魔王92 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勢いのままにカズを振り切ってきたが、

暗くなり始めた道を歩いていくうちに

俺は段々と冷静さを取り戻していた。

 

怒りと恐怖で我を忘れてしまったが、

とにかく今は成瀬さんいや、

サトのことを調べないと。

成瀬さんになっている時の貴方は

何も話さない。

いや、話してはくれた。

自分が受けた、

酷い暴力のこと、

体も心も壊れたっていう辛く悲しい過去を

それは聞いている俺が

苦しくなってくるようなことだった。

ただ、成瀬領になっている時は、

女王様のように男たちを虜にして、

自分にひれ伏せさせることができたことだけが

救いだったということも聞いて、

それはもっと不味いことかもしれないとも

思ったんだ。

 

成瀬さんになったサトは

己の存在価値をそこに見出だして、

どうにか生きていたのだろうが・・・・

でも、サトは・・・

サトの時の貴方は・・・・

そうじゃなかったはずだ。

俺が知るサトは静かで、

いや違うすべてを諦めているような

なんの感情もないような

顔しかみたことがない。

 

もしかしたら、貴方はサトという人間には

もう未練がないのかもしれない・・・

このまま成瀬領になろうとしているのか?

成瀬領になって貴方を凌辱した男たちを

今度は手玉に取ってやると考えているのだろうか・・・

まさか・・・・・

でも、早く、サトに会わないと・・・

確認するんだ。何をしたいのか・・

 

 

井ノ原さんだ、

井ノ原さんは何か知っている。

そしてそれを隠している。

絶対に・・

 

俺は、急いで鞄から

電話を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「井ノ原さん、櫻井です。

たびたび申し訳ありません。」

「櫻井さん、また何か用ですか?」

 

櫻井ですと名前を告げた途端に、

そっけない返事が返ってくる。

さっきは、すまないという、

誠意が感じられたのに・・

ほんの数時間で豹変した態度・・・

何があったんだ・・・・

 

「今は何を?」

「3人を部屋まで送って

帰るところです。」

「少し話できますか?」

「話は、さっき事務所で・・」

「さっきはカズのことだけでした。

でも、サトもやめるんですよね。」

 

俺と話をしたくないというのを

あからさまにしてくる井ノ原さん。

俺は強引にねじ込んだ。

 

「サトには

働く必要が無くなったっていいましたよね。

それはどういう意味ですか?」

「・・・・」

 

何も答えない井ノ原さん。

ふっと俺は思い出した。

そういえばマリエらに脅されて

金を要求された時

知り合いに頼み回ってどうにか工面した・・って

言ってたっけ。

 

「サトは事務所に借金がありましたよね。」

「ど、どうして・・」

 

鎌をかけたら、ドンピシャリだった。

 

「でも、それを全額返したんですね。

辞めるからって。」

「櫻井さん・・

貴方いったい何をしっているんですか!」

 

井ノ原さんが怯えた声で叫んだ。