◆G種(DM) 尊敬 | 雑種犬 G種ディアミリ/テニミュリョ桜王子/DCジンシェリ・秀明 等小話ブログ

AAに捕虜として乗っていた頃からずっと、アイツのことが気になっていた。恋人を亡くし、どん底の状態を見た。殺され掛けたが直後に救われた。独り艦の奥底の牢に閉じ込められた後も、自分の今後もだが、それより彼女のことが心配だった。

 

恋人を亡くした哀しみ、絶望。戦闘が続く軍艦の中で自由はなく、哀しみを癒す、地獄から這い上がる術があるとはとても思えなかった。今も独りで泣いているのでは、哀しみの底にいるのでは。それか友人らしい、サングラスの男に慰められているのか…。

 

だが彼女は、俺の元に食事を持って来てくれた。同じ人間とは思えない程、予想外にも気が強いタイプだったようだ。その後も毎日来てくれて、少しずつ話をした。哀しみは消えない筈なのに、少しずつ顔色は良くなり、話が出来るようになり…。

 

気になって仕方なかった。彼女が本当はどんな女の子なのか知りたくなった。AAで本当にこれからも戦っていけるのか、不安だった。敵である、俺を殺そうとした相手だというのに。自分が今後どうなるか、全く分からないというのに。

 

唐突に捕虜から解放された日。彼女は強く言った。『私はAAのCIC担当よ?それに、オーブは私の国なんだから』

そして恋人を殺したのがアスランだと知った時。アスランに感情をぶつけるのではなく、泣きながらその場を立ち去ろうとした。『だったら何?!あの人を殺せばトールが帰って来るの?!違うでしょ?だったらそんなこと言わないで!』

 

憎い仇を恨むのではなく、独りで抱えて許そうと、泣きながら自分の中で戦っている。俺のことだって、トールを侮辱したのに許してくれた。命を救い、檻の中でも気に掛けてくれた。あんなにもボロボロだったのに、泣いてばかりだったのに、優しく強い、そんな女の子初めて出会った。

 

俺に出来るだろうか?大切な人を殺した相手を目の前にして、何も言わずに立ち去るなど。侮辱されたのに許すなど。俺にはきっと真似出来ない。

 

いつの間にか彼女は、俺にとって気になって仕方ない、大切な、尊敬する存在となっていた。

 

 

 

(その内加筆するかも?)