※ネタバレか否かは、読者の自己責任なので、あしからず。そして、今回も長文リポートである。
シネマ#4
『恋愛裁判』
in新静岡セノバ
監督/深田晃司
出演/齊藤京子●倉悠貴●唐田えりか●中村悠菜●小川未祐●今村美月●桜ひなの●津田健次郎etc
2025年●東宝etc

採点/70点
フェスのトリを目指して売り出し中のアイドルグループ
《ハッピーファンファーレ》
のメンバー・真衣(齊藤京子)は、活動中に、ふとした機会で、元同じ中学のクラスメイト・敬(倉悠貴)と再会し、恋に落ちる。
しかし、《恋愛禁止ルール》に違反する行為であると、所属事務所に咎められ、賠償責任など訴えられたため、孤軍奮闘し、法廷に立ち、争う物語。

実際に若いアイドルと芸能人事務所が闘争した訴訟したケースを元に、ファンに夢を提供する使命を受けた彼女達の葛藤や複雑な胸中に対し、リアルに迫った舞台裏の奮闘記がメインであり、ポスターの様な本格的法廷サスペンスを期待して銀幕に対峙すると、空気の違和感にかなり戸惑う。
圧倒的スターとして謳われた昭和を経て、アイドルが身近な憧れに位置するになり、地下系や声優系も含めて、細分化された令和の群雄割拠の戦国時代にどこまでがタブーな議題であり、顛末を気にするオッサンとしては、スッキリしない印象を受けた。

事務所との軋轢や他メンバーとの絆なども含めてである。
冷静に考えると、事務所が激怒しているのは、むしろ、勝手に全国ツアーをドタキャンし、彼氏とバックレた事であり、そっちの方がモラルの面とか経済損失etc罪は重いやろとツッコミたくなる。
そりゃ、事務所も怒るって。

《アイドル✕恋愛=重罪?》
に一石を投じても、納得する解答を得るまでは踏み込んでいない気がする。
結局、異性交際は、どこまで規律違反に値するのか??アイドルの人権etcについては観る側の受け止め方に委ねる傾向があり、裁判の行方にモヤモヤしてしまった。
和解を拒否して、最後まで事務所と徹底抗戦に挑む彼女の真意も正直良く解らない。
スキャンダルに対し、松田聖子はどう対処したのだろう?
ピンクレディーは?宮沢りえは?田村英里子は?ゴマキは?マエアツは?etcetc
勝手に頭ン中でノンフィクションのアイドルが騒がせた過去のワイドショーを巻き戻しているヤジ馬な自分が居る。
発展途中のアイドルゆえか、かつての梨元勝みたいな喧しく追い掛けるマスコミ連中が登場してこなかったのは、救いであり、不思議と云えよう。
だが、映画の矛盾に対し、素直に応援したくなったのは、現実社会の痛々しさを拭い、夢と現状の狭間でもがきながらも懸命に進もうとする主人公を実際に、日向坂46の主力メンバーだった齊藤京子が熱演した説得力がとても大きかったと思う。
SNSやストーカー、本人達の労働環境etc取り巻く問題にクールに受け止める表情は、自分がこれまでに経験してきたフィルターが活きており、嫌味な部分は皆無で、達観視の域すら感じた。
対立する芸能事務所や弁護士などの登場は最低限に抑え、心配する両親すら説明のみに描き、大人の介入を制限する事で、彼女達が如何に自分自身の問題に向けて自問自答する姿に多くの時間を費やし、作成しているのは、アイドルとしてだけでなく、女性としての自立を問ううえで、とても重要な作品であると思う。
男としては、彼氏側の弁明をもう少し入れて欲しいなぁとは思ったけど、観終えると、まぁ、致し方ない配慮やと察する。

スキャンダルに対し、ネット配信での謝罪動画や、大炎上、特に、握手会での惨劇は、現実に起きたケースを彷彿とさせ、主人公だけでなく、問われるメンバー一人一人の判断の是非を考えさせ、昭和の古臭いオッサンでも感情移入している事に気付く。
メンバー同士の絆に偽善を感じさせず、純粋に友情のニュアンスを醸し出したのは、齊藤京子自身が懸命にアイドルの道を極めた証やと大袈裟ながら解釈する。

バラエティ番組『キョコロヒー』に代表されるように、かなりぶっきらぼうな性格が、悲痛な渦を和らげ、救いになっている。
盟友・齋藤飛鳥や生駒里奈etcが演じていたら、悲痛過ぎて見届けるのは耐えられなかっただろう。
かと云って、一族の先輩・マエアツや篠田麻里子やと白々しいし(年齢的にもだが)。
せやから、齊藤京子で正解だったと結論に達した次第である。
人間にとって、仕事よりも、恋愛よりも大切な事とは何か?
コレは、漠然としながらも、アイドル、オッサンに関係無く生きる人間のテーマであり、だからこそ、ルールが必要不可欠となる。
ゆえに、アイドルの世界を表も裏も等身大の目線で銀幕を通して強く見つめていた彼女の生き様を否定せずに見守る事が、映画においても、今後のアイドル像に向けても、とても大切であると、昭和・平成アイドル好きのオッサンはしみじみ思う。
そんな呑気な1月最後の昼下がりにコンビニでアイドルのグラビアを立ち読みしながらボヤく午後なのであった。
では最後に短歌を一首
『夢注ぎ 捧ぐ偶像 恋の歌 罪深さ問う 縛られし街』
by全竜
