる。を今回のお茶会のテーマとして、「皆様と再び元気にお逢いいたしましょう。」と去年ご案内を送らせていただき、100名様限定の薄茶席のお席を催させていただきました。

半年前に日程が最終決定してからは、ファミリーで怒涛の準備が始まりました。様々に準備段取りを重ね、あっという間に年末になり新年になって、皆様にお会いできる日が近づいていきました。

 

冬にしては暖かい日が続いていましたが、前日準備の日だけは生憎のしとしと雨で、何年ぶりかで雨合羽を着て、転ばないよう濡らさないようにお道具を車からお寺に運び込みました。寺院特別一般公開の最中なので、お客さんの通り道の邪魔にならないようタイミングを見ながら運びました。でもかえって雨降りだったので、大徳寺自体に観光客も少なくて、スムーズに完了できたのかもしれませんね。(雨でおおきに。)

お寺の床、畳、棚を傷つけないよう濡らさないように、少しでも荷物を置く場所には全てに敷物を敷いて対処するので、山のような敷物を準備しました。

お道具の忘れ物もなく、桐箱より久しい眠りから開封されてお湯に浸かったお茶碗たちも、翌日の本番に備えて生き生きとして見えました。

 

いざ当日。

心配していたお天気は曇のち晴れ!気温も13度。

おはようございます。8:30開門、入らせていただきます。

 

 

15回目ともなれば、庵主の背中もだいぶ丸くなりました。(総括兼水屋係の母が腰を痛めてしまったので急遽椅子を持ち込みました。両親とも元気ですが、あちこち不調が出てくる年齢になったと実感しております。)

 

60歳でもまだ若いと言われる茶道界ですがいよいよ高齢化問題も感じるところです。人生の先輩方は気力が若者よりお元気な方が多いのでまだまだ安心するのですが、一方でお稽古場を閉めた先生やお道具を手放す処理に悩む先生方のお話も入ってきます。蔵一つをCMで見た骨董屋に頼んだら、若い店員が来て写真を撮ってはスマホで店舗とやり取りして、店に在庫がない売れそうなお茶碗3点だけを7000円で買って行き、後はリサイクルショップへ持って行くよう言われたという悲しい話もありました。(お道具は購入したお店へ相談するかお茶仲間内で譲っていく流れの方が気持ちが納得するのかもしれませんね。。。)

この数年のことでお茶会自体が開かれなくなって、茶道のお稽古人口も減り、やむなく閉店したという茶道具屋さんも多々耳にしましたし、お茶関係の職種の方たちも同じく厳しい影響を受けたそうです。今後はまたお茶会が戻りつつあるのでしょうけど、若い方々の茶道への興味が増えて色々と活性化していけるといいですね。

…などと、私が考えたところで解決しない話なのですが。

だいぶ話がそれましたがぁ。

 

門をくぐって長い石畳を初春の息吹を感じながら、1歩1歩。

前日から京都入りの方、日帰りの方、翌日京都旅行を楽しんでから帰る方など、この日の為に京都計画をして各地から集まったお茶仲間さんたち。久しぶりにお顔を合わせてご挨拶を交わす姿は、とても嬉しそうでした。

 

受付。

事前に郵送しました名前入りお茶席券を点心券と交換して受付が完了。

床飾りには、上七軒の芸妓、梅ぎくさんお手製の「稲穂飾り」と、前々日に梅ぎくさんのお店に飾ってあったのを見てたら、「これお使いやすかぁ~?」と聞かれて喜んで頂いてきた「餅花」と、栃木の道の駅で見つけた「丸太炭」の炭飾りを。

花街のお正月には縁起物で稲穂かんざしを挿してますね。水引と注連縄と稲穂を綺麗に組み合わせるオリジナル性の高い梅ぎくさんのお飾り。器用です!

炭飾りは、だいたい見かけるのは3本ひと組の三角形の炭飾りだけど、こんなに太い一本の丸太炭は見たことがない!と驚かれました。

綺麗な菊炭です!

(お床が広いので全てがこぢんまりと小さく見えてしまいますね。)

 

お客様の荷物置き場には『春入千林處々鶯 太玄和尚』のお軸。表千家さんの初釜で掛けられるお軸だそうですが、本日のお茶席でもしかしたら鶯が一声鳴くかもしれません。

 

お待合には、『四大五常忙悠 太玄和尚』のお軸。

こちら、父の座右の銘です。解釈すると、

「”人の道”とは、大自然の中で生かされながら、人とのご縁で発生する仁義礼智信に感謝をし、小さな徳をコツコツ積んでいくことでやがて心と心、共存共栄に繋がる道を見つけながら歩んでいくものなのではないか。と思って生きております。忙しくても気持ちにゆとりをもっていれば、五常は守っていけるだろう、と。皆さんと共に、今日もこの気持ちを持って大切に豊かな時間を過ごしましょう。」との気持ちで掛けたそうです。

ガランガランと鳴る初詣気分の大鈴も飾りました。

そして前日に和尚様が急遽出してずらっと並べて下さった由緒あるお道具も!!万が一にも傷つけたらいけないからとお断りを入れさせていただきましたが、ご厚意にてお飾り下さいました。

お床を仲良く半分こして、是空庵茶会特別仕様の待合床へと相成りました~。なかなか拝見できない和尚様のお道具たちに、お客様も大変喜ばれておりました。有難うございます。

もう一室の立礼のお待合部屋の方は、黄梅院さんが室礼を整えて下さいました。

 

ご準備整いました、本席です。

お軸は『独釣寒江雪』

待合の「四大五常忙悠」という父の心情を知る和尚様から、今回の父の為に贈られた言葉でした。「全てを真っ当に生きて行くには時にままならず、つらい事もあるでしょう。でも私も一緒ですよ。お互い共に心静かに穏やかに生きていきましょうよ。」という激励のお軸だったのでした。和尚様有難うございます。

 

お席でのこのコンパクトな机と椅子セットもお貸し下さいました。高さも丁度良く、椅子が収納式なので大きさ的にも片付けもとても便利でした!

淡交社さんで「ちょっと椅子(机付)」の名で販売されていますよ。


ここ数年お稽古もせず着物を着る事もなかったので、この写真を撮る時に、腕を上げた時の帯の締まり具合とかこの眺めの懐かしさとか。炭と練香の匂い、釜の湯の沸く音、これからお客様を招く静けさ。この空間に暖かみを感じていました。

 

 とはいえ、室礼風景は一緒でもお茶席内の様子はこの数年で変化がありましたので、どのように動くかも考えました。

もう全く気にせず以前と変わらないとおっしゃる方や、まだ衛生的に気になる方もいらっしゃいますので、前日に東京道場の初釜参加後に京都入りして、水屋手伝いをしてくれる友人からお知恵を拝借。

立礼で濃茶は各服点だったと。お盆でお運びして、お菓子は懐紙にのせ、懐紙ごとお客が取り、お茶碗も取る。拝見は回さない。返す時もお客がお盆に乗せる。というお茶碗にはあまり触れないという流れだったと。で、マスクはお客は自由、お運び方は着用していた。という有力な情報から、早速参考にさせていただき、お運び案の流れを練りました。

 

水屋側お手伝いは社中の鹿沼組、石堂先生の山形組、秋山先生の東京組、と裏千家学園時の仲間たちと上七軒の方々が応援に来てくださって、一緒に動いていただきました。昔からいつも皆様方のご尽力のおかげで是空庵茶会は回っているのでございます、誠に有難うございました。

 

あれ?床の横と奥の飾り棚が空いてたなぁ。と写真で知りました。何か飾るべきだったのかな?どうだっけ?と、昔は親子で気が回っていた色んな事に、あれこれと後から気付く5年ぶりのお茶でもありました。そして私、なんとお茶碗と棗の配置を左右逆に置いてしまって、舞妓さんに教えてもらいましたぁ☆準備中のことで良かったぁ。 

着物の帯結びも忘れてたし、やらないと人の脳はどんどん忘れる生き物ですねぇ。。。年齢のせい?にはしたくないけれど、とほほー。

 

花は、父が庭で育てていた雲龍椿の予定でしたがまだ蕾が硬くて間に合わない。と、京都で調達に走りました。

昔からの茶花専門店はありますが、ネットで近所にないかと探して行きついたお花屋さんで、堀川紫明の淡交社近辺にある『谷中』さんにお頼みしました。

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月に数日しかオープンしない日が、ちょうど前準備日とタイミングが合ったので、賑やかな宝尽くし柄の洋物の壺写真を見せて、見立てで花器として使うこととお床も大きいことを店主さんに伝えて、見繕っていただきました。「蝋梅と大玉椿」。壺なので口も大きいしなによりこの大きいお床。もういただいてきたままの豪快さで、ボリュームたっぷりに飾り入れました。

谷中さんでは2月6日から”100種が集まるチューリップ祭り”があるそうです!想像しただけでも店内カラフルで綺麗でしょうね!地方発送もあるそうですよ。

 

席中、庵主のお久しぶりですの挨拶からスタート。

お点前には上七軒の舞妓、市ゆうさん・市きよさんに各席交代で入っていただき、華やかさと可愛らしい姿ではんなりと、各地からお越しくださったお客様を和やかにお迎えしてくれました。

 

お菓子は『兎亀屋』さんにご相談してお任せ願いしました。

「松竹梅」。

写真は懐紙があちこち雑な配置で動いてますが(汗)、懐紙一つだと絵柄の龍の金目が隠れてしまうので懐紙を分けることになり、必死でこの正方形懐紙を探しました。別紙の懐紙どうしをを紅白重ねに細工して前準備しておきました。

当日は4グループ合同なので、話が行き届かないこともあるからと、あらゆる事がサッとひとつ動作で”楽に出来るよう”に、先に考えられることは下準備をきっちりとしておきました。

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お菓子は、そろばん玉のようにずらっと詰まって並んでいるのかと思いきや、小分け菓子箱で取りやすいように一つ一つ丁寧にカップ入りになっていて、菓子係には大変盛りやすく有り難かったです。

この赤ピンクがかった色の発色とふっくらな梅。輪郭の先がキュッと鋭角な感じもお気に入りで、白餡です。外郎生地でモチッと弾力、美味しい。お干菓子も大粒!成型がしっかりしてるので、金団細箸で摘まんで盛りました。こんなに硬いのに口に入れると和三盆がすーっと蕩けました。

去年オープンされたお店ですが、京都イベントやデパートでもお名前を聞くことが増えてきました。兎亀屋さんではお店で季節のお菓子作り体験もされていますよ。

 

そしてこの菓子器は。

私が茶会テーマである龍と鳳凰でデザインして、兄が機械で1枚づつ制作して最後に私が金の目を入れた、兄妹合作のお茶会記念品です。

一人一人にお運び後、そのまま皆様へのお土産品としてお客様全員分をご用意しました。

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制作中は家の机中がこのお盆の置き場所になって積み重なっていました。

お盆や敷台など、色々とご活用していただければと思います。

 

1服目は銘々に運び、おかわりの2服目は、「いかがですか?」と声を掛けながら大きなお盆に乗せて運び出しましたが、皆様全員喜んで手に取っていただいて下さいました。

お客様はお馴染みの懐かしい方々。お元気な笑顔に、お互いに喜び合いました。「年齢的にもうこのお茶会が京都最後かもしれないから!何が何でも来なくちゃ!という想いで来たんです!」という思わず抱きしめたくなるような言葉も頂きました。みなさまお越し下さいまして本当に感謝感謝です。

 

直径45㎝の大盆3枚。もともと実験的に作り始めていたお盆で、茶道用として考えていなかったのでお茶席ではだいぶ派手に見えましたね。

1枚目は布貼りに独楽模様をアレンジ。どんどんエスカレートして賑やかになっていきました。最後には何かが物足りなくなって金箔模様を加えました。もっと金金派手派手にしても面白そうなのですが(実験なので)、制作途中で「茶席で使うよ。」となったので抑えた感じです。

2枚目も技法的には布貼りです。洋風イメージ。虹色カラーでボカシ塗りにしようかと思っていましたが、こちらも途中から抑えた感じです。かなり色漆の発色が強めに出ましたね。

3枚目は木目が面白く、綺麗だったのでそれを見せるためにシンプルに拭き漆にしました。こちらは最初からお茶席を考えて、静かです。でもやっぱり光らせたい!と我慢ならず、縁には緑系のメタリック漆を使用して、色見を変えながら竹模様を描きました。鈍色メタルにキラーンと光りますが、茶席で落ち着いて見てられるのはこれくらいの雰囲気のものでしょうね。

「こんな大きなお盆見た事ない。」「新しい漆の表現ですね。」と色漆や技法表現を面白がって見て下さる感想を聞けたので、結果オーライという事で。

でもまだちょっと手を加えるかも。。。

 

で、このお盆に3碗乗せて運んだ時、1人お客様が取った後ぐるっとお盆を回していけば次の方が取りやすいのに、ぼーっとしてそれに気づかず遠くから手を伸ばして取ってもらってました。このちょっとした機転にすぐに気づかなかったことに、お茶から離れていたブランクも感じたのでした。。。

 

さて、2服飲み終わってお茶碗を拝見中にもどんどん進行していきますよ!舞妓さんによるお楽しみのくじ引き大会です☆

毎回お席入りの時に、くじ入りの菓子器お土産袋を引いてもらっているので、皆さん袋の中にある自分のくじ番号を確かめます。

そしてお点前の終わった市ゆうさんか市きよさんが各席2名の福をお選びいたしました!

 

景品は、黄梅院に春を告げる鶯です。美濃焼「うぐいす酒器セット」。

お酒の徳利なんだけど、我が家では見立て使いで”水次”として遊びで使っている品で、水を注ぐ時に「ピーョピョロピロピゥィ~♪」と一声鳴かせてお茶席を楽しくさせてくれる遊び要素のあるアイテムでもあります。因みにこのお猪口も穴の所から飲むと一声鳴きます♪ 上手く鳴かせられるかは、あなたの腕前次第♪

(お席で鳴き声デモンストレーションをと思いましたが、部屋が大きすぎて音が届かないだろう、と諦めました。)

 

そして水屋お手伝いをしてくださっている石堂先生から、山形の”季節のさくらんぼプレゼント券”のお年玉を頂きました!!盛り上げていただき有難うございます。!

 

各席2名づつの運だめし。当たった方はおめでとうございます♪

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どのお席だったか、ちょうど私が大盆にお茶碗乗せて運んでる時で、私のすぐ後ろでお茶碗を下げる父が”横着して”2碗両手に持って立とうとするも膝が立たず、お客様の目の前でお尻からゴローン!と後ろに崩れてしまって、お客様を驚かせてしまいました。。。座ったまま苦笑している父の様子を見て、転がっただけで大事無いと思ったのでこちらはお客様を優先し手を止めずお茶をお出ししていましたが、「大丈夫ですか!?」とお客様の手助けを頂いてしまいました。

その後のくじ引きでは、その方に当たったそうで、目の前での父のハプニングが厄を祓ったのか、はたまた父が運を落としたのか、そんな事もあるんだねぇ~というくじ引き結果がありました。

 

他にも、多分あの先生が当てるかもよ!?なんて、水屋で予想してたら見事に的中したりしました。

そして、人数少ないからと水屋組も入らせてもらったお席で、後から遅れて入られた方分のくじが足りなくなってしまって、、、咄嗟だったので番号作る余裕も無く、急遽前席の余り分をお渡ししたあとで友人に、「これ万が一数字がダブる可能性があるかもしれない。」と入り口に張り付いて聞き耳を立ててもらうことにしました。誰にあげるでもなく、たまたま余分に持って来ていたうぐいす徳利を一応準備しておきました。。。「⚪︎番!うぐいす徳利」おめでとう!「⚪︎番!さくらんぼ券、誰?」「はい!」おめでとう!…「あの、私もです~」と、なんとその最後に滑り込みでお渡しした番号が一緒に当たってしまう偶然が起きてしまいましたぁっ!! 3人目当選の出現に状況の分からない父、友人が景品をすぐにお出ししたので混乱もなく済んだけど。。。

ふぅぅ~、こんな事もあるんだぜぇ~☆と友人と笑い合った、面白いくじ引きの時間でした。真実を知る2人、席中の皆様と同じく結果発表にドキドキしてました!

 

 続く。