ホラーな恋3(9月の恋) | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

金曜日の朝、

いつものように

半分眠りながら、

歯を磨いていた俺は、

突然鳴った電話で一気に目が覚めた。

 

誰?

こんな朝から・・

まさか俺昨日なんかやらかした?

でも、昨日はちゃんと仕事したし、

帰りもどこにも寄ってない・・

全く記憶にはないけど、でも・・・・

恐る恐る電話に出る。

 

「は・・い・・・」

「おはようございます。

二宮です。」

 

それは、マネージャーの二宮さんだった。

 

「お、おはようございます。

あ、あの何か・・用事・・で・すか?」

 

この人の用事って

心臓に悪いことが多いんだよね。

今日はなんだろう?

 

「奥様から話があったと思いますが、

神戸に今日明日と出かけますので、

準備はできていますよね。

18時に迎えに行きますので、

遅れないように。

新幹線の時間がタイトですので。

では、夕方に。」

「えっ・・ええ・あ、あの・・」

 

用件だけ伝えるとプツンと切れた電話。

あの、俺の話は聞かないんだ。

っていうか、忙しくて忘れてた俺。

神戸に2泊って。

本当に行くんだ・・

どうしよう・・・。

俺は、歯ブラシを咥えたまま、

大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

「よっ、大野、明日は休みだしさ、

ちょっと1杯行かないか?

暑い時には生ビールってね。」

 

時計が5時を指すころ、

岡田がふらっと俺の席に来ると

一気飲みする仕草で俺を覗き込む。

 

「行かない!」

 

あと1時間しかないんだよ、

邪魔すんなよ。

上目で岡田を睨みつけながらも、

手を光の速さで動かして

イラストを仕上げていく。

あの約束をすっかり忘れていた俺は、

納期の迫った作品を

この週末に仕上げればいいとかんがえて

のんびり構えていたんだ。

でも、出かけていては、

間に合わない。

それで、今日は昼飯抜きで

必死に仕上げていた。

 

「あっ、忙しいのか・・

じゃまた・・」

 

そんな俺の鬼気迫る姿に

岡田はそそくさと引っ込んだ。

 

あ、あと10分

クッソ、指がマヒしてきた・・

5分

あとこの線だけ・・

 

♪♬♪

 

定時のチャイムが鳴り響いたと同時に

俺はタッチペンを放り投げた。

急いでパソコンの電源を切り、

作品をロッカーにしまって鍵をかける。

 

「お、おわ・・た。

お、お先に・・」

 

俺は足元においた鞄を掴むと、

事務所を走り出た。

 

 

 

 

 

「はぁはぁ・・。

お待たせしました・・・はぁ・・。」

「3分の遅刻ですね。

急ぎますよ。」

 

ゼイゼイと肩で息をしながら、

謝る俺に

車の横に立った二宮さんは、

冷たく言い放つ。

そ、そんなこと言われても・・

6時の退勤時間なんだよ。

俺3分でここまで来たんだ。

褒められてもいいんじゃないの?

 

「早く乗ってください、大野さん。」

「あっ。は・・い。」

 

ぎろりと銀縁眼鏡の奥から睨まれて

俺は、慌てて車に乗り込む。

 

「大野君、早くシーベルトしめて。

早く。」

 

運転席の後ろの席に座ったマダムが、

俺の鞄を受け取ってくれる。

そして、急かしてくる。

 

「あっ。いえ・・すみ・あっ・痛っ。」

 

俺が、恐縮しながら、

マダムの横に座ってドアを閉めた瞬間、

車は、急発進し、

ベルトをまだ閉めていなかった俺は、

勢いで窓に頭をぶつけた。

 

「大丈夫、大野君。」

「は、はい。

たいしたことないです・・」

 

俺は慌ててシートベルトを締めた。

そして俺は思い出した。

二宮さんが車を運転すると人が変わる

スピード狂だってこと。

 

俺、無事に東京駅までいける?