第1章 第21節 | 『パーシュパタスートラ(獣主派経典)』を読む



दूरदर्शनश्रवणमननविज्ञानानि चास्य प्रवर्तन्ते ॥२१॥


duuradarzanazravaNamananavijJaanaani caasya pravartante ॥21॥


【遠く〔のものを〕を視、聴き、把握(意・マナスによって把握)し、理解するということ[1]が、また[2]かの者に[3]生じる[4]。】





[1]duurdarzana zravaNa manana vijNaanaの並列複合後である。通常知覚不能な遠くのものを遠隔で霊視し、霊聴し、それを把握し、理解するという能力のことである。これは特に驚くに値しない。筆者にさえ微妙に発現しているシッディ(超能力)である。瞑想に基づく変性意識は、一般的に日常意識の重心のある、既知の時間と空間の四次元の世界から、より高次の世界への門となる。四次元意識から解き放たれて、五次元に意識が結合すれば、このような能力は基本的に誰にでも発現するものである。俗に女の勘とか虫の知らせというのもそうしたものの微弱な発現である。ヨーギンの勘はそれを100倍にしたものである。私にさえこのような能力が発現するわけだから超絶ヨーギンの能力は推して測るべきであろう。また師と弟子は一体である。つまり弟子とは常に自己中心主義というエゴイズムから解き放たれて、グルとヨーガしているのであるし、その反対も真であるから、私のグルから見れば、このブログもお見通しであろうし、霊感で鼓舞されているのは当然だとして、検閲されているかもしれないわけである。エメラルド・タブレットにある如く「下のものは上のもののごとく、上のものは下のものの如し」で、私が霊的水位が下がった下がったなどと自分の経験をここで言ったところで私のグルから見れば、「修業もしないでいつも女ばかり追ってる馬鹿なごろつきだ」と過去世以来、今にいたるまで見通されて、呆れられているはずなである。そういう点ではいくらブログで威張ってみたところで、本当にグルには不肖な弟子で申し訳ないという気持ちでいっぱいで今も慚愧に耐えない。




[2]caは、「そして、また、も」である。こ

[3]asyaは、彼に、という所属を表す。

[4]pravartanteは、pravRtの三人称複数である。「起こる・生じる」ということである。


   ここでこのような遠隔を視聴し、把握し理解する超然のヨーギンの能力をヒマーラヤはクマオン地方の三大聖者(ハイダーカーン・ババ、ソンバリ・ババ、ニーム・カロリ・ババ)とハイダーカーン・ババの高弟であるマヘンドラ・ババの例から見ていこうと思う。





 まずは私のグルの19世紀型ハイダーカーン・ババのエピソード。




 シュリー・ボーラ・ダット・パンデは、法律家で短気な男であった。かつて事務手続きで馬に乗ってハルドワーニーに向かっていた時のこと、彼はラニバーグ付近のハルドワーニーに向かう乗馬道で、岩の上に座る男に出くわしたのだった。
 その男は、シュリー・ボーラ・ダット・パンデが近づくとニヤニヤした。彼はこの男が自分を笑っているのだと考えた。
 彼はこの男にさらに近づき、乗馬用の鞭を振り上げ、厳しい声で詰問した。「なんで貴様は私を笑ってるんだ?」
 その男は答えた「私はあなたを笑っていたわけではない。私は、バドリーナート寺院の鐘が落ちて、それを人々が必死になって持ち上げようとして、全然うまくいかないので笑っていたのだ。これが私が面白がっていた理由だ」
 シュリー・ボーラ・ダット・パンデは、この男が完全にイカれているか、あるいは大変狡猾で、鞭打たれるのを防ぐ為の口実をでっちあげようとしているのだろうと考えた。そこでシュリー・ボーラ・ダット・パンデは、怒り心頭で、もしこの話が真実でなければ懲らしめてやろうと誓った。
 そして彼は、電話があるカタンゴーダム(クルマーチャーラの列車の終点)に行くと、バドリーナート寺院の鐘が本当に落ちたか確認の為に電話をした。彼はその話が真実だったことを確かめた。鐘は本当に落ちて、人々がそれを持ち上げようとしていたのだった。
 シュリー・ボーラ・ダット・パンデは、あの男が真実を言っていたことを知って大変驚き、この騒動について、あの男がどのように知ることができたのか疑問に思い始めた。「あの人は、他の場所で起きたことを実際に見ることができたのだろうか?」彼のエゴは粉々になり、その男を探し始めた。
 その後、彼はその男があらゆるシッディ(超能力)を持つババジ・マハラジであることを知った。
 シュリー・ボーラ・ダット・パンデは、あの午後の粗暴な態度に許しを乞う為、、ババジに会うことを強く望むようになっていた。
 数日間、彼はババジ・マハラジがどこにいるか八方尋ね回った挙げ句、最終的に、ある日、ババジ・マハラジがハルドワーニーのジャングルの洞窟に滞在していることを聞くに及んだ。
 彼は直ちにそこに向かい、ババジに平伏して、彼の粗暴な態度の許しを乞い、その日からババジに完全に全てを明け渡して帰依するようになった。
 彼は仕事を退職してから、シトラ・ケート・アーシュラムに22年間住み、激しい禁欲生活を送った。そしてそこで肉体を去ったのである。彼はババジ・マハラジがある所から他の所へ空を飛んで行くのを目撃したことがあったと言われている。


『Hariakhan Baba known unknown』ババ・ハリ・ダス著(筆者訳)






   続いて私のグルの20世紀型ハイダーカーン・ババのエピソード。



 ラル夫婦がババジに会ってから一年ほどして、ヴィムラはババジが自分の家に来た夢をはっきり見た。夢でヴィムラが居間に座っていると、ババジが部屋のドアに来て水を求めた。ヴィムラはババジに水か他の飲み物を捧げるときは、聖なる火から取った灰のヴィブーティで磨いたステンレスのコップを使う習慣を知っていた。夢では台所に行ってステンレスのコップを探したが一つもなく、ついにプラスティックのコップを選び、何で清めようかと思ったが、ヴィブーティが家になく粉のクレンザーを見つけたので、ヴィブーティの代用品とした。水道水をコップに入れて、ババジに差し出すと、ババジは嫌そうな顔で水を飲んだ。


 数日してラル博士とヴィムラがヘラカンに出かけ、ババジにプラナムをすると、ババジは怒った様子でラル博士に「この女は何なのかね。自分のグルに水一杯ちゃんと出せないではないか」と言った。


『ババジ伝』ラディシャム著(はんだまり・向後嘉和訳)







    続いても20世紀型ハイダーカーン・ババ。






    そのとき、彼(ハイダーカーン・ババ)は再び私(シュデマ・グッドマン)に去れと言いました。私はこの言葉で非常に動揺して立ち上がり、腕を腰に当てて彼に反抗しました「あなたは本物のババジではない」と大胆に言い放ちました。「あなたはババジのふりをしているだけのただの村の少年よ、皆があなたにひれ伏しているのをみると腹がたつわ。危険なことだわ、なぜあなたは彼らを道に迷わせるの?私はここを出ていきます」通訳をしているシーラデーヴィーは、私の言葉を訳すほど重要ではないとババジに伝えたことを、後で彼女から聞きました。ババジは何一つ省くことなく、一つ一つすべての言葉を訳すように言いました。
 彼は動揺している様子もなく、私の心の中にある様々な考えに答えはじめました。私は心の中に動揺と恐怖が沸き上がるのを感じました。どうして彼はこのことを知っているのか?あのことも?誰にも話たことがないのに。その時のことはすべて思い出せませんが、霊的に高い人が二人いると思ったことと、周りに大勢のドイツ人がいたことを覚えています。
  「お前はこの二人が霊的に高いことを知っている」とババジは言いました。「かれらはほとんど聖者の域に達していると言ってよい人々だ。私はドイツ人が好きだ」「ええ、ドイツ人もヒトラーが好きでしたわ」と私は答え、「ドイツ人たちはヒトラーの命令に服従していたわ」と言いながら恐ろしくなってきました。彼は私を殺すことができる、という思いが瞬間的に心に浮かびました。
 彼を試してみようと思い、「マリファナを吸っていいですか。ときどきマリファナを吸うと敏感になるんです」と言いました。「マリファナはアーシュラムの中では許さない」と彼は答え、そして「私は数百マイル先の人々の心を読むことができる」と言いました。私は自分の考えたことをいくつか思い浮かべて動揺しました。

 あとはどのような会話をしたか思いだせません。西洋人の長年の帰依者であるゴウラ・デーヴィーは、ババジは長い会話をすることはめったないのに、きっとあなたに好意を持っていると思うと言いました。彼女は、ババジに謝ってここに留まってもよいか尋ねなさいと勧めてくれました。


『ババジ』シュデマ・グッドマン(佐々木晴子他訳)




(シュデマ・グッドマンとサングラスのハイダーカーン・ババ)






   続いてハイーダカーン・ババの高弟であるマヘンドラ・ババの例。







 次の日、ちょうど事務所に出勤する準備をしていると、マへンドラ・ババが訪ねてきたと告げられた。私(ギリダル・ラル・ミシュラ※)が階下に行くと、明るい笑顔の彼が私の家にいるのを見出だした。愛想のよいババの優しさに圧倒された私は、彼の足元に腹ばいになって平伏した。そして私の母が寝ている部屋に彼を誘った。母も彼の聖なる御足に触れた。ババは母の病状に痛く心動かされたようであった。しかし数分後には、彼は立ち上がって出ていこうとした。彼があと何日ぐらいバンディクイに滞在するのか私は尋ねた。「分からない」ババは言った。ババの性格として、彼の返答はこのように不確かだった。彼は私達のもとを去り、そして私は事務所に急いで出かけた。
 午後3時に、衝動的に私は駅へと向かった。駅のプラットフォームに着くや否や、数人の集団の中に、マヘンドラ・ババを見だした。彼は笑って前もって何も言っていないのにどうしてここに来たんだと尋ねた。「あなたの恩寵と力によってです」私は返答した。ちょうどマヘンドラ・ババがアーグラ行きの列車でヴリンダーヴァンに行こうとしていた。するとアフメーダバード行きの列車が早めに到着した。そして驚いたことに、私の兄がその列車から降りてきて、プラットフォームの聖者と一緒にいる私を目指して、真っすぐにやってきたのだった。
 「ヴィシュヌ・バイ!」兄が近づくや否やババが言った。ヴィシュヌは私の兄の名前であり、バイは兄弟という意味である。私達兄弟はその時、二人して目を見張った。マヘンドラ・ババは私の兄に今まで一度も会ったことがなかったからだ。するとアーグラ行きの列車が到着した。ババは、列車の車両に乗り込むと列車は駅を出発した。私は自分の最も親しい人から引き離される感覚を感じて、列車が線路の上を動き始めると視界から消えるまでそれを眺めつづけていた。私は重い心と共に家路に着いた。私はマヘンドラ・ババとの出会いが私の幸運であることを知った。






 結局のところ、マヘンドラ・ババが、私達兄弟を合わせたのである。兄の仕事上、何の言付けもなくラージガルからバンディクイに私の兄が来ることは誰にとっても不確かである。このような出来事があって、私達兄弟の心は彼の御足と共にあるようになった。



(一番左がギリダル・ラル・ミシュラ、一番右がその兄のヴィシュヌ・ダット・ミシュラ)



※ギリダル・ラル・ミシュラは、20世紀型ハイダーカーン・ババと後年常に一緒にいることになるシャーストリジことヴィシュヌ・ダット・ミシュラの弟である。本人は19世紀型ハイダーカーンの素晴らしい伝記である『From Age to Age』という本を残したが若くして亡くなっている。この兄弟は、ハイダーカーン・ババとマヘンドラ・ババの高弟であり、19世紀型ハイダーカーン・ババと20世紀型ハイダーカーン・ババのミッシング・リングを繋ぐ鍵となった。


(20世紀型ハイダーカーンババと、過去世はチベットの聖者である後継者のムニラジそして一番後がシャーストリジことヴィシュヌ・ダット・ミシュラ)


『From Age to Age』ギリダル・ラル・ミシュラ(筆者訳)



シャーストリジことヴィシュヌ・ダット・ミシュラのインタビュー1

シャーストリジことヴィシュヌ・ダット・ミシュラのインタビュー2(獣主派の踊りを彷彿とさせる最後のシャーストリジのダンスは必見である。)






   ソンバリ・ババのエピソードは以前引用したものである。



 ソンバリ・ババは、よく彼の近くに坐る信者達に、しかじかの者が家を出て、アーシュラムにあと2時間後に着くだろうと告げるのだった。その為、信者達はその人の為に食事を取って置かなくてはならなかった。そして正確に2時間後に、その人が到着するのであった。






 続いてハヌマーン神の化身と言われるニーム・カロリ・ババのエピソード。(ちなみにニーム・カロリ・ババは気さくな聖者なので10分ぐらい思い続ければ、本当にやってくると言われているのでご用心を。私はニーム・カロリ・ババの本を読んでいて、聖書と内容を照合したいところがあって聖書を調べたかったのだが、その時、あいにく家に聖書がなかった。仕方なくニーム・カロリ・ババを思いながら聖書が欲しいと思っていたところ、出かける用事があって、家を出て、十分後に駅で聖書を無料で配っているエホバの証人の信徒に出くわして聖書を貰った経験がある。その後、一度も私の家の駅で聖書を配っているのを見たことはない、我ながら偶然にしては出来過ぎた話である)




 私たちが、ひとつも窓がない部屋で座っているとき、マハラジは「誰々がやってくるぞ!」と言いました。わずかその数秒後に、本当にその人物が部屋に入ってきました。




 マハラジはある男にたずねました。ケンチのように、山や川や森があり、平和で美しく、瞑想するのに適した場所を見たことがあるか?そのスワーミーはかつて似たような場所を、キャンディー(スリランカ)で見たと答えました。マハラジはそこに行ったことがなかったにもかかわらず、細部にいたるまで克明に描写してみせ、そのスワーミーを驚かせました。





 カーンプルに、戦争で中国に派遣された青年の家族がいました。青年が戦死したという知らせが届き、彼の兄弟がマハラジに報告しました。マハラジは「いや、まだ死んでいない」と言いましたが、誰もその言葉を信じませんでした。未亡人は六ヶ月後に再婚し、陸軍省の記録も閉じられました。それからしばらくたって、その青年が帰ってきました。



 私はヒンディー語ができる数少ない西欧人だったので、マハラジとよくおしゃべりをしました。彼と雑談していると、とても驚くことがありました。ときどきマハラジは、私が誰にも話したことのない人物について話しだし、「この人について話してくれるかね?」と言ったのです。私はうなずきかけて、ビックリしました。
 マハラジは大笑いすると、私を見つめて微笑みました。いっしょに座っている時間のあいだ、私はバカ笑いする腑抜けになっていました。頭がぐるぐる回転し、危うく転びかけ……するとマハラジはすばらしいハグをしてくれたのです。







グルはおまえのすべてを、
知っていなければならない。


私にはすべてがわかる。
その理由がわかるか?



    とここまでが『愛という奇跡』ラム・ダス編著(大島陽子・片山邦雄訳)の引用だが、ではなぜニーム・カロリ・ババにはすべてが分かるのか、勝手にニーム・カロリ・ババになりきって最後に私が適当に答えてみることにした。




私の心が全く汚れていないからだって?
そんなことが本当にあるだろうか?
ヨーガとは一体何だ?そんなものはたいしたことない。
お前を愛しているからだ。