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Zarchery's fanciful story

Zarcheryが考える物語。ただしストーリは気が向いた時に書き、予告なく変更される。たとえそれがすでに公開されている内容だとしても。そんな物語をはたして貴方は読む気になるだろうか?
                 - Since March, 2007 -

日本では“死”を意味し、縁起がよくないとされている。まして病院で4が部屋番号につかわれ、よりによって“4” を “4つ”も並べた部屋番号。

「きかないんですよ」

「え?」

「4444じゃなきゃ嫌だって・・・・。そうしないと興奮して手のつけようがないので、仕方なく」

ヒロアキは看護婦に案内されながら、建物を出てC棟がある場所へ向かう。C棟は受付の棟から比較的近く、徒歩5分強で着くとのこと。夕日が眩しかった。ふと安物の腕時計を見る。数年前、相葉がパチンコでもうけた際に、世話になっているお礼だといってくれた代物だ。

「OMEGAの時計だよ」というので一瞬喜んだがそこにか書かれているのは「OMEGA」だった。

「なぁ、このGとAの間にある“点(.)”は何だ?」と聞くと「ドット」と軽く言い放った。

そのニセモノOMEG.A時計が16時半を刻もうとしている。ふと、“Bar4”のマッチを思い出した。4つあった。C棟の1階にあるエレベータに乗り、3階で降りる。目の前の壁に番号と矢印がある。右に向いた矢印の下に301~310、左矢印の下に311~320。ヒロアキは看護婦とともに右手に歩き出す。すぐ右手にナースステーションがある。先ほどの看護婦がナースステーションで事情を説明した後、私達は再び歩き出した。彼女の言った通り、突き当たり右手にその部屋はあった。“4444”。明らかに手書きで応急処置といった感じの部屋番号。すると彼女はポケットから鍵を取り出す。先ほどのナースステーションで預かったらしい。

「鍵をかけているんですか?」

「ええ。危ないですから」

「それは・・・」

「あ、危害をくわえるという意味ではありません。ただ徘徊して行方が分からなくなることもあるので」

「ああ」

彼女が鍵をあけて扉を引くと、こちらに背中を向けてベットに腰をかけている男がいた。

「クローバーさん」彼女が声をかける。

『クローバー?』頭の中で彼女の言葉を繰り返したが声にするのはここでは控えた。

男は彼女の言葉に振り返る。連日日焼けサロンに通ったかのような色黒の痩せこけた顔、髪の毛は火遊びでもしたのかと見間違うほどチリチリになっていた。それは看護婦の言うとおり、自分が提示した写真の男とは随分かけ離れていたが、間違いなく山下だった。看護婦は振り返り、どうですか?という顔をした。

「彼です」

「そうですか」

「少し話をさせてもらっても良いですか?」

「ええ。では、私は先ほどのナースステーションにおりますので、終わりましたらお声をかけてください」

「はい」

「あ、面会時間は16時45分までですので」

「彼を引き取るわけには?」

「必要な手続きがありますので、今日は無理だと思いますよ。面会の後に改めて説明しますが、そちらにも色々な書類を要して頂くことになると思います」

ヒロアキは何の書類が必要かわからなかったがとっさに戸籍謄本が浮かび、自分の兄だといった事を後悔した。そしてとりあえずの返事として「わかりました」と答えた。彼女は軽く頭を下げて扉をしめた。鍵はもちろんかけていない。それを確かめてからベットの方へ振り返ると、山下は言った。

「だれ?」

「ヒロアキだ。覚えているか?」

「ヒロアキ?知らない」

「自分が誰だかわかるか?」

「僕?うん、クローバー!」声は山下だったが、話し方は完全に子供だった。山下の年齢は35歳。明らかに成人だ。

「クローバー?」

「うん」山下は、そう言ってベットのすぐそばにあるテーブルの上にあったブロックを取りに行く。子供用のおもちゃだ。上下左右にくっつけて何かを作っている。

「ねぇ、一緒に遊ぶ?」

ヒロアキはその問いに返事をせず、山下が座っている向かいの椅子に座った。正直、何をどう話せばいいのかわからなかった。彼には記憶がないのだ。ヒロアキは小さくため息をついた後、ゆっくりと部屋を見回す。窓際にあるベット、そのベットの足元から少し離れた位置にテレビ台の上に乗ったテレビ。 ベットの右手に応接セットの様なテーブルと椅子がある。椅子といっても一人用のソファーに近いが。そして壁のあちらこちらに貼ってある絵と文字。それらは全て四葉のクローバーか、数字の4だった。

「どうして部屋の番号は4444なのかな?」ヒロアキは子供に話しかけるように問いかけた。今はその方がいい気がしたからだ。

「だって、安全でしょう?」

「安全?」

「そう、4は大事。4は安全」

ヒロアキは、ポケットから山下が持っていた例の4つのマッチを出した。それを見た山下は突然立ち上がり、泣きそうな顔で抱きついてきた。

「助けて!ここは危ないんだ!」

ヒロアキは一瞬驚いたが、すぐに冷静になった。山下が子供なら頭をなでてやるところだ、と思った。しかしながら、どう間違えても容姿は大人。そう、はたから見れば大の男が2人で抱き合っている格好だ。そしてツイている事に、タイミングよくドアが開いた。

「そろそろお時間に・・・・」

ヒロアキは山下を兄だと言っておいて良かったと思った。が、そうでもなかった。

看護婦の「あっ」という声が聞こえるとすぐ、扉は閉められ、再び2人の世界になった。



「セ、セイリンテンゲア・・・病院?」

変わった単語に思わず相手の言葉を繰り返す。

「はい」

「あ・・・ あの、そちらの、そちらの住所を教えていただけませんか?」

「ええ、山梨県耶麻方市3丁目・・・・」

「え?ヤマナシケン、ヤマガタ?ヤマガタ?ですか?」

「いえ、“ヤマカタ市”です。最近、市の名前が変わって・・・」

「すみません、どういう字ですか?」

「ヤは“耳”という字に“おおざとへん”、マは“あさ(麻)”、カタは“方言のほう(方)”です」

「耶麻方市・・・・」

「はい」

「それで、病院名はどのように書くんですか?」

「はい?」

「あっ、いや、友人から電話で名前を聞いたんですが、その・・・、字を知りませんで・・・」

「あぁ、“静寂のセイ()”、“風鈴のリン()”、“天気のテン()”に、ゲは“植物の”と書いてゲ、それからアは、“亜細亜(アジア)を漢字で書いた時の”です」

「静鈴天花亜(せいりんてんげあ)・・」

ヒロアキは一通り住所を確認して電話を切った。


「バカなヤツ」自分で自分にそういいながらハンドルを握った。

そして、その日の夕方、彼は山梨にいた。耶麻方市(やまかたし)・・・それは随分僻地にあった。目の前に巨大な病院、どうしてこんな場所にこんなに大きな病院が必要なのかわからないほど大きかった。1棟、1棟はそんなに大きくはないが、それが何棟も並んでいる。正面にある唯一2階建ての低い建物の上に大きな字で書かれている「静鈴天花亜 病院」と。

<セイリンテンゲア>

彼女のメモには「阿下佃輪城」とあった。これらの読み方を音読みではない読み方をすると・・・幾つかのパターンの中に<ア/ゲ/テン/リン/セイ>がある。これを反対から読めばセイリンテンゲアとなる。そして耶麻方市・・・偶然なのか微妙に山形に近い。そんなことを車中で思いながらここまできた。大きさを除外すれば普通の病院となんら変わりない。待合室には患者がたくさんいる。どこからこんなに集まってくるのか、子供からお年寄りまで様々だ。ナースステーションを見つけて看護婦の1人に声をかける。

「すみません」そういってポケットから1枚の写真を出す。

「何か?」

「あの、この男性を知りませんか?」山下の写真を看護婦に見せる。

「・・・さぁ。この方が何か?」

「いや、行方がわからなくなってまして。行方不明なんです。兄なんですが、ここで見かけたという、うわさを耳にしたものですから・・・」

「行方不明?」

彼女が“行方不明”に反応したことに気づいた。

「ええ。あ・・・、身元不明の患者さんはいますか?」

「あぁ、はい。うちは、多いんですよ」

「え?」

「国の指定になっているんです。身元不明の患者さんの大半をここで引き受けるんです」

ヒロアキは一瞬言葉を失った。

「1ヶ月前に、ここに運び込まれた身元不明の男性はいますか?どうしても兄を探したいんです。教えてもらえませんか?」わざと困っている顔をしてみせる。

「あぁ・・・。ちょっとお待ち下さい」

看護婦は別の看護婦のもとへ行き、なにやら相談している。しばらくすると書類を持って戻ってきた。

「ここ1、2ヶ月前だと3名います」

「3名?」

「ええ、でも、成人の男性は1人です。ただ・・・」

「ただ?」

「写真の方とは違う気が・・・」

「会わせてもらえませんか?その人に」

「ええ。C棟の2階の突き当たり右側の部屋です」

「部屋番号は?」

「部屋番号は・・・・ 4444です」

「え?」


ヒロアキは「96Bar」の前にいた。ドアに貼られている一枚の白い紙を読む。それは<閉店のお知らせ>だった。“移転”なら、可能性がある。でも“閉店”となると話が違う。小さくため息をつき、店に背中を向けた。斜め向かいにある喫茶店が目に入る。今朝はまだ相葉が入れてくれたコーヒーしか飲んでいない。何の躊躇もなくヒロアキは喫茶店に入り、店員が案内した席に座る。

「モーニングセット」

「お飲み物は?」

「コーヒーを」

「モーニングセットのコーヒーで宜しいでしょうか?」

「はい」

ゆで卵と小皿に入ったサラダ、そしてトーストと一緒にコーヒが、ヒロアキが頼む前から出来上がっていたのか?と思うほどあっという間にテーブルに並べられ、店員がたずねる。

「以上で宜しいでしょうか?」

「はい」

ヒロアキがそういうと、テーブルの隅にある小さな筒の中にレシートが入れられた。彼が座っている席は道路に面した窓際だ。ちょうど先ほど立っていた96Barが斜め前に見える。行き交う人を眺めながらテーブルに置かれた食物を口へ運ぶ。食べている間は思考を停止した。いや、あえてそうした。そしてコーヒーを一口飲んで

「あいつの方が上手いな」とつぶやいた。

店のコーヒーより、相葉が入れるコーヒーの方が美味しかったのだ。そしてコーヒーを眺めながら鼻で笑った。一通り食事を済ませ、コーヒーのおかわりをもらった。

「さて・・・」

そう言って例のメモをポケットから取り出す。そして昨日の夜からの出来事を振り返る。知色にBar「4」で会い、行方不明になっている山下の話しをする。彼女は言った『そこへ行って自分の目で判断するのね。いい?それが“結果”なの。貴方がそれを理解して足を止めれば何も変わらない。でも、貴方が足を止めるのをやめないならその結果と同じになる』と。そう威圧され、このメモをもらった。アドバイスを求めると『不幸の産物は不幸でしかない』という。そして・・・今朝、盗聴器を見つけた。さらに言うなら昨夜、事務所の前にずっと止まっていた黒い車は、今もヒロアキの視界に入る位置にいる。明らかに尾行されている。

彼女がくれたメモの数字は電話番号ではないし、このメモ自体にも意味はないように思う。彼女の言葉が再び頭の中を駈け巡る。

『不幸の産物は不幸でしかない』

それがアドバイスだと彼女は言った。『そこへ行って自分の目で判断するのね』とも言った。つまり、彼女のいうそこへの案内がこのメモなのか、会話なのかに含まれているという事だ。だが、渡された住所はデタラメだ。つまり、住所ではない。キーワード、これも探してみたが見つかったのは<96Bar>と<クローバー>、そして<山形>だが、96Barは閉店し、クローバーなんて言葉は溢れている。山形県にしても情報が少なすぎて探しようがない。番号にしても同じだ、メモの内容をいくら番号化しようとしても行き当たるところがない。

「まてよ・・・」

そういって手帳を取り出して数字を書き始めた。

 < 290328290471 >


[ ふ・こ・う(お)・((の))・さん・ぶつ・は・ふ・こ・う(お)・((で))・し・((か))・な・い ]それを変換すると・・・


2・9・0・(の)3・2・8・2・9・0・(で)・4・(か)・7・1 となる。


もしくは・・・“ぶつ”も変換しないとすると<29038290471> “ふこうのさんはふこうでしかない”である。

・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・


黒塗りの車の中でサングラスをかけた男が電話をかけている。

「96Barの前で突っ立てましたけど、今は近くの喫茶店です。何も掴んでないと思いますが」

別の男の声が受話器の向こうから聞こえてくる。

「分かった。もういい。たとえあそこにたどり着いたところで何もでないだろう」

「はい」


・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・



「まさかね・・・・」 ヒロアキはそう言って顔を上げ、窓の外を見る。黒塗りの車が消えている。理由は分からないが、尾行はとかれたようだ。家から出る時、自分の携帯から身に着けているもの全てにおいて盗聴器の有無を調べた。もちろん、愛車のミニも。つまり、ヒロアキの声を盗聴できる状況ではない。しかし・・・この喫茶店に誰かがすでに潜んでいるかもしれない。ヒロアキは店を出て愛車に乗り込む。しばらく目的もなく車を走らせ、誰もついてこないこと確かめた上で、車を止めて携帯を取り出す。番号を押すが、電話は繋がらない。

「ダメか」

気を取り直し、もう一つのパターンでかけてみる。

「はい、セイリンテンゲア病院です」


「で、本当のところは?」

Bondは四条の言葉を無視するかのように聞き返す。四条は彼の顔を一瞬見たが椅子を回転させて壁に向かって話し始めた。

「ない」

「ない?それはありえないでしょう。突然”BC”にしようとでも?」Bondは呆れたようにため息をつく。

「Mr. Bond、覚えているかね。私たちが初めて・・・・そう、“加工”したのではなく、初めて生命を“作った”日を」

「それはSheではなく、ACのことですか?」

「そうだ。君はあの時、無意識だったかもしれないがCreatureだと言った」

「・・・・・・・」Bondは覚えていなかった。

ACあの通り、失敗だった」

「しかし・・・」

「いいんだ。失敗だった。でも君はCreatureだと言った。それは私の中で小さな救いとなった。そして同時に、私は頭の中に“ゼロ0)”が浮かんだ。でもそれは<Zero>ではなく、<Cipher>だった」

Bondは頭の中でCipherの意味を思い浮かべる。サイファ<Cipher>・・・・暗号、数字のゼロ、何もない、価値のないもの、最初から・・・。そんな言葉を思い浮かべながら背中を向けたままの四条の言葉を待った。すると、四条は再び椅子を回して前を向き、Bondの顔を見ながら話し始めた。

「正直、何でも良かったんだ。だからA,B,C,D,・・・と番号を振ればいいと思っていた。しかしCipherが頭に浮かんだんだ。だから失敗作A“A.Cipher”とし、それを略しACとしたに過ぎない。そして次にまた失敗作が誕生したら“BC”にすればいいと」

「でも、BCは失敗作とは思えませんが?」

「そうだね」

「ではなぜ?」

「BCが誕生したとき、正直成功か、失敗か分からなかった。だからBCとするかどうか一瞬考えた。まぁ本当は単なるコードネームなのだから、どんな名前でも問題ないと思うんだが」

「でも・・・」

「そう、私も君と同じように、そう思った。だから・・・・新しい単語を用意した」

「新しい単語ですか?」

「そう、BCの為の単語、"Beginning of Cipher"

Bondは頭の中でつぶやく“暗号の始まり”もしくは・・・“ゼロからの始まり”。

「でも・・・もう一つ。君のお陰でもう一つ」四条は会話を続けた

「もう一つ?」

「“Beautiful Creature”だ。この2つをもってBCとしようと思った」

「なるほど」

「貴方が言ったないという意味はそういう事だったんですね。色々な意味からBCとつけたのではなく、先にBCがあって、そこに意味をつけた」

「そうだ」

「ところで・・・・バージェスソキータ(Burgesso-chaeta)の話は本当ですか?」

そんなBondの問いに対して、四条は怪しく微笑むだけだった。





Zarcheryの「JG 夢 (No.15) 」のまねしてかいてみるね

知色は透き通る水の声だ?
でも、水温はDNAというものを持っている!
これはね、高等にも見えない。
『地球上から光が降り注がれているよう!
上のほぼ全てのような心地よさ?
ただ耳元でいた!!
でも、のほぼ全ての姿は『地球上の優しい声だ。

*このエントリは、ブログペット の「フェルナンデス 」が書きました。



- あとがき -

まねっこフェルナンデス君。。。最初タイトルが「JG 夢 (No.15)」ってそのまんまでした。でもそれじゃ・・・皆が混乱するといけないので「JG」を「フェルナンデス」に変更しておきました。イタズラ好きのフェルナンデス。誰に似たのかしら?確かにZarcheryも小さい時からイタズラ大好きでしたけどね☆

小さい時は、よくmy motherに怒られました。(^o^;)

でも、悪気ないイタズラもありますよね?例えば・・・ある時、小枝だったと思うんですが、カマキリの卵がついていたんです。それがZarcheryの興味を引きましてね。持って帰ってきたんです。ふ菓子みたいなヤツです。小さいですけど。で、鉛筆立てに入れておきました。想像つきますよね、ある時家に帰ったらmy motherが大激怒ですよ。そりゃーね、カマキリの子ども達がゾロゾロふかしちゃってるわけですからねぇ。。。。でも、さすがのZarcheryもビックリしました。だってホントにゾロゾロでいるんですもの。後で調べたら、1個のふ菓子(卵)から200~300個の子どもが生まれるとか。

「何考えてるの!!!」と言われてもね・・・。何にも考えてないから鉛筆立てに立てといたわけで。

その後、「アリンコ(アリ)を飼ってみようと思うんだけど」といったら何故か激怒されましたね。。。。


今では、どちらも飼ってみたいなんて全く思いませんけどね。(^▽^;)



                             By:Zarchery   2008.02.10    


知色は透き通る水の中にいた。『ここはどこだろう?』そう思いながら泳いでいた。上から光が降り注がれている。魚達が泳いでいる。『あぁ、海か』そう思ったが、水温は高く、まるで入浴しているような温かさ。不思議な心地よさだ。泳いでいるのにフワフワしている。水の感触はゼリーのよう。遠くでかすかに声がする。

知色は『あぁ、“ジジ”の声だ』と感じる。でも、ジジの姿はどこにも見えない。ただ耳元でジジの優しい声がする。


『地球上のほぼ全ての生物はDNAというものを持っているんだ。これはね、高等になればなるほど、たくさんあると言われているんだ』


『たくさん?』誰かが言う。幼い声・・・『あぁ小さい時の私だ』と知色は気づく。


『うん、人間は約30億個くらいあるんだ』


『1番多いの?』


『うーん、1番じゃない』


『どうして?』


『たとえば肺魚(はいぎょ)という魚は、約1100億くらいのDNAを持っているんだ』


『どうして?』


『知色は“どうして?”が好きだねぇ。・・・うん、肺魚はね、昔はエラ呼吸していたんだ。でもね、ある時、水中の酸素が減って空気中から酸素を得る為に肺呼吸へ自分を変化させたんだ。そういう進化の過程でDNAが増えていったんだ』


『肺魚ってすごいね。あ、じゃあ知色は?知色は人間だから30億個くらい?』


『知色はね、もう少し多いんだよ』


『多いの?どうして?おかしいね?知色は人間じゃないの?』


『ジジはちょっと、疲れてしまった』


『ねぇ、知色は人間じゃないの?』


『ねぇ、ジジ、教えてよ。ジジ!』


『知色はね、うん。知色はね、人より優れた人なんだ』


『どうして?』


『知色は皆と違うから』 ジジの声が変わる。エコーがかかって聞き取りづらい声になる。


『どうして皆と違うの?知色は皆と一緒がいい・・・』


『さぁ、そろそろ時間だ。もう行かな・・・』


『どこへ行くの?知色も行く!置いていかな・・・』


『知色は皆と違う・・・』


上から差し込む水の光が強くなった。下からはたくさんの泡が上に上がってくる。どんどん、どんどん。そして泡で体が光の方へ押し上げられる『ジジ!』と心中で発した声で目が覚めた。

また夢を見ていた。この部屋の上部にガラスらしきものがはめ込まれ、そこから太陽の光が差し込まれている。もっとも、この建物の外壁が太陽光を感知して機械的に差し込まれた偽りの光だが。この光で目が覚めたようだ。知色はベットから体を起こし、ソファーの方へ目を向ける。“男”は昨日と同じように座っている。テレビはつけていない。でも、今朝はパソコンで何やら作業をしている。

「おはよう」知色はベットに座ったままで男に声をかける。

「おはよう」男が振り向いて答える。

「何してるの?」優しい声で言う。

「例の探偵、あの盗聴器を見つけたよ」

「そう」



大葉は言葉に詰ってしまった。四条の質問は単なる「好き」「嫌い」の問題なのか、それとも“混合”についての問いなのか。頭の中を何かが必死に走っているのがわかる。心の中で『考えろ、考えろ・・・』そう言って、大葉が口にした言葉は、

「ア、アメリカンが。ぼ、僕はアメリカンが好きですね」だった。

「はっはっはっ。アメリカンか。君はなかなか面白いね」四条は大きな声で笑った。そして言葉を続ける。

「驚いたかい?」

「え?」

「冗談だよ、冗談。コーヒーを見ていたらちょっと頭に浮かんだんでね。つい、君をからかってしまった」

「・・・・」大葉は言葉にこそしなかったが驚きを隠せなかった。

「彼女は、いたって普通の女の子だよ。ただ他の人間より素晴らしい頭脳を持っている。だから彼女の脳を研究してる。それだけのことだ」といって四条は笑った。

しかし、大葉は四条の言葉を素直に受け入れられなかった。多くの疑問が彼を包んだ。なぜ彼女はBCと呼ばれているのか?なぜ、緊急事態が発生すると、まるで細菌感染を防ぐような宇宙服のような格好で数人の人間が彼女の元へ行くのか?彼が(四条)が父親だと名乗るなら、母親はどこにいるのか?なぜブラウン管に写る彼女の容姿はどこか人間離れしている気がするのか?なぜ、この建物は“外の世界”との関係を遮断しているのか。・・・・考えたらきりがない。

「じゃあ、後は宜しく」そう言って四条が席を立った。

「あ・・・」慌てて大葉も席を立つ。

「じゃ」

「はい」

扉が閉まり四条が部屋から出て行った。大葉は大きく息を吐きながらゆっくり椅子に座る。そして視線を2人の男女が写るモニターへ移す。心の中の濁りは何一つ解決されていなかった。



・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


四条は自分の部屋へ戻っていた。ドアをノックする音がする。

「どうぞ」

扉が開いた。白衣を身に着けた、背の高い細身の男が入ってくる。男は四条の部屋にあるソファーに腰を下ろし、袖をまくって白い肌を露出させながら「暑いですね、この部屋」と言う。

「かなり浸透しているようだよ、ボンド(Bond)君」

「貴方が否定しないから」

「否定したら不自然だろう?」

「否定しない方が不自然では?」

「そうは思わない」

「で?」

「大掃除をした方が良いい」

「“また”ですか?」

「日本人は年に1度、大掃除をするんだ」

「知っています。でも今は夏ですよ? 大晦日は随分先では?」

「“日々の掃除”で綺麗なっていると? ミスター ボンド、(Mr,Bond)私は守りたいんだ」

「何を?」

「言うまでもないだろう?」

「貴方の言う、Black chemistry・・・ですか」

「今日はBeautiful chemistryと言ってくれ」

「私も知りたいですね。BCの本当の意味を」

「何を今さら。君が知っている通りBlack chemistryだよ。」

「それだけですか?」

「・・・」四条は無言でBondの目を見た。

「ただ、もう一つ意味がある。バージェスソキータ(Burgesso-chaeta)。彼女にはこの血が流れている」

「バージェスソキータ?」

「バージェスのカンブリアモンスターの1つであり、私達の祖先だよ」そう言って微笑んだ。



大葉は四条に明日の指示を受けてから、電話で全ての手配を完了させた。そして継続してモニターを見つめている。一人での作業ならいつものことだし、眠気に耐えながらも気楽にできる。しかし・・・後ろの気配が気になって仕方がない。先ほど、ドアの方へ向きを変えて出て行くのかと思っていたが、ドアの開く音がいつになってもしない。気になって振り返ってみると、やはり四条はドアに寄りかかって立っていた。

「あ、明日の手配は終わりました」大葉は思わずわかりきっている事を口にした。

「わかった」

「あ、宜しければこの椅子を・・・」近くにある椅子を四条に使うように促した。

「ああ。ありがとう」

この会話の後、大葉は言葉が続かなかった。彼は、この仕事についてからまだ3ヶ月程度しかたっていない。もちろん、この3ヶ月の間に四条博士と呼ばれる彼がこの部屋に来ることは何度もあったし、時々、大葉に話しかけてくることもあった。だか、彼がこの部屋に長く滞在する事はまずなかった。

2人は言葉を交わすこともなく、ただモニターに移る男と女の子を見つめるだけだった。大場はせめて、モニターの音声システムが正常に作動していればBC達の会話からもう少し話も広げられるかもしれないのにと思ったが、思ったところでどうすることも出来ない。今日はツイてないな、と思いながらコーヒーカップを口に運んで気がついた。

「あっ、コ、コーヒー入れましょうか?」大葉は席を立ち四条にたずねる。

「ああ、頼む」四条はモニターから視線を逸らさずそう答えた。

「はい」そういって隣の休憩ルームにあるコーヒーを取りに部屋を出た。扉を静かに閉めた後、背中を扉に押し付けながら大きくため息をついた。そして休憩室からコーヒーを持って再びモニタールームに戻り、コーヒを渡す。

「どうぞ」

「ありがとう」

四条はコーヒーカップを口へ運び一口飲む。それを見てから大葉も一口飲み、再びモニターに視線を移す。また会話が途切れる。何か話題を見つけなければと、大葉が投げかけた話題は

「どうしてビーシー(BC)なんですかね?」だった。

言葉にしてから「あっ」と思ったが遅かった。四条は、コーヒーを飲もうとしていたが、飲まずにコーヒーカップを口元から離した。そして1度、大葉の顔を見たが、すぐに視線をカップの中のコーヒーへ向けた。わずかな沈黙が流れた後、四条はコーヒーを見つめながら言った。

「Blend coffee」

「え?」

「Blend coffee・・・みたいな感じかな」

「ブレンド コーヒー?」

「Blendしてるんだよ」四条は笑って言った。その微笑みは異質な感じだった。

「ブレンド?ですか?」

「そう、混合」

大葉は四条のその言葉に一瞬、躊躇したが再びたずねた。

「それは・・・その・・・。な、何の・・・何のBlendですか」大葉は自分の声が僅かに震えているのがわかった。

四条は大葉の顔を見て笑った。そして

「君は面白い質問をするね。それはもちろん、生きものに決まってるじゃないか。あぁ、でも“それも”ありだね。なるほどね・・・面白い」と言った。

大葉は“それも”の意味がわからなかったし、何が面白いのか理解できなかった。ただ恐怖を感じた。そして自分の心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。

「生きものって・・・・」

「生きものは、生きものだよ、君。Creature」

「Creature?」

「まぁ、キメラ(Chimera)でもいいが、Creatureの方が綺麗な気がしないかい?」

大葉は四条の狂った微笑を見つめた。恐怖心が彼を覆いつくす。

「私がBlendしたんだよ。Blend Creature」四条はそう言って、しばらく間をあけてから訪ねる。

「君、Blendは好き?」

「私は・・・・」





-あとがき-

一部修正を加えました。 H20.02.03 By:Zarchery