過去作に加筆。
「ねぇ、考えたことはない?もしもこの組織にいなかったら、一体どんな人生を送っていたか」
「…下らねぇ」
「あなたはどうあっても、悪に堕ちていたでしょうけど。自分がリーダーの組織を作るとか?」
「面倒臭ぇ、別にボスの座に興味はねぇよ」
「そうよね、あなたって自分がしたい任務はするけど、面倒なことは部下とか右腕に任せるタイプよね。ウォッカならついてきてくれそうだけど。…あなたがボスの組織なんて、私は死んでも御免だわ」
「フン、テメェみたいな口だけ達者で我侭な科学者なんざ、こっちから願い下げだ」
あなたが私の研究室にいる。よくよく考えればとても不思議なことだ。
だって私とあなたは、本来別世界の人間だ。全く別の人生を送ってきた、考えも仕事内容も、何もかもが異なる。
なのに何故今こうして、あなたがここにいるの?…いや、私があなたと共にいることを許されているの?
不思議だ。これはかなり特別なことなのかもしれない。いつまでもこんなことが続くとも思えない。あなたは間違いなく冷酷無比な人殺しで、私は組織一の科学者だから。
私はこれでも、根っからの悪人ではないつもりだ。人殺しなど死んでもご免だ。こうして今黙って同じ空間にいるけれど、多くの人々の人生を破滅させるあなたを、決して許すことは出来ない。
だからいつか必ず、この曖昧な時間には終りが来るだろう。その時はせめて、憎み合い殺し合うような、哀しい別れではありませんように…。なんてつい、信じてもいない神様とやらに祈ってみたくなる。
他ジャンルですが、pixivに新テニ、リョ桜王子アップしました。