※ネタバレか否かは、読者の自己責任なので、あしからず 


 シネマ#9
& 

《シネマ介護入門》 

第3講 

(施設生活・環境●終末期への対応および倫理について) 


 『安楽死特区』


 in静岡サールナートホール


 監督/高橋伴明

原作/長尾和宏

出演/毎熊克哉●大西礼芳●加藤雅也●筒井真理子●板谷由夏●友近●田島令子●鈴木砂羽●平田満●余貴美子●奥田瑛二etc 


 2026年●日本





 採点/82点 



 重度のパーキンソン病が悪化し、余命宣告されたラッパーが、フリージャーナリストのパートナーと共に、安楽死を承認し、実践する施設に入所して、死に方を選ぶ権利について考えさせる物語。

そう遠くない未来、もし日本でも安楽死法が可決されたら、患者はどう生命の期限を対峙し、家族を看取るべきか、、、
フィクションとは云え、答えは無く、重苦しく痛々しい。

2人共、実は安楽死に断固反対しており、施設の実態を暴露しようと、命懸けの潜入取材を試みているため、尚更、安楽死と尊厳死との違いや、倫理観etcを観る者を問い、深い迷宮に誘う。




劇場に行き着くまで、かつて、NHKで放送された海外へ実際に渡航して安楽死を選んだ日本人ドキュメンタリー番組が根底にあり、医療従事者への是非を含めた議論は、周防正之監督の『終の信託』が、未だ強烈に憶えている。

そもそも私自身、介護福祉士として、人間の最期に幾度も立ち会わざるを得ないため、観るべき作品なのか、最後まで躊躇した。

しかし、ハードな社会派ドラマにもかかわらず、不思議と面白さを感じ、不謹慎にも笑う。

そして、不意に心を撃たれた。

唐突にヒップホップに乗せて、死に対する心境を描く不可思議な賑やかさは、賛否激しいが、向き合いやすい姿勢を保持するには大きな効果をもたらしていたと思う。

同施設に住む元芸人の余貴美子が三味線漫才で名を馳せた破天荒なキャラだったのも、重さを拭わせ、テーマから逃げさせない娯楽性を支えている。

静かな孤独は、やっぱし、嫌やし、痛いのだと諭された気がした。



勝手に生きて、勝手に死にたいと、人間は誰もが願う。

だが、人間は、そう簡単に死ねない。

多大な苦痛と迷惑と恐怖を伴う。

本人にとっても、家族にとっても。

昔、職場で、いつも
「死にたい、死にたい!!」
と呟いていた高齢者を思い出す。

男も女も問わず、そんな人は多い

やがて、みんな大きな病院に転院していく。

其の後、どう結末を迎えたかは、私は詳しく知らないし、知りたくもない。

いずれにせよ、私だって、自分で決断する道に立つ羽目になるだろう。

ならば、選択肢を持つ自由は、少なからず存在していても良いのではないだろうかと、帰り路に独り呟く2月の寒い夜なのであった。

では、最後に今作に合わせて、韻を踏みながら短歌を一首

『分岐踏む 自ら宿す 痛む(悼む)春 杯に編む 舵ぞ震わす』
by全竜